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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月5日(火) 200万人☆金色リンゴ☆笑顔のおじさん
25/85

第24☆

 

 「いやー美味い美味い! 君が作ったジュースは最高だ!こんな美味しいジュースを飲んだ記憶は私にはない」

 と笑顔のおじさん。


 うーん良い笑顔だ。

 なんでも許してしまいそうになる。

 マキといい勝負だ。


 もう少しおじさんの笑顔を見ていたいが、

 「じゃあ僕はそろそろ失礼しますね」

 と席を立とうとする僕。そろそろ行かないと。


 「っちょっちょ! まてまて少年! おじさんをこのまま空腹の少年から食料を奪った非道な大人にしないでくれ!大したモノはやれんが、お礼をさせてくれ」

 と慌てながら僕を席に座り直させようとするおじさん。

 手をワタワタと振りながら慌てている姿も何かカワイイ。


 ってだから誰がおじさんの萌えキャラを望むんだ!!


 「いや、別にいいですよ。気にしないでください。ほら善意は人のためならず!ってやつです。僕に収穫がなかったわけでもないですしね」

 本当に収穫はあった。

 おじさんがリンゴとブドウを混ぜたジュースを望んだので、リンゴとブドウを100mlずつ調理で混ぜたものを作ったのだが、するととんでもないモノが出来たのだ。


 【美味しそうなミックスジュース(錬金)(ブドウ&リンゴ)200ml】

  効果 SP60回復 MP 24回復 HP36回復


 ほとんど万能薬だ。これ。


 手間もリンゴジュースを作る際の半分くらいだし、ジュースを混ぜると効果が上がるという発見は大きい。

 さっそくフルーツリーの森に行って色々試してみたいと思う。


 道中で拾いたいモノもあるし。


 なのでさっさとおじさんとの会話を終了してここを立ち去りたいのだが。


 「いや、そんな事は言わずに、何があったのか知らんが、どちらにしろ君は命の恩人だ。恩返しをさせてくれ」

 とおじさん。

 目つきは真剣だけど、少し涙目で訴えているから、結局萌えおじさんなのは変わっていなかった。オロオロしている。


 「いや、でもおじさん、恩返し出来るモノとかないでしょ?」

 少々失礼な言い方だが、実際そうだろう。

 恩返しできるようなモノを持っていたら餓死しそうになんてならないだろうし。

 なんか、なけなしのお金とか貰ったら、それはそれで気分が悪い。

 このまま何も貰わずに立ち去って、良い事をしたという気分にさせてもらった方が、ずっといい。


 「そう。私は何も持っていない。だからこそ、手に入れれたモノがある。自由と、少年の大きな無償の愛だ。これ以上の宝があるだろうか?この宝のお返しは……コレでも足りないだろう」

 とおじさん。少しキメ顔がウザい。


 「いや、何言って……」

 と急に僕のステータス画面が開きメッセージが流れる。



 【職業スター [何も持たざる者]を習得しました】



 「は!?」

 驚愕する僕。


 【何も持たざる者】なんて職業スターは見たことが無い。少なくても12の基本職スターには無かったはずだ。


 「それが私からの恩返しだ。少年がくれたモノと比べて大したモノではないが、まぁ役に立つと思う。今はコレが精いっぱいだが、いずれもっと良いモノをあげよう。では」


 すくりと立ち上がり、僕に背を向け立ち去ろうとするおじさん。背筋はしっかりとしていて、その背中からは若干覇気のようなモノを感じる。

 そういえば、おじさんの食べ方は綺麗だった。まるで一流貴族が食事をしているような品を感じた。


 「ちょっ! おじさん! ちょっと待ってください! あなた一体何者なんです?」

 立ち去ろうとしていた僕が、今度はおじさんが立ち去ろうとするのを止める。


 おじさんはこっちを見ずに、話す。

 「おじさんはおじさんさ。浮浪者の大食らいの……ただの【何も持たざる者】だよ」

 その声はおじさんの笑顔にぴったりのとても優しい声だった。


 「いや…………じゃあ、名前は?」

 まだ、何かありそうだったが、今の関係ではその先を知ることが出来そうではなかったので、とりあえず名前を聞く事にする。


 くるりと振り替えり、顎の髭をいじるおじさん。

 「名前……か。そうだな。コウテイ……かな?君の国の言葉風に言うと」


 「コウテイ……?コウテイ……皇帝!? え!? おじさん王様!??」

 と驚く僕。


 しかしおじさん……コウテイさんは、はっはっはと笑い返す。

 「人の王か。それなら私もこんな風にはならなかっただろうな。……裏切りに心を痛めることも無かっただろう」

 ぼそりとコウテイさんは言った。それは、独り言だったのだろう。


 「おじさん?」


 「まぁ、今日はここまでにしよう。少年も急いでいるのだろう? 次は……そうだな。酒でも飲みながら話そうか。少年が作った……少年の名前は?」


 「サク……です」

 その、コウテイさんの澄んだ瞳を見て一瞬本名を言いそうになった。


 「サク……か。良い名だな。サクが作った葡萄酒は美味しそうだ。それまでに、酒代が払えるように、おじさんも頑張るとしよう」

 じゃあ、とコウテイと名乗るおじさんは手をひらひらとふりながら去っていった。


 僕はそのおじさんの背中を、ポカーンと見つめていたのだった。



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