第3☆
「もう!! 信じらんない!」
ほっぺをプックリと膨らませて不機嫌さを最大まで主張しているマキ。
腕まで組んで、実に分かりやすい。
先ほどまでの下着姿から、ちゃんと洋服を着てのお怒りだ。
ノースリーブの白いシャツに、黒の超ミニスカート。
ほとんど素肌を見せているこの姿は、男性からしたら下着姿とちょっと違いは分からないモノだが。
髪もしっかりとツインテールにしている。
「だからごめんなさいって。何度も言っているだろ」
とにかく謝る僕。土下座だ。
罪悪感も背徳感も何も感じてはいないのだが、一般的に見て、やはり僕に非があるのだが、ここは謝っておくべきだろう。
「ふーんだ。ごめんなさいで済めばケイサツはいりませーん。
だいたい、小学生に興味は無いとか言っておきながら私の着替えを覗くなんて、
ホントはサク兄ぃロリコンなんじゃない?」
ベッドに腰をかけているマキは、足を組み直しつつ、頭を僕から離すようにして言った。
(……この野郎)
野郎という言葉とは真逆の少女に対して野郎とは、日本語のあり方について厳しい人が聞いたら罵倒されかねない言葉の間違いだが、そんな事、今は関係ない。
頭を下げてはいるが、僕のこめかみはピクピクと動いている。
(だいたい、お前の下着姿なんて珍しくも無いだろう! 風呂上りはパンツ一丁でリビングまで来て牛乳を一気飲みするくせに! それに、つい最近まで一緒に風呂とか入っていたんだから、もっとスゴイモノを色々見せていただろうが!)
とか、僕は思ったが、もちろん口には出さない。
足を組みかえたせいで、ミニスカートから先ほど僕が殴られた原因になったパンツがモロに見えているのだが、もちろんそれも口にしない。
(そういうのと、こういうのでは、意味合いが違うんだろうしな)
スパッツは良くて、パンツはダメみたいな感覚なんだろう。
覚悟の違い。みたいな。
見せるつもり、と見られたでは恥ずかしさが全然違うのだろう。
全然分からんが! 男として共感できない!
「じゃあ、何をしたら許してくれるんだ?」
この茶番に付き合いきれなくなった僕は、早く終わらせるために、解放条件は何か促す。
まだ土下座を始めて10分程度だが、骨折中の土下座は中々ツライ。
「そうだねー」
人さし指を顎に乗せて、うーんと唸るマキ。
そんな事は良いからさっさと条件を出せよ。と僕は思っていると、
「やっぱりこれかなー」
とマキはベッドにそのまま倒れ込み、気だるそうな、誘うような、情熱的な顔で僕を見つつ体をこちらに向け、右手を僕へ向けてつきだしながら指を人差し指からなめらかに動かしてこう言った。
「わ・た・し・を・た・べ・て♡」
「……」
僕は無言で立ち上がり、右足を引きずって何とかマキが寝ているベッドまで近づくと、右腕をマキの頭に巻いて、右手首を左手でつかみ、万力のごとき力を込めて、ツインテールに覆われた頭がい骨を圧迫した。
「うぎゃーーーいぁいいたぁああああい!」
手足をバタバタと動かして、悲鳴を上げている小学生らしき物体。
僕の手やら足やらを叩いて解放を促しているが、関係なく締め上げる。
「やはり、あのとき破壊しておくべきだった」
僕は自身の至らなさを反省した。
「ちょーっつ! ホント、無理、ゴメン! 離してーーー!!」
悲鳴と絶叫がシンフォニーを奏でているが、僕は手を緩めない。
なぜ僕はこうなるまで放っておいたんだろう。
部活ばかり、走る事ばかりを気にしていて、本当に大切なことをやってこなかった。
「違うよ!? 妹的存在の頭がい骨を破壊することは大切な事じゃないよ!?」
なにか、声が聞こえたが、僕の耳には入らない。
今は自己反省しかすることは出来ない。
「ごめん、ごめん! 変えるから! 条件変えるから!!」
やっと、僕が破壊すべき対象から、前向きな提案が聞こえてきた。
「……ほう? なんだ? 」
少しだけ、右腕の力を弱めて、マキの言葉を待つ。
「じゃあ……ディープキ……うぎゃーーー!!」
よし! 破壊しよう! 前向きに!
僕は今までで最大の力を使い、この壊れた頭がい骨の破壊に取り掛かる。
「ウソ! ウソ! 今の冗談! ゴメン! ゴメン! ゴメン!」
ミシミシ、ギシギシと心地よい骨の悲鳴だけが聞こえてくる。
「聞いてっ! それ以上の大きな悲鳴を聞いて!!」
雑音が大きくなるが、破壊に精神集中している僕には、それは些細なことでしかない。
「わかった! プリン! プリン! ミルクプリンで許す!!」
その言葉を聞いた僕は、マキから右腕を離した。
「……それで許してくれるのか?」
僕はマキに聞く。
「はい。ミルクプリンを作ってくれたら、サク兄ぃが私の着替えを覗いた事を許します」
「よし、いいだろう」
なんだか最後はどっちが被害者でどっちが加害者か分からなくなったが、
とにかくコレで僕がマキの着替えを見てしまった件についての和解が成立した。




