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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月5日(火) 200万人☆金色リンゴ☆笑顔のおじさん
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第1☆

 

 2112年 7月5日(火)


 空気が流れる。


 世界が揺れる。


 変わる。景色。風景。


 赤い地面が視界の半分を占めているが、僕はそれを見ていない。


 世界がさらにゆがむ。


 傾く。


 最後のカーブ。


 ココを抜ければ……


 !?


 突如壊れる世界。半分だった赤い地面が僕の視界を全て覆い。


 すぐに青が広がったと思うとまた赤くなる。


 それが何回も繰り返されて……


 僕は気づく。


 これは……


 ボスッ


 「ううん?」


 下腹部に生じた違和感で、僕は、

 秀早紀(しゅうさき) (さくら) は夢から覚醒し始める。


 赤から青に変わって、黒に戻った僕の視界を、徐々に世界へ広げていく。

 白いもやに覆われている視界が、だんだんと世界を正確に認識し始めた時。


 僕の目の前には、全ての顔筋を唇に集中している少女の顔があった。


 「……」


 僕はためらいなく、獲物に向けて行軍を開始している少女の顔面を右手で掴み、全身全霊、粉骨砕身、持てる力の全てを使って、少女の顔面を潰す。


 「いいいたぁい!いたい!いーたい!いったい!」

 ぐぎぎと少女の顔面が軋む音と、少女の悲鳴が聞こえるが、僕は構わずにさらに力を込める。

 「……最期に何か言い残した言葉はあるか?」


「ごめん!ごめんなさい!離してください!」


 少女の謝罪の言葉を聞いて、右手の圧力から解放してあげる僕。


 「うっー!」

 と、少女は顔を僕の胸の中にうずめ丸くなる。


 (やれやれ)

 僕は、少女のさらさらしたツインテールの頭にポンと手を置き、ささやいた。


 「5秒以内に降りろ。じゃないと次は頭がい骨だ」


 ツインテールの少女はすぐに僕のベットから飛び降り、僕と距離を開ける。

 ちょっと涙目だ。


 「サク兄ぃさっきからひどくない!? 隣に住んでいる妹的存在の美少女が起こしに来たんだよ!? しかも目覚めのキスのサービス付きで!!」

 とツインテールの少女。


 僕の家の隣に住んでいる小学6年生、帝 蒔姫 (みかど まき)が朝から喚く。


 ツインテールにまとめてある髪の毛は、確かにキューティクルばっちりでさらさらしていて美しいし、くりくりとした大きな目とスラリと伸びた白くて長い脚は、いつでもアイドルやモデルになれるだけの素養を感じさせるモノではあるが。


 「自分から美少女とか言い出す奴は美少女じゃねぇよ。それに小学生にキスされて喜ぶ趣味もない」


 僕は体を起して、立ち……立ちあがる前に右足を横にずらし、ベッドの下に落としてから、枕の横に立て掛けていた松葉杖で体を支えてから起き上がる。


 右足には、その足が動けない事を証明しているかのように、厳重で頑丈なギプスが巻かれていた。


 「それでもさー。こんな可愛らしい女の子の顔面にアイアンクローをするのは、男としてどうなんですか?」


 ほっぺを膨らませて、不機嫌さを主張するマキは、僕がつまずかないように、床に落ちているマンガの単行本なんかを片づけてくれている。


 「可愛らしい女の子は、ケガをしている男性の寝込みを襲ったりしないぞ?」

 そう言いながら、僕は今度はちゃんと感謝の意を込めてマキの頭に手を載せた。


 「ありがとう。と おはよう」

 僕は笑顔でマキに言った。


 「えへへへ。おはよー」

 顔筋を横にニッと広げたマキの笑顔は、今度こそちゃんと可愛らしい女の子の顔になった。


 マキの小さな肩を借りてリビングまで降りた僕は、テーブルの上に朝食があるのを見つける。


 目玉焼きに焼いた鮭の切り身。ご飯。味噌汁。サラダ。


 僕の両親は昨日から海外へ遺跡の発掘調査へ行っているから、この食事を準備したのは……


 「サキが来てたのか?」

 

 僕は冷蔵庫から野菜ジュースを取り出しているマキに聞いた。


 「うー、そうだよー」

 また少しだけほっぺを膨らませているマキは、野菜ジュースをガラスのコップに次いで僕に渡す。


 ……なんでちょっと不機嫌なんだよ。

 しょうがないだろう。

 お前は甘いホットケーキを苦みの塊に錬成出来るほどの料理下手なんだから。


 ちなみにサキとは、帝 咲姫 (みかど さき)。

 高校1年生で僕の一つ下。マキのお姉さんだ。

 僕と同じ高校に通っていて、同じ陸上部に所属している。マネージャーだ。


 あと、マキは同じ系列の小学校に通っている。

 だからマキも今日は学校の創立記念でお休みだ。


 「じゃあサキは……陸上部の朝練か」

 僕はマキから貰った野菜ジュースを口に運びながらマキに聞く。


 「うん。パッパっと作ってピューっと行っちゃったよ。学校の創立記念日で今日はお休みなのに忙しい事ですねー」

 マキも自分にリンゴジュースを用意してから僕の前の椅子に座る。


 (そうか、お礼を言いそびれたな)

 よく見ると外に洗濯モノも干してあった。


 マキとサキの両親も海外出張が多くて、

 昔から3人一緒に僕の家で食事をする機会は多いのだが、

 やはり礼儀は必要だろう。


 (アイツのおかげで助かった事が多すぎる……失っているモノも多いが)

 少し過去のトラウマを思い出しつつも、僕達のお母さん役を担ってくれているサキに何かお礼をしてあげようと考えていると


 「まぁ、お姉ちゃんは、お礼とか気にしないで、早く陸上部に復帰して欲しいって言ってたよ。」

 とそっけない態度でマキは目玉焼きを口にしながら言った。


 僕がこういったことに恩を感じることも予想していたんだろう。

 さすが幼馴染。15年間の付き合いは伊達じゃない。


 「復帰……か」

 僕は味噌汁を飲む。

 合わせ味噌の香りと、昆布と煮干しの出汁の旨味が、優しく口の中で踊る。


 チラリと右足のギブスが目に入った。


 「まぁ、頑張るよ」


 「頑張ってー」


 どうでもいいことのように、マキは目玉焼きに醤油をかけながら答えた。


 「……やる気のない応援ありがとう」

 僕は鮭の切り身に箸を入れて、口に含む。

 鮭のうまみが口に広がった後に来る塩分の刺激が、僕の右手を白米へと誘う。


 「正直、ケガしてくれている方が、サク兄ぃと遊べる時間が増えるしねー」

 マキは醤油のかかった目玉焼きを口に入れる。


 (それは素直な意見だな)と僕は思っていると

 「けど、サク兄ぃの復帰の応援をしていない訳じゃないのさ。んふふー。この後、サク兄ぃ時間ある?」

 マキはにやけながら目玉焼きにソースをかけつつ僕に聞く。


 って、相変わらず変な食べ方だ。

 何もかけずに食べる→醤油をかけて食べる→ソースをかけて食べる

 『食材の可能性を広げているのだ』

 とか言っていたけど、そんなに味がごちゃごちゃして大丈夫なのか?


 マキの味覚の心配をしつつ、僕はマキの問いに答える。

 「ああ、ちょっと筋トレするだけで、とくに予定は無いよ」

 マキのにやけ顔が気になりながらも白米の甘みを感じつつ答える。


 「よし! じゃあ、食べ終わって筋トレしたら、私の部屋に来てよ」

 ソースと醤油がごっちゃになった目玉焼きを食べながらマキは提案する。

 

 僕は時計を見る。

 (今が朝の7時だから、筋トレに2時間。あと準備とか含めて……)

 

 「じゃあ、10時でいいか?」

 「うーん。ちょっとギリギリだけど、OK。じゃあ部屋で待っているね」


 そう言いながら、マキはサラダにゴマドレをかけ始めた。


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