第12☆
「よっと」
僕はジャンプして、人一倍美味しそうに見えたリンゴを取る。
ジャンプスターのおかげか、1メートルくらい飛び上がれた。
ここはフルーツリーの森。
果物が生い茂る甘い香りの森だ。
僕はその森のなかでも一際大きなリンゴの木の下にいた。
100メートルはある高さ。
幹の直径だけで50メートルはある。
ちょっとした高層マンションみたいだ。
エルフとかいたら住んでそう。
そういえば、このゲームには、ファンタジーでおなじみのエルフやドワーフ。獣人族などの亜人種が存在しないそうだ。
つまんない。
高慢な態度のエルフとか大好きなのに。
バカにしてきたエルフを戦闘でボコボコにしたり、声を掛けられてもシカトしたりしたい。
超気持ち良さそう。
まぁ、そんな、ありえない話は置いておいて。
「よしよし」
先ほど手に入れたリンゴを確認する。
アイテム名は【美味しそうなリンゴ】
食べるとSPが10回復するそうだ。
さっそく【美味しそうなリンゴ】を食べる。
口の奥までジュンワリとリンゴの果汁が広がっていき、僕の鼻腔にリンゴの豊かな香りが広がっていく。
遅れて酸味と甘みが僕の脳髄を刺激する。
うん。仮想ゲームだから脳髄を直接刺激しているんだよね。
パクパクとリンゴを口に入れて完食する。
リンゴの木に行く途中で、イチゴなんかもつまんでいたから、SPも半分まで回復している。
ちなみにイチゴ。
僕の握り拳くらいの大きさで、5メートルくらいの高さの木に生えていた。
さすがゲームだと思った。
「もうひとつ食べておきたいところだけど」
僕はリンゴがなっている木を見る。
手の届く所にいくつもリンゴがなっているが、美味しそうに見えるのは木の頂上付近にしかない。
「うーん。手頃なのを食べてもいいけど、せっかく見つけたんだから、美味しそうなのを食べたい」
僕は意外と凝り性だ。
そのくせ気まぐれだったりするが。
とにかく今は食事には手が抜けない気分だ。
「木のぼりは苦手なんだよなー。しかもこの木かなり高いし」
頂上まで100メートルはありそうなのだ。
プロの木登り師でも頂上まで行けるかどうか……
プロの木登り師っているのか?
プロのロッククライマーがいるんだから、いてもおかしくないのか。
いや、そんな話は置いておいて。
「僕が鳥だったらあそこまで飛んで取るんだけどなー。あっはっは」
面白くも無い独り言だ。
周囲に人がいなくて本当に良かったと思う。
(鳥か……あれ? そういえば、何か忘れているような?)
僕はあることを思い出して、装備画面を出す。
(そうだよ! あれがあった!)
僕はあるアイテムを装備する。
同梱版特典で当てた【猫のお守り】
【猫のお守り】は猫の肉級を模したネックレスのようなモノだった。
(【猫のお守り】の効果は、確か猫の身体能力を借りるというモノだったはず。猫なら木も登れるはずだ)
【猫のお守り】を装備した途端。僕の手は猫のように変化し、顔にひげが生えた。
「ニャるほど。こうニャるのかニャン」
……なんか口調まで猫っぽくなっている。
後ろを見ると、しっぽもあった。
耳は……ちっ。
僕は猫の手になった右手で自分の頭部を確認する。
耳は普通の耳だった。
(猫耳があったら、マキに装備させて猫耳をモフモフしようと思ったのに)
現実では、両親は留守がちだし、僕も部活が忙しいのでペットを飼うことは出来ない。
ロボットと生き物はやはり違うと思うし、そのフラストレーションをこのアイテムで解消できるかと思ったが、そう上手くはいかないようだ。
とにかく、手は猫の手になったのだ。
「猫の手を借りた。忙しくもニャいのに……くっくっく」
……本当に周りに人がいなくて良かったと思います。
僕は借りていない猫の手を使って、スルスルと木を登っていく。
「おお!」
僕は自分の今の体の状況に感動した。
猫の爪ががっちりと樹木を掴み、肉級がしっかりとそれを固定する。
体も軽くなったようで、そのくせ筋力は増大しているのか、爪だけで僕の体を支えて、苦も無く木を登っていける。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃなぁ!!」
なんとなくテンションが上がった僕はそのまま木の頂上まで登っていく。
「にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃぁあああーーーーーーー!!!」
「ふっ……何か騒がしいかと思えば人間か、人間……あっ、ちょっ……」
一気に、加勢に!猫は頂上へまっしぐら!
「うニャーーーーーーー!! ついニャーーーーーーーーー!」
僕は登頂を果たした。
気分はエベレストに登った登山家だ。木登り師では無い。
「ふぅー……おお!!」
僕は見えた景色に歓声を上げる。
僕のいる場所から5キロほど先に、高さが100メートルくらいの巨大な岸壁があった。
岸壁は永遠と続いている。
まるで万里の長城だ。
その奥にはまた森が広がっているように見える。
森を越えると巨大な山がある。
霧がかかっていて見えにくいが、標高は3000メートルくらいだろうか?
昔の富士山のように綺麗な円錐形の形をしている。
その山の頂上に濃い青色の綺麗な大岩光り輝いている。
「あれは欲しいニャー……ウルトラマリンの色のモノは、全て俺のモノニャ」
なんか一人称が変わるくらいテンションが上がったが、高い所にいるからしょうがない。
バカは高い所が好きなんて言うが、高い所に行くと人はバカになるのだ。
空気が薄いから。
そうしとこう。
「って、景色に見惚れている場合じゃないニャン」
僕は自分がこの木に登った理由を思い出す。
木の頂上から少し降りると、そこには大量な美味しそうなリンゴがあった。
「ココは宝石箱やー」
僕はハイテンションのまま、次々とリンゴをアイテムボックスに入れていく。
猫の手でもリンゴを掴めたのはビックリしたが。
アイテムボックスは入れたいと思ったモノを持っていると、次々と消していってくれる。
そして、出したいと思ったモノを選べばそのアイテムが何もない所から現れる。
まるで手品みたいだ。
とにかくリンゴを採りまくり、【美味しそうなリンゴ】×99と表示されるまで採った。
一応、アイテムボックスに入れる前に、リンゴの品質チェックをしていたのだが、頂上付近のリンゴは質が良いようだ。
美味しくなさそうリンゴは、4~5個しかなかった。
「ふーそろそろ良いかニャ……ん?」
頂上にあるリンゴを狩りつくした僕は、とても取りにくそうな場所にあるリンゴに目がいった。
ってか、そのリンゴはめちゃくちゃ目立っていた。
今まで気付けなかったのが不思議なくらいだ。
だって、そのリンゴは金色に光り輝いていたから。




