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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月7日(木) 七夕☆岩壁☆炎の羊
50/85

第48☆

 2112年 7月7日(木)


 今日は七夕。七夕である。織姫とひこ星がイチャコラする、そんな日。七夕。


 2112年では、七夕は『たなプレ』と称して女性が意中の男性にプレゼントを贈る日である。


 つまり、今日この日にプレゼントを貰えるかどうか。


 そこで男性の男性ランクが決められるといっても過言ではないのである。


 すでに僕は、マキとサキから貰ってはいるが、アレは別。

 妹からのプレゼントは別だ。ノーカウント。


 髪も整えた。紺のブレザーの制服もバッチリ決まっている。

 今日の僕に抜かりはない。


 (澤木さん。僕はいつでも準備が出来ています)


 僕は、期待に胸を膨らませて家を出た。


 



―――――――――――――…………



 貰えませんでした。



 ……ええ。

 何も。

 誰からも。


 いや、一応貰えたのか? アレは? 


 …………


 いや、期待してませんでしたけど?

 べ、別にはじめから分かってましたけど?

 僕を含むクラスの男性陣のほぼ全員が四六時中、周囲をキョロキョロしていたけど、アレは警戒していただけですから。


 ホラ。敵とか。宇宙人的な、ね? 七夕だし。

 天の川から来るわけですよ。ピューと。こう。色々なモノが。


 そんな警戒中に、女性達が動くと、ビックリする訳ですよ。

 僕のとなりの席の金田さんが、ポケットに手を入れたりするたびにビクつくんですよ、体が。

 来たのかと。

 えー……と、その、宇宙からの敵が。


 金田さんが、その地味目ながらも、実はカワイイ、メガネで隠しているその顔が、ニヤリと笑うたびに、ドキドキするんです。

 その、来たのかと。

 まぁ、その笑顔は、僕では無くて、カードを見ての笑顔でしたけどね。


 ……いや、当然だよね。ハハ。


 澤木さんがお昼休みに僕を呼んだ時なんて、ヤバかったです。

 

 こう、来たのかと。


 ええ、あの、アレだ。


 月からの侵略者とか、ね?


 ……まぁ、澤木さんが僕を呼んだ用事は、一言で言えばパシリだった訳ですが。



 売店の幻のタルタル南蛮パンを買ってこいと、澤木さん。

 『ケガ人だから、戦争を越えて買ってこれるよね? お釣りで好きなの買ってきて良いから』

 って言いながら気持ちの良い笑顔で僕を送り出した澤木さんマジ女王。


 まぁ、お礼として、澤木さんの両親が宣伝部長だか何だかをしている、スポーツ飲料会社ミツヤリーが今している12☆Worldキャンペーンの、ペットボトルに付いているクジを貰った訳ですが。


 『はい。たなプレ』

 なんてシールを僕に渡しながら冗談を言う澤木さんマジ堕天使。


 てな訳で、一応、今年のたなプレは、500ml 150円のジュースに付いているクジ1枚です

 

 ……

 …………

 ………………


 「…………走ろう」


 もう、何も言わずに走ろう。


 あれだ。うん。走るしかない。


 僕はプレエク3をかぶり、ゲームの世界に入っていった。







 ゲームの世界に立つ僕。

 相変わらず、靴や肌に感じる自然のリアルさが、ここはゲームの世界であることを忘れさせてくれる。


 是非たなプレの事も忘れさせてくれ。


 僕が今いる場所は世界樹の根元。

 昨日アスクさんと別れた場所だ。


 じゃあまずは恒例。


 僕はステータス画面を【目線操作】して、猫のお守りを装備する。


 「待っているニャ。金色リンゴ」


 ニャアニャア言いながら世界樹を登った僕は、頂上付近で金色リンゴを採取した。


 今日は採取出来た。何か条件があるんだろうか。

 そういえば、アスクさんが、簡単には取れないみたいな事をいっていたけど。


 説明を見ても、 


 【金色リンゴ】

  [食材]全ての知恵の実の王。認められし知恵の実を世界の数だけ所持した時のみ姿を現すという。SPを100回復する。


 とか書いてあるだけだし。

 世界の数って、いくつだよ。

 てか認められし知恵の実とかも意味が分からん。

 まぁ、採取出来たので問題は無いが。

 そう言えば、途中で中腹の所を見てみたりもしたが、やはりアスクさんはいなかった。


 (当然だけど、やっぱりいないか。けど、他の人がココに来たらどうなるんだろう。僕だけ見えてなくて他の人にはアスクさんの姿が見えていたりするんだろうか)


 昨日のアスクさんの‘過去’を聞いている限りだと、アスクさんは重要なストーリーを持っているようだ。

 そんな人物が消えたりすると他のプレイヤーが困るのではないだろうか。

 と考えると、やはり僕にだけ見えなくなっていると考えるのが無難か。


 てことは、僕以外のプレイヤーがココに来たら、見えない誰かと話している人を僕は見てしまう事になるのか。


 実に奇妙である。


 「そんな事を考えてもしょうがないか、ニャ。それよりもやることがあるニャ」


 僕はスルスルと樹を降りた。


 そして、猫のお守りを外して、あるアイテムを装備する。

 僕の手に、キラキラと黄金に輝く、500mlのペットボトルくらいの大きさの竹が現れた。


 【黄金の竹槍(翁)】である。

 ちなみにステータスはこんな感じ。


 【黄金の竹槍(翁)】

 【武器種別・槍】槍スターLv100以上のみ装備可 攻撃力384 強度☆ 黄金に輝く竹から作られた槍。伸縮自在で、伸ばせば月にまで届くという。


 強すぎである。どれくらい強いかというと、僕が初期に配布された【皮のムチ】のステータスと比べてみると良く分かるだろう。


 【皮のムチ】

 【武器種別・ムチ】攻撃力5 強度☆ 初心者用のムチ。まずは慣れることから始めよう。


 うん。なんかもう、色々違いすぎる。


 強度の☆も壊れないという意味だそうだ。

 初期の武器や、特殊なモノにのみ付くそうで通常の武器だと強度100とからしい。


 だから、昨日の……


 「ああああああ!」


 重要な事を思い出した僕。


 「あるかな? あるかな? ないよな? 多分。 あああ」


 ステータス画面を表示して、外部回線の項目から自分のカードを起動する。

 なんか二度手間だけど、こうするしかない。

 ゲームの設定的に、プレイヤーストーンを起動しないと、仮想店舗での売買は出来ないのだ。

 だから、カードを使ってのアイテムの売買は裏ワザに近い物だったりする。

 まぁ、ちょっと知識のある人は皆していて、ゲームの運営も認めている方法らしいけど。

 

って、こんな話はどうでもよくて。


 僕は、カードの情報から、12☆Worldの仮想店舗を表示して、装備の売買の項目を選ぶ。


 武器の中から【剣】で検索する。


 そう、昨日買い忘れていた。


 刃殺【蒼鹿ノ角】


 それを改めて探しているのだが


 (ノゲイラに追いかけられたり、アスクさんに会ったりで、すっかり忘れていた。ポーションも売れたし、今なら買えるから、残っててくれよー)


 寝ている間と、学校に行っている間にポーションを60個、ジュースを30個売っている。


 夜寝る前に出品したポーションが、朝には売りきれていたので、朝少しだけ12☆Worldを起動してポーションを作ったりもした。

 マキの事を怒れないなと自分でも思う。


 てなわけで、今の僕の所持金は26110B。

 お金ならある。


 後は品物だけだ。

 しかし、刃殺【蒼鹿ノ角】は検索にかからない。


 案の定、刃殺【蒼鹿ノ角】はすでに売れていた。


 「あああ。馬鹿。僕の馬鹿」


 悔しい。本当に悔しい。


 12☆Worldは無駄に凝っている所があって、武器も製作者によっての一品モノとか作れるそうだ。


 刃殺【蒼鹿ノ角】もそんなタイプなのだろう。

 仮想店舗で売り出している装備を見ても、大量に表示される【銅の剣】や【青銅の槍】と違い、刃殺【蒼鹿ノ角】なんて名前さえ表示されない。


 (売れてしまった……いや、確か製作者の名前は、‘しか’って人だったよな? じゃあ、その人を見つけて同じ物を作って貰えばいいのか)


 今度は、製作者名の項目から‘しか’と入れて検索した。


 「おお、出て来た出て来た。プレイヤー名 しか 店舗名 ディアホース……ディアホース?」


 なんか聞き覚えのある名前だ。

 いや、これは


 「昨日僕が店舗名を付けようとして被った名前だ、な」


 なんだろう、運命を感じる。


 店舗名が被り、作る武器は僕の好みにバッチリ当てはまっている。


 「名前は しか さん。か、男かな? 女かな?」


 男の人だったら、ぜひ友人になりたい。

 女の人だったら、なんだろう。いっそ付き合いたい。

 それぐらいの運命を感じる。


 「もう、仮想店舗じゃなくて、お店を出しているのか。行ってみるかな」


 詳細を検索すると、お店の場所も表示された。

 南東。高級住宅街の方か。

 後で行ってみよう。


 「……って、そうだ。【黄金の竹槍(翁)】を試しに使ってみるんだった」

 

 当初の目的を思い出した僕。


 【黄金の竹槍(翁)】を構える。伸縮自在の槍。イメージ的には、西遊記とかの如意棒に近い感じか。

 手から、どのようにしたらこの槍が伸びるのか、という情報が感覚的に入ってくる。


 その情報に従って僕は一言つぶやいた。


 「……伸びろ!」


 キィン! と高く空気を切り裂く音が響いたかと思うと、【黄金の竹槍(翁)】が伸びていた。


 僕の目の前の世界樹を貫いて、先に伸び。


 その先端は他の木々を貫いていて見えない。


 ……いや、凄すぎだろ。


 世界樹って、幹の直径だけで50メートルくらいあるんだぞ?


 「しかも、手に何の抵抗もなかったし」


 ただ伸びて、貫いたって感じだ。

 直径50メートルの巨木を。

 スゴイ。さすが黄金の武器。

 黄金ってやっぱり強い。


 「これなら十分越えられるかな。長さも強さも大丈夫だろう」


 「戻れ!」


 と僕が言うと、黄金の竹槍は一瞬で縮まって、元の500mlのペットボトルのサイズになった。


 「さてと、じゃあ、ブドウを採取した後に、いよいよ行きますか」


 念願の川越えである。

 そして、岩壁越え。

 陸上の腕……足の見せどころだ。


 

 男性なら一度はありますよねー。


 来たのかと。遂に僕にも来たのかと。


 思う時が。


 2月14日くらいに。


 2112年の男性は、7月7日にもそんな警戒が必要なんです。


 羨ましいですね(^^)


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