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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月6日(水) ポーション☆クサリ槍☆友情
40/85

第38☆

 僕は、街の中央広場に来ていた。


 始めて12☆Worldをプレイした時に、200万人のプレイヤーの怒号におっかなびっくりしたあの場所だ。

 広さは、半径1キロくらい。

 超広い。

 広場は全面、白い石畳で覆われている。

 中央は広場から階段状になっていて、20メートルほど高くなっている。

 

 なんか、ピラミッドみたいだ。


 そこに巨大な石柱が3本並んでいる。

 10メートルくらいの高さだろうか。


 一メートル置きに切れ目が入っていて、ブロックを積んだようになっている。


 広場には所々、噴水やら銅像やら出店が見える。


 噴水から流れ出た水は、東西南北の4方向に流れて、近くの川に向かうようである。


 北の方に海があるので、川は最終的にそこへ向かうのだろう。


 あ、猫の像がある。

 白い大理石のようなモノで出来ている、3メートル程の高さの像だ。


 足元にお皿が置いてある。


 ふーん。ルーズ……? だっけ?


 アイツに会うときはここにカレーを置けばいいのか。


 像の周りに煮干しが散乱していているけど、猫だからか?


 とりあえず、自分のプレイヤーストーンの所に向かう。

 地図に自分のプレイヤーストーンの位置が表示されるから迷うことは無い。


 僕のプレイヤーストーンは、中央の石柱の近くにある。

 石柱から階段を3段降りた所だ。


 プレーヤーストーンは1メートル間隔で規則正しく広場に並んでいる。

 良く見ると所々抜けているプレイヤーストーンがある。


 移動したのか。


 プレイヤーストーンは、拠点さえ買えば、移動できる。

 マキ達みたいに最高級な拠点を買えば、100万Bとかするが、別に1人用の小さいのなら1000βからあるらしい。


 現実のお金で100円。買う人は買うだろう。


 僕は自分のプレイヤーストーンに触り、起動する。

 ここで出来る事は、パーティーの設定や、道具の売り買いなどだ。


 今回はポーションを売りに来たので、道具の売買を選択する。


 すると、プレイヤーストーンからホログラムで出来た画面が映し出される。


 12☆Worldでは、アイテムをプレイヤーに売るのに2つの方法がある。

 店舗を出して、お客と直接会って取引するか、プレイヤーストーンを使って、情報だけを提示して売るか、だ。

 簡単に言えば、フリーマーケットで売るか、ネット通信で売るかみたいなモノだ。



 僕は、お店も無いので、とりあえずプレイヤーストーンを使ってポーションを売る。


 まずは、店舗名を付けるそうだ。

 後々、お店を構えた時に分かりやすくするためだろうか?


 店舗名……出品している他の人を見ると、そのままプレイヤー名を使っている人が多いようだが……。


 僕の名前、桜。


 サクラ……桜肉……馬……馬鹿。


 誰がバカだ!!


 ……はっ! 自分にツッコンでしまった。セルフツッコミだ。恥ずかしい。



 まぁ、けど馬と鹿。 

 両方とも好きな動物だ。足が速いし。


 じゃあ……


 「ディアホースっと」


 鹿のdeerと、馬のhorseでディアホースだ。


 ディアは親愛なるという意味のdearとも掛かっているし、中々カッコいいじゃないか。


 店舗名を選択して空中に表示されているOKボタンを三回瞬きで選択すると、

 【この名前は現在、他のユーザー様が使われておりますのでお使いになれません】

 と、表示されてしまった。



 マジか。被った。



 「うーん。じゃあ……」


 桜を下手にいじると、中々ダサい名前になる。主に、経験的な意味で。


 どうするかなーと悩んでいると、ふっ、と12☆Worldで一番馴染みの深いモノが浮かんだ。


 「……ゴールデン☆アップル……っと」


 OKボタンを選ぶと、承認された。


 再度表示された確認のボタンを瞬きで選び、僕の店舗名が決まった。


   ゴールデン☆アップル


 自分の名前は関係ないけど、まぁいいか。


 ホログラムに仮想の店舗が表示されたので、そこに、作ったポーション20個と、ポーションだけでは寂しいので、オレンジジュースとイチゴジュースをそれぞれ10本ずつ並べた。

 価格はポーションが300B。ジュースを150Bにした。


 仮想の世界で仮想の店舗とはこれいかに?


 まぁ細かい事は気にしない。


 またOKボタンを押して、ゴールデン☆アップルの商売が始まった。


 そして、他の店舗の情報やアイテム、そういえばゼリー状のSP回復アイテムでもないかとプレイヤーストーンのホログラムをいじっていると、後ろから


 「ウホ! 良いケツ!」


 と声が聞こえた。



 はぁ!? と思い後ろを振り返ると、そこには武者がいた。



 うん。


 コレは武者だ。


 超武者だ。


 10人いたら10人が武者だと答えるくらいこれは武者だ。



 黒い和風の鎧が全身を覆い、翁の面を付け、子供の日とかで良く見るような兜には、額の所に【漢】と書いてある。


 しかしその右手に握られているのは、どう見ても日本の槍ではなく、西洋のモノだった。


 ランスとか、スピアとか?

 

 けど、ただ先端に刃が付いているだけじゃなくて、なんか複雑な形をしている。


 鎌みたいに曲がっている刃のようなモノが、刃と同じ方向に向いているモノと、逆方向に向いているモノが先端のまっすぐな刃に付いているのだ。


 そして、持ち手の先の方に鎖がジャラジャラと連らなっている。


 なんていう武器だろうか?


 マキみたいに武器に詳しくないので分からない。


 そんな武者が、僕より高い場所、3本の石柱がある場所から僕を見降ろしてる。


 そして武者は僕をに向かって言葉を投げかけた。


 「ウホ!! 良いケツ!! や ら な い か!?」


 キャッチしたくない言葉と共に、武者が僕に降ってきた。


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