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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年6月23日(金) 乙女達の戦争
1/85

第0☆




 新緑の草原に、15、6歳の美しい少女が3人立っていた。

 その少女の達の服装は、学校の制服のようなブレザーで、色は赤を基調している。

 チェックのスカートが、初夏を感じさせる優しい風でゆらゆらと揺らめく。

 新しい生命の息吹を感じさせる草原に、まだ大人に成りきれていない少女達。


 そんな絵にかいたような平和な光景が、一瞬で崩された。


 彼女達の手によって。


 「【バーン・バレット】」


 メガネをかけた三つ編みの少女が言葉を発すると共に、その少女の両手にある装飾された美しい赤の拳銃から、紅く燃える炎の弾が無数に放たれる。


 着弾した弾の一つ一つから、人一人飲み込めそうなほどの大きさの火柱が上がる。


 メガネの少女から50メートル程離れた所にいた”獲物”の周囲は、紅蓮の炎に包まれた。

 まだ若い、生命あふれる新緑の草木が、一瞬で黒い炭クズに変わって散っていく。


 「やったの!?」


 右手に盾、左手に棘が付いた巨大な鉄球に鎖を組み合わせた武器。

 モーニングスターを持った群青色の髪をポニーテールにした少女が、先ほど弾を放ったメガネの少女に聞く。


 「いいえ。まだです。まだ反応があります」

 しかし答えたのは、彼女達のもう一人の仲間。

 作られた美しい顔に、青緑色の髪が美しい少女だった。


 少女は右手の杖を掲げて、なにやらつぶやき始める。


 「星空に座す、星天の王よ。彼の者は我の敵なり。彼の者は汝の敵なり。我らに仇なす……」


 「そんな事しなくても、普通に撃てるでしょ? って使わない約束か」


 青緑色髪の少女のすぐ後ろに、ピンク色の髪を二つにまとめた少女がいた。


 右手には日本刀。左手にクナイ。

 その少女を現す言葉は、ただ一文字、忍 である。


 額は鉢がねに覆われていて、目から下は布で隠されていて顔の判別はつかないが、目と、布越しから見える輪郭から、かなりの美しさであると分かる。

 短い忍服から見える細くて長い脚は網タイツで覆われている。


 彼女こそ、3人の少女の”獲物”である。


 「いつの間に!?」


 3人の少女達が声を出すと同時に、ピンクの忍は宙を舞った。文字通り。


 空高く飛び上がり、体をひねり、回し、逆再生の高飛び込みを見ているような忍の宙の舞いに、敵対していたはずの少女達は一瞬見惚れてしまう。


 しかし、3人の中で前衛を務める、メンバーの中で一番のしっかり者である、盾を持った少女が気を取り直してピンクの忍に襲いかかる。


 いや、襲いかかろうとした。


 盾を持った少女がピンクの忍の所に向かおうとした瞬間。

 彼女の上半身が地面に落ちた。


 「え!?」


 困惑した顔を浮かべる盾を持った少女の後ろには、彼女が襲おうとしたピンクの忍が日本刀を構えて立っていた。


 空高く、飛んだはずのピンクの忍が。


 「……遅い」

 ポツリとピンクの忍。


 「キタカゼェ!!」

 仲間を殺られた少女達が仲間の名前を叫びつつピンクの忍に襲いかかる。


 ピンクの忍は武器を構える。

 これは、別に仲間を殺された二人の少女の気迫に圧倒されたからではない。

 彼女が武器を構えた訳は……


 風切り音と共に、ピンクの忍の周囲に無数の矢が突き刺さる。

 その数は1000を超えるだろう。豪雨のように矢が降り注いだ。


 突如剣山のようになった地面に驚き、足を止める少女達。


 『何をやっているの!? 早く逃げなさい!!』

 メガネと青緑色の少女達の頭に響くのは、彼女達のリーダーの声。

 「でもっ……マネッ……リーダーの【無間の降矢】を不意打ちで喰らっては、いくらアイツでも……」

 と、メガネの少女。


 しかし、


 「……やってくれるじゃない! 3人を囮にして、超遠距離から攻撃なんてっ!」


 矢の剣山から、ピンクの忍が姿を現す。 彼女の周囲には、折れた矢が大量に散らばっている。


 「な!? まさか全て叩き落としたっていうの?」

 驚愕する二人。


 「全てじゃないわよ。 1、2本喰らったわ」

 良く見るとピンクの忍の肩に矢が刺さっているのが見える。


 しかし、地面に刺さった矢で、人一人いるかいないか簡単に判別が付かないようになっているのだ。

 そんな量の矢の雨を、捌き切ったのだ。

 肩に1本喰らったからなんだというのか。



 「くっ……【バスター……」

 メガネの少女が銃を構えてピンクの忍に狙いをつけるが……


 トスッ


 と、リンゴにナイフを刺したような軽い音が周囲に響いた。


 ピンクの忍の左手にあるクナイから、光る刃が伸びている。

 その刃が、メガネの少女の喉に穴を空けていた。

 メガネの少女の両手から、赤く装飾された銃が落ちる。



 その様子を見ていた青緑色の髪の少女が、引こうと後ろに下がった瞬間。

 少女の視界は暗くなった。

 青緑色の少女の胸の部分にも、すでに穴が空いていた。


 「ふう」

 とピンクの忍は、二人を貫いた刃を抜きつつ息をつく。


 『リョウ! プラス!! ……許せない……よくも二人を』

 ピンクの忍の頭の中に、先ほど矢を撃ったと思われる人物の声が響く。


 その声を聞き、やれやれといった感じで首を振るピンクの忍。

 会話の回線を矢の人物に繋ぎ、反論する。

 『許せないってさー。2人を囮にしたのはアンタじゃん。ソレに……』


 はぁ、と一息つく忍。




 『これ”ゲーム”だし。そんなマジになんなくてもいいんじゃない?』






 ピンクの忍はチラリと、彼女が先ほど倒した少女達の体を見る。

 傷口は常に白いモヤみたいな光で覆われていて、血も出ていない。


 そう、今彼女達がいるのはゲームの中。

 12☆Worldというゲームのβテスト中に行われている、大規模なプレイヤー同士によるバトルロワイヤル大会中である。




 『うるさい! だいたい、12☆Worldは軽減されているといっても、無駄に痛みとかリアルなんだからあんな殺し方しなくていいでしょ!?』

 と言ってきたのは、先ほどピンク髪の忍に上半身と下半身を真っ二つに斬られた少女、キタカゼだ。


 『それに、私達を倒す時に使っていた技スター。あれは明らかに”マスター”でした』


 『そうよ! あれは使わない約束でしょ!? 許せないわ!』


 と青緑色の髪の少女プラスの声に、メガネの少女リョウの声。



 「はぁ……許せないってさー……あんたらが最初に約束破ったんじゃない。さっき使ってきた矢の技、あれも”マスター”でしょ?」

 ほっぺを膨らませて文句を言うピンクの忍。


 ギクリ! といった感じの音が3つの回線から漏れている。


 『うう……うるさいわね! 私達はアイドルなの!! ゲームばっかり出来ないの!! あんたみたいな一般人の暇人と一緒にすんな!!』


 『そうよ! 私達は歌や踊りのレッスンで忙しいの!』


 『シュウくんを独り占めにして!!』


 『私は、まぁ、AIですので、常にゲームを攻略しているのですが』

 と、4人のどうでもいい大きな声に顔をしかめるピンクの忍。


 「まぁ、いいや。じゃあ、こっからは”マスター”ありのガチンコで。負けたらどうなるか覚えているわよね?」

 とピンクの忍は笑みを浮かべながら問いかける。


 『ちっ……! ええ。私達が負けたら、メンバー全員あんたが止めていいと言うまでツインテールにする。私達が……』


 「……私達が負けたら、私達ギルドのメンバーの素性を明らかにする……でしょ? まぁ、それは……」


 「ありえないけどね」



 ピンクの忍が消えると同時に、その場から半径50メートルの場所に矢の豪雨が降り注ぐ。

 ピンクの忍は、秒速100mのスピードで移動するが、矢の集中豪雨は、規則正しく、ピンクの忍の後を追う


 「追尾してくるのか……さて、アイツはどれくらい離れているのかな?」


 狙撃者の姿は見えない。


 

 (矢の来る方角から、感で走っているけど、どれくらいまで離れているのかは分からないか。1キロ2キロならどうとでもなるけど……10キロ以上なら不味いわね)

とピンクの忍は思いながらも、まぁ、なんとかなるかと走った。


 1人じゃないし。仲間もいる。ピンクの忍は、会話を仲間に繋いだ。









 「盾隊前ぇ!! 油断するなぁ! 相手は"酉"と同等のクエスト級ボスだと思え!!」


 いかつい男性の号令で、盾を構えた鎧の騎士が5人整列する。


 騎士達の前には、一人の銀髪の少年。


 背は大きくなく、150センチほどで線も細い。

 少年はひと振りの銅剣を持っているだけだった。


 その整った、少女のような少年のような中性的な顔の半分は、白い仮面で隠れている。 その仮面は笑っているようだった。


 そんな怪しい風体の少年とはいえ、所詮は子供。

 しかも女の子のような外見だ。


 男性達は、今前にいる騎士風な格好をした5名に加えて、後ろに指示を出しているリーダーと、後衛職6人。


 見下すように、盾を構えている騎士風の男が横にいる仲間に話す。


 「へへへ。俺達相手に1人とはなぁ。しかもツイているのかいないのか分からないようなガキんちょだ。噂には聞いていたが、どうやらバカばっかりらしいな、ほ……」



 爆音と共に、盾を構えていた騎士たちが吹き飛ぶ。



 少年の放り投げた剣が騎士たちの前の地面に突き刺さった瞬間、大爆発を起こしたのだ。


 「っつ………!! おい!! てめえら!! 大丈夫か!?」

 号令を出していた男性が倒れている騎士達に声をかける。


 しかし盾を構えていた、十分な防御姿勢をとっていたはずの騎士たちは誰一人倒れていて動かない。


 「ツイてなかったね。オジさん達。 さっきミカちゃんから、”マスター”の使用許可が下りたんだ。楽に死ねるから、捉えようによってはツイてるかもしれないけどさ」


 と銀髪の少年の周りには、先ほど大爆発を起こした剣と同じモノが数十本出現する。



 「…………っつ!!?」


 言葉も出ない、いかつい男性。


 「て、オジさん達が言ってたツイているってこんな意味じゃないか……まぁ、どっちにしても僕みたいな奴に負けるようじゃ、オジさん達は色々な意味でツイてないかもね。じゃあ、バイバイ」


 銀髪の少年の剣が、生き残っている男性達を襲った。










 燃え上がる大地に、2人の少年がいた。

 1人は煌びやかな赤い衣装を身に纏い、もう1人の少年は、いわゆるテレビに出てくるヒーローのような金色に輝く全身タイツを身に着けていた。


 「クソ!! 僕達はヒーローなんだ!! 選ばれし者なんだ!! それを! こんな格好だけのエセヒーローに!!」

 赤色の衣装を身に纏っている整った顔をしている少年が息を切らし、踊っていた。


 いや、戦っているのだろう。

 しかし少年は戦いらしき事を何もできないでいた。

 金色のヒーロースーツの少年の激しい攻撃に、何も反撃出来ず、ただ避ける事しか出来ていないのだ。


 金色スーツの少年が繰り出す拳は、光輝いていて、明らかに”気”とか”オーラ”のようなモノを纏っている。


 「クソ! クソ!! 皆ぁ!! 僕に力をくれぇ!!」

 と赤色の少年が叫ぶ。


 「いや、あんな前衛的な倒れ方してる人に、それは無理だろ」

 と、金色ヒーローの少年が、顔の下半分が無い黄金の仮面の中からツッコむ。



 彼らの戦っている周囲には、上半身が地面に埋まり、足でこいのぼりを作っている者。

 逆に、下半身だけが埋まり、上半身だけでピサの斜塔のモノマネをしている人。

 右半身だけで三大ピラミッドを再現している者など、様々なやられ方をしている赤色の少年の仲間達が転がっていた。


 「兄ちゃんは、モンサンミッシェルにするから、お楽しみに♪」

 ニカッと仮面の隙間から八重歯を出して金色スーツの少年は笑うのだった。











 少女がいた。


 彼女の顔は、大きめに作られた服の襟によって半分ほど隠れているが、水色に銀を混ぜたような髪は、ショートにまっすぐ揃えられていて、水面に反射した満月のように光り輝いている。

 その隙間から見える顔は、無表情であるが整っていて美しい。息が止まるようだ。


 また、彼女の周囲も恐ろしいほどに美しかった。

 白の芸術である。

 十数名の人間と、数十本の木々。その全てが白かった。

 白しかこの場を示す色は存在していない。

 中心の彼女を除いて。

 樹も、人も、全てが生きている事を停止していた。

 白は停止の色。

 パチリと、中心にいた少女が指を鳴らす。

 その途端、白の世界が崩れ始める。

 粉々になった樹と人が、煌めく結晶に変わり、世界は銀の光に包まれた。

 少女は無言で歩いて行く。向かうべきところは、仲間の所だ。








 「ふーっ。けっこう遠い所から狙っていたのね」

 ピンクの忍が汗を拭いつつ目の前の女性に話しかけた。


 20代に見えるメガネをかけた女性は、全身が切り裂かれ、ボロボロになっている。その手には、銀色の美しい装飾が掘られた弓がある。


 「……なんで、そんなに矢が刺さっているのに、まだ生きているのよ」

 息も絶え絶えな様子で、弓の女性がピンクの忍に聞いた。


 ピンクの忍の背中には、数十本の矢が、まるでハリネズミのように刺さっている。


 「ん? ああ、HPは委員長が回復してくれていたから、別に問題は無かったし、矢が刺さった状態で動けば、新しい矢も刺さりにくいかなーって」

 ピンクの忍が右肩に刺さっている矢を引き抜くと、その傷口は一瞬で光り、治っていく。

 それを見てケラケラと笑うピンクの忍。


 「バカな……! 私はずっとあなたを狙っていたけど、回復を受けている素振りは一つも無かったわ……一体いつ」

 と弓の女性。


 「いや、だからずっと。あんたの弓が15キロ先から狙えていたのに、回復魔法が同じ事出来ない理屈は無いでしょ?」

 当たり前のようにいうピンクの忍。


 「そんな……」

 ガクリとうなだれる女性。


 「やっぱ持つべきモノは仲間だねー、あんたの居場所は双子姉妹が教えてくれたし。1人で出来ない事を補い合うのが仲間。囮とかじゃなくてね」

 とピンクの忍はクナイを持って言う。


 「じゃあ、コレで私たちの勝ち……かな? 他のギルドも仲間が潰したし……ツインテールよろしく♪」

 その言葉と共に、ピンクの忍は日本刀を振るった。






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 「……はい、終わりーー」


 黒い髪に短髪の175センチほどの身長の少年が、カード状の高性能端末【クール・カード】から映し出されていたホログラムを消す。


「えー。良いじゃん。もうちょっと一緒に見ようよー」


 とお風呂上りの、キャミソールにスポーツタイプのショーツを履いた小学生くらいの少女が、抗議の声をあげる。


 「ダメだ! 明日は地区大会で忙しいんだから、もう終わり」


 「えー。良い所なのに……この後、敵の最終兵器。カースドラゴンが襲来して、星空12(ほしぞらトゥエルブ)が大ピンチになるんだから」

 と小学生の少女が、少年の鍛えられた二ノ腕をつかんでまだ見たいと催促する。



 「内容を知っているんなら、もう見なくても良いだろうが! だいたい、敵って何だよ。敵っていうなら、あのピンクの忍者だろ?」

と少年。


 「えー当然星空12が正義だよー。だって11+1(イレブンプラスワン)の方が不意打ちしてきたんだよ?」

 ぶーっとほっぺを膨らませる少女。


 「不意打ちだろうがなんだろうが、可愛い女性の方が正義だ。」

 「じゃあ、星空12の方が正義じゃん」

 「どこが。あんな小学生ぐらいの年齢の軍団。巷ではカワイイとか言われて話題だけど、所詮ガキだね。僕は断然11+1派だ。やっぱキタカゼ……痛っ!!」

 ガン! と少女は少年の右足のすねを蹴りあげる。


 「ふーんだ! サク兄ぃなんて知らない!!」

 と少女は部屋を出て行く。


 「そんなに怒らなくてもいいだろ……」

 少年はブツブツと蹴られた右足をさする。



 「自分の好きなゲームアイドルがバカにされたのが気に食わなかったのか? くっだらねー! ゲームなんて実在し無いじゃん。ただの幻想じゃん。せいぜいイメージトレーニングが出来るかな? くらいだろ! 現実で走っている方が何倍も楽しいね!」



 そんな事を、この時の少年は、秀早紀(しゅうさき) (さくら)は考えていた。


 一ヶ月後には、自分が同じゲームの世界で、先ほどのホログラムに出ていたトッププレイヤー達と肩を並べるプレイヤーになるなんて、想像さえしていない。


 



 2112年6月23日(金) 12☆World発売まであと11日


 12☆Worldのプロローグです。


 実は、始めこのプロローグは無かったのですが、30話まで投稿した後で、バトル要素が少ない事に気づき、急遽追加したモノです。


 本編と雰囲気を変えるために、三人称で書きました。


 このプロローグの話は、作中最強クラスのキャラクター達のお話です。


 主人公は、こんなバトルしません。


 走って転んで叫びます(笑)


 冒険あり恋愛ありバトルありギャグありの、何でもアリアリの作品を目指して書いています。


 遅筆で稚筆ではございますが、よろしければ12☆Worldの世界をお楽しみください。

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