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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月6日(水) ポーション☆クサリ槍☆友情
48/85

第46☆

※このお話は12☆Worldです。


幻覚かと思われたアイツの登場。





 「ヒッ!!」


 突然生じた空を駆けあがっていく光に、私は情けなくも声を上げてしまう。


 その淡い赤色の光は、そのまままっすぐ西へと飛んでいった。


 「……誰か死んだのか」


 あの光は、たしか冒険者が死んだ時に出てくる光だ。


 冒険者。孤独な者を救う異世界からの旅人。


 孤独な者、か。


 「ウーロー……」


 私はつい、一番の親友の名前を口にした。


 賢く、勇敢で、弱き者、力なき者に味方する、正義の心に満ち溢れていた親友。

 その名は、育ての親の名よりも、私の心に深く刻まれている。


 高貴にして崇高。千代に生きるエルフ族に生まれた私は、幼い時、世界樹の樹から落ちてしまい、高所恐怖症になってしまった。


 自然を敬い、木々と共に生きるエルフ族にとって、高所恐怖症になるということは、飛竜が翼を折られるのに等しいモノである。


 そのような者を、高貴なエルフ族が仲間として認めるはずもなく、私はわずか10歳にして里を追われた。

 10歳の子供が味わう、夜の森での孤独は、想像を絶するモノである。


 孤独に恐怖して泣き叫ぶ私の前に、知恵の実を持って現れたのが、ウーローであった。


 『大丈夫。とりあえずコレでも食べて、元気を出しなよ』


 彼がそう言って差し出した知恵の実は、里で食べていたモノよりも甘く、美味しかった。

 私はソレを食べるとすぐに泣きやんでしまった。現金なモノだと自分でも思う。


 彼は、私が美味しそうに知恵の実を食べ終えるのを見た後、すぐに賢者ケイロの元に私を連れていってくれた。


 ケイロは、良い人で、すぐに私を受け入れ弟子にしてくれた。


 それから200年。私は、ウーローと共に様々な事をケイロから学び、大きくなった。


 大人になった。立派なエルフに成長した。


 「だから、泣くな」


 私は自分に言い聞かせる。


 ウーローが、親友が病気になって、私の前から去ったのは約30年前である。


 『大丈夫』

 そう言って去った彼の何かに耐えている表情が、目に焼き付いて離れない。


 風の噂で、ウーローが魔物達の住む西の島にいると聞いた。

 西の島で、苦しんでいると。


 幸い、私を弟子にしてくれた賢者ケイロは、高名な医者でもあった。


 彼に、ウーローを治す方法を聞くと、普通の方法では治す事は難しく、【万能の霊薬】が必要になるだろうと教えてくれた。


 それから私は30年かけて、【万能の霊薬】の材料を探した。


 いちじくの葉 聖銀の水 龍王石 百年桃 海主のゼリー 蓬莱の枝……


 それら全てを集め、最後の材料を採るために私はここにいる。


 世界樹の苗木。


 わずか100メートル程の高さしかない、小さな世界樹のさらに中腹。

 そこで私は震えているのだ。


 何も出来ずに、ただ、震えて、泣いているのだ。


 「情けない」


 親友のために何も出来ない自分が情けなくて、涙が出て。

 ただ涙を出している事が情けなくなって、涙が出て。

 それの無限ループ。


 「うううう……!」


 【エルフの鉤爪】を使い、中腹まで登ったはいいが、ここから先は無理だった。

 どんなに体を動かそうとしても、動かない。動こうとしてくれない。


 もう限界だ。


 誰か、誰か、


 「助けてくれ」


 ポツリとこぼれた孤独な言葉を


 「大丈夫かニャ?」

 

 拾ってくれる者がいた。



 猫のしっぽをフリフリとさせた、人間の少年。

 ここ数日。何度か、私の前を通り過ぎていった人間の少年だ。


 その少年の手には、採れたての知恵の実が握られていた。あの日の親友のように。


 「……とりあえず、食べるかニャ?」


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