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0章:リーゼンバーグの立ち位置(盟約の内側/均衡の番)
アルカがまだ「国」ではなく「聖域」だった頃、そこに在ったのは二つの役割だった。
大地と水脈を巡らせる“海”としてのローゼンベルク。
その奔流を凪へ還し、巡りを壊さず繋ぐ“錨”としてのリーゼンバーグ。
リーゼンバーグは、王ではない。
だが王の隣で、王の力が世界を壊さぬように受け止め続けた一族だった。
やがて外からアルカディアス家が参入し、政と秩序の形が整えられていく。
それは当初、支配ではなく「分担」だった。
海と錨、そして政。
三つが噛み合うことで、聖域は国として息をし始めた。
しかし、簒奪の時代が訪れる。
王権がすり替わり、歴史が書き換えられ、均衡は制度へ変質した。
その瞬間から、リーゼンバーグの役割は変えられる。
“凪を繋ぐ錨”は、
“王家が支配を成立させるための鎖”へと作り替えられていった。
聖女の系譜は守るためのものだった。
だがいつしか、それは奪われ、管理され、囲われるものになる。
リーゼンバーグはその最前線に立たされ続けた。
救いのために存在した家が、支配のために必要不可欠な家へ――
そうして、最も深く傷つくことになった。




