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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月5日(火) 200万人☆金色リンゴ☆笑顔のおじさん
30/85

第29☆

 プレイヤー名 サク


 レベル 13


 HP 113/113

 MP 2/43

 SP 30/340  max660


 頭 なし

 体 布の服

 右腕 なし

 左腕 なし

 腰 麻のベルト

 脚部 布のズボン

 足 韋駄天B-1212

 アクセサリー 猫のお守り

 武器 皮のムチ


 【装備スター】

 職業 旅人 Lv11

 職業 錬金術師 Lv9

 職業 何も持たざる者 Lv☆

 調理 Lv11

 走り Lv17

 ジャンプ Lv10

 聴覚UP Lv6

 視覚UP Lv8

 嗅覚UP Lv4

 味覚UP Lv12

 触覚UP Lv6

 暴食 Lv☆



 【控えスター】

 武器 ムチ Lv7

 調薬 Lv1


 「はぁ!? なんで最大SPが660もあるの!? 何! 何なの!? サク兄ぃバカなの!? 死ぬの!? しかも、装備、初期装備のままだし! それで走りのレベルが17って。私たちの最高レベルでもまだ13とかなのに!? どんだけ走ったの!? あれですか!? 中世ヨーロッパの格好でむちゃくちゃに走りまわって、サク兄ぃもしかして激怒してるんですか!?」

 と、床に正座しながらまくし立てるマキ。


 僕はリビングに置いているソファで腕を組んでいる。

 「ああ、激怒している。そしてバカはお前だな」

 僕の額には、青筋が入っていることだろう。


 サキの登場で少し気持ちが乱されたが、それは回復した。

 回復したから、激怒している。

 理由はもちろんあの事だ。

 マキは涙目でプルプルと震えている。


 「なんでよ! コレから私がサク兄ぃのスター構成とかステータスを見て、年上のお兄さんを見下す優越感に浸りながら、何も言い返せない涙目のサク兄ぃを言葉攻めする。ワクワクドキドキの夜のアバンチュールタイムが始まるんじゃなかったの!?」

 僕は思いっきりマキの頭を殴る。


 「あいたっ!!」


 「本気で怒っている時にそんな軽口を聞くな!」

 まったく、こいつは。変なこと考えてやがった。


 「いや、だってサク兄ぃが怒っている理由が分かんないし! 何? なんでそこまで怒っているの!? サク兄ぃのエロ本の件なら、サク兄ぃが悪いんだからね!」

 エロ本の件について詳しく問いただしたくなる気持ちが湧いてくるが、その気持ちを抑えて僕はただ一言、低い声で


 「デート」


 と言った。


 その一言を聞いて、ピクリとマキの動きが固まる。


 「……え?な、なんの事かな?」


 ゴン!ともう一発マキの頭を殴る。


 「うきゃ!」


 「しらばっくれるな! お前はお前が生まれる前から一緒にいるんだ。ウソをついても分かるんだよ!」

 僕はトランプのカード状の自分の高性能電子端末(クール・カード)を起動し、ホログラムで日本で一番有名な掲示板に出ているスレッドを表示する。


 「お前、こんなスレが立っているぞ」


 そこには、


 【星空12】おい、お前らエロふんJS ミカたんが、ニボシ内でデートしてくれるらしいぞ【ふんどし】


 【エロふんJS】ミカとデートする方法【part 3】……


 などの掲示板のタイトルが映し出された。


 マキはその光景を見て、


 このロリコン共が……とつぶやいている。


 「で? マキ……ミカさん? 何でこんな事をした?」


 僕は拳を固めているのをマキに見せながら聞いた。


 マキは目をキョロキョロと動かし、上手い言いわけを考えているようだ。


 「それは……お母さんが危篤で……うぎゃん!」


 「言いわけで、アキさんを病気にしてんじゃねえよ! 本気で叩くぞ!」


 僕はマキに振りおろした拳に力を込める。

 グリグリとコブシをマキの頭がい骨にこすりつける。

 マキは痛みに悶絶している。


 アキさんとは、マキ達のお母さんだ。

 両親が家にいないことが多い僕は、色々とアキさんにお世話になっている。

 もう一人の母親と言ってもいい大切な存在だ。


 「痛い痛いいたーーーい。言う! 言うからさ! 」

 僕はマキの頭から拳を外す。


 マキは自分の頭を押さえて イチチと言いながら自分の頭を撫でていた。

 「もーサク兄ぃ。こんなに殴られていると、本当にバカになっちゃうよ。もしバカになりすぎて結婚相手が見つからなくなったら責任とってもらうからね!」


 「なんだ? 今すぐ、愛するって事が分からなくなるまでのバカになりたいのか?」


 僕は堅く握りしめている拳をマキに見せる。

 マキは青ざめ、シュンと頭を下げて大人しくなる。


 「もー、分かった。言う、言いますよ」

 唇をアヒルのようにして、ふてくされつつ話すマキ。


 「実は、夕食を食べた後、ギルドのメンバーと会って、モンスターを倒しつつ話していたんだけど、すぐに、カオリ……巫女委員長のカオリちゃんが塾だか家庭教師だかでログアウトする時間になってさ」


 「皆、小学生とか中学生ばっかりだから、夜の時間は集まりが悪いんだけど、まぁそれはいいか。とにかく、カオリちゃんが『もうログアウトする時間だから、最後に【神託】をするね』って言いだしてさ」


 「【神託】ってのは、僧侶の上級職である巫女になって、なおかつ芸人のスターで【占い】を習得してある程度レベルを上げて、あるイベントをクリアすると習得できるスターでね」


 「上級職のスターは、βテストの特典で引き継げていたし、【占い】のスターはファン共を占っていればレベルは必要な所まで簡単に上げれたし、イベントも、私たちが協力すれば初日でも達成できる奴でさ、昼間サク兄ぃと遊べなかったのも、このイベントをクリアするためだったんだけど」


 「ああ、そう言えば、【神託】の効果を言っていなかったね。【神託】の効果は、1日に一度しか使えなくて、一度使うと仕様者のMPを全て使う代わりに、何らかの有益な情報を書いた神の紙をもらえるモノでさ……ぷえ!」

 僕はゴン!とマキの頭を叩いていた。


 「痛い! 何すんの! 神の紙って冗談じゃないんだからね! 本当に神の紙って言うの!」


 「あ、あぁ、すまん。つい」


 つい、で妹を殴るのがお兄ちゃんです。


 「むー……絶対コレでバカになったら結婚してもらうからね。……まぁその【神託】でた神の……紙に書いてあった情報が、S級の情報でさ」


 「ゲームに関する情報は、図書館とか、街にある新聞とかを買えば、ある程度知れるんだけど、その限界が、たとえば【古文解読】のスターを持って読める図書館の上級書でもAランクでね。S級の情報は初めて見たんだよ」


 と、ここでマキの話が止まる。


 マキは、もじもじと僕をうかがうように僕を上目使いで見る。


 「この話はさ、その、私だけじゃなくてギルド皆の情報だからさ、他の誰にも絶対話さないで欲しいんだけど、いい?」


 「ああ、いいぞ」


 僕はうなずく。

 マキにとってゲームは生活の一部だからな。


 ギルドのメンバーも、おそらく友達のほとんどいないマキにとって、現実の友達以上に大切な存在だろう。

 そのメンバーで掴んだ大切な情報。

 それを周囲に言いふらすのはお兄さんらしくない。そんな奴は紳士ではない。


 「ニボシのS級情報って、12億がかかっている現状だと、多分、数十万円以上で売れるかもしれないけど、それでも黙っていられる?」


 「うっ!」


 僕は一瞬言葉が詰まる。やばい、僕の紳士が揺らぐ。


 「だ、大丈夫だ!お兄ちゃんを信じなさい」


 「……なんかイマイチ信用できないけど……まぁいいか。サク兄ぃは裏切るような人じゃないし。もしこの情報をリークしたら結婚してもらうからね」

とマキ


 「えーと、どこまで話したっけ……そうか、【神託】のS級情報の話か」


 「それで、そのS級情報ってのが、要は中央街にある一番の展望台、ヘラの丘で男女がデートすれば、12億を得るために必要な、メインクエストをクリアすることが出来るって奴でさ」


 「だから、私が代表で、ヘラの丘でファンの誰かとデートしようと思ったわけです」

 「ふむ」


 僕は腕を組み考える。

 いくつか疑問点が浮かんだからだ。


 「まず一つ、なんでファンとデートなんだ? ギルドメンバーで組めばいいだろ?」

 マキの所属しているギルド 星空12は、男女混成のギルドだ。

 イケメンばかりだし、そのメンバーの誰かとでデートした方がマキも楽しいだろうし。


 「うーん、それはシュウやカツヤも言ってたけどさ。『一緒にデートしよう!』とか。けど、あいつら下心が見え見えでね。しかもあの二人と歩くと、二人のファンがめんどくさそうで却下したんだよね」

 とマキ。

 心底嫌そうに顔をゆがめている。


 この場合何が嫌なんだろう。

 シュウとカツヤか? けど嫌な奴とパーティーなんて組まないだろうし。ここは二人のファンに対する嫌悪感が顔に出たのだろう。


 「あの二人、さっさと独立してくれたらいいのに。元々違うギルドのリーダーだったんだしさ。無理やり加入してきて……」

 とつぶやいたマキの言葉は聞こえないフリをするとして。


 ……なんか複雑な関係のようだ。

 星空12が結成された時のエピソードとか小説にしたら面白いんじゃないか? とか思わなくもなくはない。

 まぁそれは僕の知らない物語だ。

 

 今はそれよりも

 「じゃあ、なんで金を採るんだ?そのS級情報に載っていたクエストをクリアするだけなら金は必要ないだろう?」

 と僕は聞く。ここが知りたい。


 「んー。まぁ確かにクエストをクリアするだけなら金は必要ないんだけどさ。ギルドの設立とかに必要なお金が足りなくてさ。100万も大金を用意してデートしてくれるファンなら危険も少ないだろうって事で、あんな条件を出したんだよ」

 とマキ。


 僕ははぁーと大きなため息をつき、思いっきりマキの頬を叩いた。


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