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婚約破棄されて勘当されたわたしは都会派冒険者になる

掲載日:2026/04/27

「キャサリン・ローズラインお前のような冷たい女とは結婚できない。おれは……いや、わたしはお前の妹アビゲイルと結婚する。お前との婚約は、破棄だ」


 わたくしの婚約者であり、この国の王太子である。ロバート様。いや、破棄されたから、ロバート王太子殿下は、わたくしにそう言った。


「婚約破棄ですか?」とわたくしは繰り返した。言葉を機械的に口にしながら頭で、どう対処するか考える。


 いきなりの婚約破棄、これは予想してなかった。とりあえず、時間を稼ぐ。それにしても、夜会が始まってすぐで良かった。まだ外は明るい。明るいうちに済ませたい。


「そうだ。驚いたであろう。今更、言い訳しても遅い」

「冷たいとはどういうことでございますでしょうか?」


 時間を稼ぐためには話させるのが一番だ。



「わからぬのか?お前は母親からの宝石を独り占めしたそうだな」


 わたくしの実母のものはわたくしの物の、はずですけど‥‥‥


「はい、わたくしの亡くなった実母の宝石のことでございますね。実母の実家の女系が代々受け継いだ宝石のことをおっしゃってるのでございますね。それはとっくに三ヶ月早く生まれた義理の妹に渡してますが‥‥‥」


 ちょっとまわりが驚いている。良識ある人はそう反応するよね!


 考えなくては、どう対応すればいい?えっと最悪は実父がわたくしをどこかの変態に売ること。それを避けるには、家を出ること‥‥‥出るには。ぁ勘当!


「畏まりました。婚約破棄でございますね。それではすぐに退出いたします。わたくしは家の名誉を傷つけました」


「何と言うやつだ。お前のようなやつは勘当だ」

 神の声だ。いや、お父様の声だ。ありがとう。お父様。キャサリンは感動しております。


「畏まりました。勘当でございますね。家門から籍を抜くと言うことでございますね」

 父に向かってまくし立てる振りで見物人に聞かせる。ここは確証が欲しい。


「この場の皆様が承認なさいました。この場でわたくしの勘当、除籍が決定でございますね」


 侍従があせった顔をしている。状況判断出来るじゃないの!出世できるかもよ。


 わたくしは続けた。


「今後わたくしは、ローズライン侯爵家とは無縁。名を名乗ることは出来ない。

 もちろん、たった今から、屋敷に立ち入ることも固く禁止でございますね。ここにいる皆様が承認なさいました。

 陛下、王妃殿下、王太子殿下を含めた方々を証人として、ローズライン侯爵閣下がわたくし、キャサリンを除籍。事務手続きは必要ないですね。これだけの証人が存在します。今まさに、完了致しました。

 平民の《《わたし》》はここに長居は出来ません。すぐに退出致します」


 そういうとわたしは一目散に逃げ出した。



 急いで城門を出ると、古着屋に飛び込んだ。着ていたドレスを脱いで売ると、着やすい服を買った。ハイヒールも売ってブーツを買った。


 古着屋さんはわたしがわけありとわかったようだけど、なにも言わずに……そりゃそうよね。この格好で歩いて一人で来たんだもの。


 なにも言わずに、買い取ってくれた。いい人ね。その上、精一杯の金額を出してくれた。そして


「お嬢さん。このフードで髪を隠してその髪だと目立つ」と教えてくれた。


 それならと、お店を紹介して貰って髪の毛を売った。


 軽くなった頭で、冒険者ギルドに駆け込んだ。ギルドのことは小説で知っていたのよ。



 名前は単純に「ケイト」にして字を読めない振りで代筆して貰った。


 ケイト、十八歳、水魔法、ほんとは治癒も出来るし、身体強化も出来るの。急ぐ時それで歩く速度をあげていたのよ。自分に結界も張れるのよ。


 だってね王族の公務先って暑かったり、寒かったりけっこう大変なの。

 だけど、衣装を見せるから寒くても分厚いコートは着ちゃいけないし、暑くても刺繍やレースで飾った上着を羽織るの。

 だから熱さ、寒さから、身を守るために自然と身についたのよ。

 

 後、ちょっとだけ収納が出来るの。だってねお腹がすいても食べる時間がなかったりするから、お菓子を持っていて、口にパッと入れたりしてたの。練習して出来るようになったのよ。

 

 わたしは王族じゃないけど、婚約者として面倒な公務は代理で行っていたの。王太子だけじゃなく、王妃の分もよ。バカみたいよね。


 それでね、あの日身に着けていた宝石は売らずに収納にしまってるの。そのうち高く売るつもりよ。


 受け付けはわたしが言う通りに書いて、それから読み上げてくれた。


「ケイト。十八歳。出身は南の村。東の村と南の村があって南にある村ってことでいいな。水魔法。水を出せる。まぁ魔法だね。剣は?いや、使えなくてもいいよ。えっと泊まる所は?しばらくギルドの宿に泊まっていい。初心者教室もあるし、田舎から来た人にはお金のことから教えるから受けるといい」


 と言うことで王都のギルドの宿舎に泊まって冒険者として一歩を踏み出したの。


 でもよかったわ。小説だと追っ手に追われて逃げないといけないの。野宿したり盗賊に襲われたりするのよ!

 小説だと盛り上がるし、そこで出会いもあるけど、わたしは根っからの都会派なのよ。野宿とかしたくないの。王都にいたいの。だから良かった。

 田舎を知らないってことじゃないのよ。公務で行ってるしね。たまに行くなら田舎もいいけど住むなら都会なの。


 ギルドの宿舎は狭くてベッドも固い。だけど不満はないわ。


 気楽なかっこうで、お行儀悪く姿勢が悪くても平気なの。


 お城の下女を観察していたから、お掃除とかも出来るはずだけどあんまり綺麗に出来ない。ちょっと残念。





 初心者冒険者教室は全部で七名。


 幼馴染の四人。パトラ、ルナ、ビル、アンディ。


 王都出身が自慢の二人。ボブ、ルーク。


 最初の授業は字の書き方を教わったの。


 その次は数字。それからお金のこと。依頼をこなして貰えるお金。生活するにはどれくらい稼がないといけないかとか。


 薬草採取だけだと無理かな。商店の雑用とかをこなせばいいかな。


 初心者冒険者教室の次の授業は薬草についてだったの。冒険者らしい授業になったわ。見本を見せてくれて取り方。取ってからの保存法。どこにあるかとか。魔獣も出るとかで、戦い方を明日教えて貰うのよ。




 薬草のことを教えてくれたのは、薬師ギルドから来ていた。薬師さんで


「状態のいい薬草の確保は薬師の願いです。みなさん、丁寧な採取をお願いします」と言って講義を終えたのよ。


 ポーションの作り方を覚えたら薬師になれるのかしら?


 薬師になるのもよさそうね。それで夕食は教室の仲間と一緒に出かけたの。ボブおすすめのお店。


 なにやら、煮込んだのと黒いパンを食べたのよ。みんながわいわい話していて賑やかなの。味は‥‥‥初めての味。うーーん、美味しかった? まぁ全部食べっちゃたしね。


 剣術も教えてくれた。木剣を持って、持ち方から教えて貰って講師の真似をして木剣を振るうの。


 それから、藁を束ねたものを切りつけていく。切るというより叩く感じかな?


 これはなかなかいい。ボコっとかドスっとか、この音がいい。


 いざとなったら魔獣をこうやって退治して、我が身を守るのね。


 人間相手もこれでいいのかしら?ボコッとやって倒れた相手に蹴りなんてかっこいいわね。


 なんて思ったけど、剣術をやった翌日は筋肉痛で、起き上がるのも大変だった。


 動くほうが早く治るらしいけど……うーーーーと声を出すしか出来ない。


 今日が休みで良かった。それでも空腹に負けてお昼過ぎに起き上がると、広場に出かけた。


 屋台で肉を買って、パン屋でパンを買って食べていると


「ケイト、体調が悪そうだね」と声をかけられた。


 マイクさんだ。マイクさんは講義を終えて下に降りてきたわたしたち初心者全員に、屋台で奢ってくれたとってもいい人なのだ。けっこう強い冒険者らしい。強くていい人って最高よね。


「体調が悪いかどうかは……筋肉痛」と言うと


「筋肉痛か。なるほどな。動けば回復する。少し動くか?」と言うとわたしの手をとって歩き始めた。

「あたったったた」と言いながらついて行くと


「悪い、悪い。ゆっくり動くから」と歩調は遅くなったが、わたしは


「あた‥‥‥いた‥‥‥」とか「てってって。待って。待って」とか言いながら歩いた。歩いているとだんだん、楽になって来た。


 しっかりとマイクさんの手を掴んでいたわたしは、力を緩めて、自力で足を代わる代わる前に出せるようになった。


「あぁ動いたら楽になりました。歩き始めはいつか殺すと思ってましたけど」と言うと

「あぁひどいなぁ。可愛いケイトの為に行動したのに」とマイクさんが言うので


「ふっふっふ可愛いケイトは、恩知らずなのです。だから、なにか食べますか?ご馳走しますよ」と言った。


「いや、まだ初心者冒険者教室に通っている子に奢って貰うのはダメだね。ご馳走するよ。可愛いケイト」とマイクさんが言った。


「いいですよ。やめて下さい。なんだか、催促したみたいで恥ずかしいから」と言うと


「初心者を卒業したらご馳走になるよ」と言うと


「さぁ、なにが欲しいかな?遠慮はいけないよ」と笑った。


「そこのクレープ。カスタードとリンゴの甘煮が入っているのがいい」と遠慮なく言った。

 買ってもらったクレープを食べながら、ふと見ると兄のパーシーの後ろ姿があった。勘当されたから元兄だね。いや、他人だね。


 逃げる理由もない。わたしはパーシーを睨みつけながらクレープを口にいれた。


 パーシーはにやりと笑うと一行に向かってなにやら言った。


 すると彼ら全員が、わたしを見て馬鹿にしたように笑った。


 なんとずらりと勢ぞろいしていたんだよ。こうやって遊んでいるんだね。わたしが書類をさばいている間に、パーシーもアビゲイルも王太子も学友も街の見学、庶民の暮らしを見学とか言って遊んでいたんだよね。


 パーシーとわたしは実の兄妹で父の前妻の子供だ。


 母はわたしが五歳の時死んで、一年の喪が開けるとすぐ後妻が来た。五歳の連れ子のアビゲイルはわたしより三ヶ月早く生まれているが、妹になりたいと希望してわたしの妹になった。

 そしてわたしのものを次々に取っていった。盗ったこともあるが泣いて解決していった。

「こんなに泣くほど欲しいならあげなさい。おまえが気を利かして渡さないから泥棒をさせてしまった。おまえが悪い」このとんでも理論でアビゲイルは擁護された。


 この間抜けな兄もこの理屈に賛成してわたしを叱った。



 それから王太子の婚約者になって執務、公務を代わってやったあげく婚約破棄。


 これは正直嬉しかった。解放されると嬉しかった。


 だから、せいせいして楽しく暮らしているのに、変なものを見つけてしまった。


 でもね、自惚れてるんじゃないけど、わたしがいなくなった影響がだんだん出てくるから。遊んでいられるのも今のうちよ。


 わたしも、負けずにあの人たちを見て、鼻で笑ってやった。マイクさんが不思議そうにしているが、なにも言わなかった。


 そして、今日は初心者冒険者教室の最終日。薬草採取の実習だ。


 そういえば初心者仲間わたしも入れて七人。うち四人は王都郊外の同じ村の幼馴染だし、残りの二人は王都出身だ。全員が、単純に南の村なんて名前の田舎から出てきたわたしを馬鹿にしている。


 幼馴染四人が二人ずつ並んで歩き、わたしが一人で歩き、王都出身の二人が続いている。


 郊外に出るからと冒険者のマイクさんとトムさん。プリシーさんがつきそってくれている。


 やがて、森の入口に到着した。


 ここから、みなで黙って歩いた。魔獣がいる所では静かにするのだ。


「あれ」とわたしが指すと


「そうだね」とみなで近寄ったが、あまり近寄ると場が荒れるので少し離れた所で、ケイト説明してと言われて

「はい、あれは冷まし草(さましぐさ)病気で熱が出た時、怪我で熱が出た時に使います。根元を刃物で切って採取して、濡らした布で包んで持って帰ります」と言うと

「よく出来ました。それではケート採取して」と言われてナイフで根元を切って濡らした布で包んで肩から下げたカバンに入れた。


「では行きましょう」の声で移動した。


「あれ」とわたしは指さした。

 次は紛れ草(まぎれそう)だ。化膿止め。怪我したら傷口にすぐにかけておくと安心だ。


 その後、冷まし草、紛れ草をいくつか見つけたが黙っていた。

 だって、パトラが嫌そうな顔をするし、ルナが睨んで来るし、学院で経験してるから面倒は避けるよ。


 ただ、貴重な命草(めいそう)を見つけた時は申告した。というのも採取が難しいので、講師にお手本を見せて貰いたかったのよね。おかげでしっかり覚えた。


 次は自分で出来るだろう。


 予定では、お昼のお弁当をのんびり食べて帰るはずだったけど、雨が降りそうだというトムさんの意見で、サンドイッチを歩きながら食べた。


 ギルドに到着してすぐ、雨が降り出した。トムさんに感謝だ。


 最後に講義室でギルドマスターから


「がんばって下さい」って挨拶されて初心者冒険者教室は終わった。


 わたしは、採取した薬草を、ギルドに買い取って貰うと六人を誘ってギルドの酒場コーナーでエールを飲んだ。


「薬草代でご馳走するから、一杯だけしか無理だけど」と今日の稼ぎはパッと使った。


 エールを飲みおわって、外で打ち上げに行くと言う六人と別れてわたしは部屋に戻った。


 明日から「冒険者本格始動!」鏡に向かってこう言うとわたしはベッドに入った。

いつも読んでいただきありがとうございます!


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