第36☆
12☆Worldの世界に入る前に、僕の目の前に2つの選択肢が現れた。
・始まりの地(あなたのプレイヤーストーンがある場所)からスタートしますか?
・以前ログアウトした所からスタートしますか?
といった選択肢だ。
プレイヤーストーンとは、僕がゲームを始めた所においてあった1メートル程の台座の事だろう。
ポーションを売るには台座で商品を登録しなくてはいけないので、始まりの地からスタートした方が都合は良いが……
「走りたいんだよな」
なんか、むちゃくちゃ走りたい気分だったので、僕はログアウトした場所からゲームをスタートする事にする。
下の方の選択肢を選んだ途端。
僕の視界がぐるぐると回転して、気付けば樹の上。
世界樹にいた。
とりあえず、まずはリンゴをジュースに加工して、周囲のリンゴを採取しまくる。
しかし、20個ほど採取した所で、美味しそうなリンゴの個数は×99と表示され、これ以上採取出来なくなった。
では最後に金色リンゴを採ろうと思い辺りをキョロキョロと見回しても、金色リンゴは見つからない。
「ニャー……今日はニャいのかニャー」
と肩を落としつつ、樹を降りる。
樹に登った子猫が降りられなくなる。なんて事も無いようだ。
爪と肉級を使ってスルスルと降りられる。
半分ほど降りた所だろうか。
なんか幻覚が見えた。
「はっはっはっは。人間の少年よ! どうした!? やはり私の美貌に参って、会いに来たくなってしまったのだな。しょうがない。下賤な人間と私は交わす言葉を持たないが、そこまで言うなら君と会話する時間を設けてあげても……ってオイ!」
その幻覚は樹の幹に必死になってしがみついている長い金髪の男のように見えたが、多分気のせいだろう。
その男の耳はとんがっていてエルフみたいだったが、この世界に亜人種はいないってマキは言っていた。
ってかエルフだったら、
「た、高い所は苦手なんだよー」
と言いたげな感じで樹にしがみついていないだろう。
僕は自分の幻覚を振り払うように樹を降りた。
「す、すまない少年! 私は高い所が苦手なのだ! だから頼む! 助けてくれーー!!」
と幻聴まで聞こえ出した。
澤木さんに醜態を見られて、僕はよっぽどショックだったのだろう。
早く走らなくては。
走ってこの心の傷を埋めなくては。
僕は全速力で駆けだした。
今度の目標はブドウの樹だ。




