第35☆
「あー疲れた」
と僕は自分のベットに横たわる。
歴史の時間はやらかしてしまったなと後悔が渦巻いてしょうがない。
『ポーションを作って売る』なんて発言をしてしまった僕に対して、レキシン先生は顔に怒りのマークを出し始めた。
さすが子供達に分かりやすい歴史を!というコンセプトで作られたAI先生だ。
怒っている感情も分かりやすい。
クラスの皆は必死に笑いを抑えていた。
なんとかレキシン先生のお怒りを鎮めようと、僕はあらゆる言いわけを使ったモノだ。
『え……と、そう! ポーションってのは、その……隠喩? みたいなもので……売れるモノを売るって意味で、ポーションって言葉を使ったんです。だから、売れるモノを売るってのが、その日本を経済大国にするために必要だと思います』
言わなくても分かるだろうが、この時の僕は額に汗を流して必死だった。
レキシン先生を怒らせると恐い。
AIによって非常に分かりやすく、人を怒らせたときの恐怖を教えてくれる。
ちなみに寝ているハゲた先生は怒らせるとウザい。
分かりにくく、クドクドと怒っていることをなんとなく伝えようとする。
……どっちも嫌だ。
『ほう……では、今の、この、あらゆるモノが満たされている世界で売れるモノとは一体何ですか?』
とレキシン先生。
そうとうお怒りのようだ。
こんな朝の討論番組に出るような人達が考えるような高尚な問題。
僕みたいな高校生に分かるわけないだろ!
けど、何も答えない訳にはいかないので、無い知恵を絞って考える。
『うん……と、え……っ、その、仕事……仕事を作って売る……とか?』
朝の討論番組で、仕事が無いからとデモが起きていたという話が僕の頭の中で再生された。
『ほう!? 仕事を作って売る? どうやって?』
レキシン先生!
そんな政治家とかが頭を使って考えて話し合っても、答えが出ない問題を僕に振らないでください!
けど、答えない訳にはいかない。
仕事……仕事……お金を稼ぐ……お金……
『え……ゲー……』
と僕が答えようとしたところで、
『レキシン先生。それはこの子達には難しすぎる問題ではないですか?』
と寝ていたはずのハゲた先生が発言した。
いつも寝ているハゲた先生が起きて発言したことに驚いた様子のレキシン先生だったが、すぐに真顔に戻り、ハゲた先生に反論した。
『先輩にあたる、迫田先生にこのような発言をするのは、誠に恐縮ではございますが、私は、子供たちにコレくらいの考えは常に持っていて欲しいと考えています。単純労働。サービス業。公共機関の運営まで、今や、あらゆる労働の場面で、私達AIが使われています。世界では、就業率も1割を切りました。日本だけといって良いでしょう。就業率がまだ3割もあるのは。しかし、その率もコレから確実に下がります。そんな中、これからの子供達には、自分が働くのではなく、AIをどう使うのか? 世界、社会をどう変えるのかという新しいモノを生み出す視点が大切であると思うのです』
と、とても難しい反論をしたレキシン先生に、ハゲた先生……迫田先生も何か言い返していたが、難しすぎたので、割愛。
とにかく、そんな二人の討論で5時間目は終わったのだった。
「うー……澤木さんに笑われた。嫌われてたらどうしよう」
と僕はベットに顔を伏せる。
放課後、家に帰ろうとする時に、澤木さんから
『歴史の時間面白かったよー。ポーションを売るだって! あはははは』
と笑われながら肩を叩かれたのは、確実に僕の心を傷つけた。
「くそ! こんな時は走るぞ! 走って走って! 走ってやるーーーー!!」
と、僕はプレエク3を頭に付ける。
戸締りなど、VR世界に行く準備はしっかりしている。
問題は無い。
タオルケットをかぶり、僕は12☆Worldの世界へと旅立った。




