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模型(1/10)スケールのアポカリプス  作者: 暁の裏


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第8話 「イカサマを見抜け!運命の勝負」

 深夜。


 悠斗は冷たい石の床に座り込み、鉄格子の向こうを見つめていた。


 廊下には誰もいない。松明の炎だけが、静かに揺れている。


 あれから、丸一日が経った。


 バルトロメウスから聞いた話は、悠斗の予想を遥かに超えるものだった。


 黒月の儀式。大陸各地に配置された二十四の祭壇。そして、儀式が発動すれば、すべての生命が滅びるという恐るべき事実。


「時間がない……」


 悠斗は呟いた。


 バルトロメウスによれば、儀式の発動まで、そんなに時間がない。


 早く、ここから脱出して、ルーナと合流しなければ。


 そして、黒月教の計画を阻止しなければ。


「でも、どうやって……」


 悠斗は独房の鉄格子を見つめた。


 この鉄格子は、普通の鉄ではない。魔法で強化されており、悠斗の力でも簡単には壊せそうにない。


 いや、全力を出せば壊せるだろう。しかし、それをすれば監獄中の兵士が集まってくる。


「一人で全員を相手にするのは、さすがに厳しいな……」


 悠斗は考え込んだ。


 その時――


「おい、兄ちゃん」


 隣の独房から、声がした。


 悠斗は顔を上げた。


 鉄格子の向こう、隣の独房にガレスが座っていた。


 彼は、悠斗が捕まって以来、ずっと気にかけてくれている。


「まだ起きてたのか」


「ああ。お前もだろ」


 ガレスは苦笑した。


「この監獄じゃ、ゆっくり眠れる奴なんていないさ」


「そうだな……」


 悠斗も苦笑した。


 確かに、この監獄の環境は最悪だ。寒い、暗い、湿っている。そして、何より食事がひどい。


 一日二回の食事は、腐りかけのパンと濁った水だけ。


 悠斗の身体能力を維持するには、到底足りない。


「なあ、ガレス」


 悠斗は真剣な表情で尋ねた。


「お前、ここから脱獄する気はないか」


 ガレスは驚いた表情をした。


「脱獄……お前、本気か?」


「ああ」


 悠斗は頷いた。


「俺には、やらなきゃいけないことがある。ここでじっとしてる時間はない」


「でも、脱獄なんて……」


 ガレスは戸惑った。


「この監獄から脱獄した奴なんて、これまで一人もいないんだぞ」


「じゃあ、俺が最初になる」


 悠斗は力強く言った。


「それに、お前だって冤罪なんだろ? ここにいる理由なんてない」


「それは……そうだけど……」


 ガレスは迷っていた。


「もし、脱獄に失敗したら、もっとひどい目に遭わされる。下手したら、死刑だ」


「大丈夫。俺には、力がある」


 悠斗は自分の拳を見せた。


「お前も知ってるだろ? 俺が『双月の英雄』だって」


「ああ……」


「なら、信じてくれ。俺が、お前を外に連れ出してやる」


 悠斗の目は、真剣だった。


 ガレスは、しばらく沈黙していた。


 そして――


「……わかった」


 ガレスは決意した表情で頷いた。


「お前を信じる。一緒に、ここから出よう」


「ありがとう」


 悠斗は微笑んだ。


「それじゃ、作戦を立てよう」


「作戦って、どうするんだ?」


「まず、向かいの独房のバルトロメウスも連れて行く」


 悠斗は、向かいの独房を指差した。


 そこには、元黒月教の第九使徒、バルトロメウスが座っている。


 彼は、黒月の儀式について詳しく知っている。外に出れば、必ず力になってくれるはずだ。


「バルトロメウス……あの、元黒月教の奴か」


「ああ。彼は、黒月教から離反した。今は、俺たちの味方だ」


 悠斗は確信を持って言った。


「彼がいれば、黒月教の計画を阻止できる」


「わかった。それで、どうやって脱獄するんだ?」


「まず、鉄格子を壊す」


 悠斗は、自分の独房の鉄格子に手を当てた。


「これ、魔法で強化されてるけど……俺の力なら、壊せると思う」


「本当に壊せるのか?」


「試してみる」


 悠斗は深呼吸した。


 そして――


 全力で、鉄格子を引っ張った。


 ギギギギギ……


 鉄格子が、きしむ音を立てた。


「うおおおお!」


 悠斗は歯を食いしばり、さらに力を込めた。


 メキメキメキ……


 鉄格子が、少しずつ曲がり始めた。


「すげえ……」


 ガレスが驚いた表情で見ている。


 そして――


 バキィン!


 鉄格子が、根元から折れた。


「やった!」


 悠斗は鉄格子を引き抜き、床に置いた。


「よし、次はお前の番だ」


 悠斗は、ガレスの独房に向かった。


 同じように、鉄格子を引っ張る。


 ギギギ……メキメキ……バキィン!


 ガレスの独房も開いた。


「信じられない……」


 ガレスは呆然としていた。


「本当に、壊しちまったのか……」


「さあ、バルトロメウスも助け出すぞ」


 悠斗は、向かいの独房に向かった。


 バルトロメウスは、静かに座っていた。


「……やはり、お前は只者ではないな」


 バルトロメウスが呟いた。


「鉄格子を素手で壊すとは」


「こんなの、序の口だ」


 悠斗は、バルトロメウスの独房の鉄格子も壊した。


 バキィン!


「さあ、行こう」


 悠斗は二人を促した。


 三人は、廊下を走り出した。


 しかし――


「囚人が脱獄している!」


 衛兵の叫び声が響いた。


 廊下の向こうから、複数の衛兵が走ってきた。


「くそ、バレた!」


 悠斗は舌打ちした。


「お前たち、俺の後ろに隠れてろ!」


 悠斗は、衛兵たちの前に立ちはだかった。


「止まれ! 大人しく独房に戻れ!」


 衛兵の一人が槍を構えた。


「悪いけど、それはできない」


 悠斗は構えた。


「俺には、やらなきゃいけないことがあるんだ」


「なら、力ずくで止める!」


 衛兵たちが一斉に襲いかかってきた。


 しかし――


 悠斗の目には、衛兵たちの動きがスローモーションに見えた。


「遅い!」


 悠斗は最初の衛兵の攻撃を避け、腹部に軽く拳を叩き込んだ。


 ドンッ!


 衛兵は吹き飛び、壁に激突した。


 二人目、三人目の衛兵も、次々と倒していく。


「化け物か、こいつ……!」


 残った衛兵たちが、恐怖の表情で後退した。


「逃げろ! こいつには勝てない!」


 衛兵たちは慌てて逃げ出した。


「よし、今のうちに」


 悠斗は、ガレスとバルトロメウスを促した。


 三人は、階段を駆け上がっていった。


 地下三階から、地下二階へ。


 そして、地下一階へ。


 やがて、地上階に到着した。


「あと少しで、外だ」


 悠斗は言った。


 しかし――


 正面の廊下が、突然封鎖された。


 鉄の扉が降りてきて、出口を塞いだ。


「くっ……」


 悠斗は舌打ちした。


 そして、扉の向こうから声が聞こえてきた。


「よく来たな、英雄様」


 オズワルドの声だ。


「お前、待ち構えていたのか!」


「当たり前だ」


 オズワルドは冷笑した。


「お前が脱獄を試みることくらい、予想していた」


 鉄の扉が、ゆっくりと開いた。


 その向こうには、オズワルドが立っていた。


 彼の周囲には、数十人の衛兵が整列している。


「さあ、大人しく戻るんだな」


 オズワルドが命令した。


「でなければ、力ずくで連れ戻す」


「やってみろよ」


 悠斗は構えた。


「俺は、ここから出る。絶対に」


「ふふふ……強気だな」


 オズワルドは不気味に笑った。


「では、こうしよう」


 オズワルドは、懐から何かを取り出した。


 それは――


 トランプのカードだった。


「ギャンブルだ」


 オズワルドが宣言した。


「お前と俺で、勝負をする。お前が勝てば、自由に出て行っていい」


「ギャンブル……?」


 悠斗は戸惑った。


「そうだ。俺は、ギャンブルが大好きでね」


 オズワルドは、カードをシャッフルし始めた。


「お前も、賭け事は嫌いじゃないだろ?」


「俺は、ギャンブルなんて……」


「では、力ずくで戦うか?」


 オズワルドは、周囲の衛兵を指差した。


「この数の兵士を相手にするのは、さすがのお前でも大変だろう」


「……」


 悠斗は沈黙した。


 確かに、数十人の兵士を相手にするのは厳しい。


 それに、ガレスとバルトロメウスも守らなければならない。


「わかった。ギャンブルに乗る」


 悠斗は決意した。


「でも、条件がある」


「何だ?」


「俺が勝ったら、ガレスとバルトロメウスも一緒に出る」


「構わん」


 オズワルドは即答した。


「では、ゲームを始めよう」


 オズワルドは、テーブルと椅子を用意させた。


 悠斗とオズワルドは、テーブルを挟んで向かい合った。


「ルールは簡単だ」


 オズワルドがカードを見せた。


「このトランプを使って、『ハイ&ロー』をする」


「ハイ&ロー……?」


「ああ。まず、俺がカードを一枚引く。そして、お前が次のカードが『それより高いか、低いか』を予想する」


 オズワルドは説明した。


「当たれば、お前の勝ち。外れれば、俺の勝ちだ」


「それだけ?」


「それだけだ。シンプルだろ?」


 オズワルドは不気味に笑った。


「では、始めよう」


 オズワルドは、カードをシャッフルした。


 そして、一枚引いた。


「これが、最初のカードだ」


 オズワルドがカードを見せた。


 それは――


「5のダイヤ」


「5か……」


 悠斗は考えた。


 次のカードが、5より高いか、低いか。


 確率は……ほぼ五分五分だ。


「どうする? ハイか、ローか」


 オズワルドが尋ねた。


 悠斗は、深呼吸した。


「……ハイ」


「ハイだな。では、次のカードを引こう」


 オズワルドは、山札から次のカードを引いた。


 そして――


「10のスペード」


「10……!」


 悠斗は拳を握った。


「やった、当たった!」


「ふむ……幸運だな」


 オズワルドは、表情を変えずに言った。


「では、次だ」


 オズワルドは、カードをシャッフルした。


 そして、再び一枚引いた。


「9のハート」


「9……」


 悠斗は考えた。


 9は、かなり高い。次のカードが、これより高い確率は低い。


「ロー」


「ローだな。では」


 オズワルドは、次のカードを引いた。


「7のクラブ」


「7……当たった!」


「ふふふ……」


 オズワルドは、静かに笑った。


「お前、運がいいな」


「運だけじゃない」


 悠斗は真剣な表情で言った。


「確率を考えてるんだ」


「なるほど。では、次はどうかな」


 オズワルドは、再びカードをシャッフルした。


 しかし――


 悠斗は、違和感を覚えた。


 オズワルドの手の動きが、微妙に不自然だ。


 まるで、何かを隠しているような……


「まさか……」


 悠斗は、オズワルドの手をじっと見つめた。


 そして、気づいた。


 オズワルドは、カードをシャッフルするふりをして、特定のカードを山札の特定の位置に仕込んでいる。


「イカサマか……」


 悠斗は小さく呟いた。


「何か言ったか?」


「いや、何でも」


 悠斗は、平静を装った。


「次のカードを引いてくれ」


「わかった」


 オズワルドは、カードを一枚引いた。


「2のスペード」


「2……」


 悠斗は考えた。


 2は、最も低いカード。普通に考えれば、次のカードは確実に高い。


 しかし――


 オズワルドがイカサマをしているなら、次のカードも低い可能性がある。


「どうする?」


 オズワルドが催促した。


 悠斗は、オズワルドの目を見た。


 その目には、狡猾な光が宿っている。


「……ロー」


 悠斗は、あえて逆を選んだ。


「ローだと?」


 オズワルドは驚いた表情をした。


「2より低いカードなんて、Aしかないんだぞ」


「わかってる。それでも、ローだ」


「ふふふ……愚かな選択だな」


 オズワルドは、次のカードを引いた。


 そして――


「A のクラブ」


「Aだと!?」


 オズワルドは、信じられないという表情をした。


「まさか……本当にAが出るとは……」


「やっぱりな」


 悠斗は冷静に言った。


「お前、イカサマしてただろ」


「何を言っている」


 オズワルドは否定した。


「証拠でもあるのか」


「ある」


 悠斗は立ち上がった。


「お前の手の動きを、ずっと見てた。カードをシャッフルするとき、特定のカードを仕込んでる」


「馬鹿な……」


「それに、さっきの2のカードの後、お前は次に低いカードを引かせるつもりだった。俺がハイを選ぶと予想して」


 悠斗は、オズワルドを睨みつけた。


「でも、俺はローを選んだ。だから、お前のイカサマは失敗した」


「くっ……」


 オズワルドは、顔を歪めた。


「証明してみせろ! お前の言うことが本当だと!」


「いいだろう」


 悠斗は、テーブルに手を伸ばした。


 そして――


 全力で、テーブルを叩いた。


 ドガァン!


 テーブルが粉々に砕けた。


 カードが、宙に舞った。


 そして――


 オズワルドの袖から、何枚かのカードが落ちてきた。


「これが、証拠だ」


 悠斗は、落ちてきたカードを拾った。


 それは、すべて低いカード。2、3、4、5。


「袖の中に、低いカードを隠してたんだな」


「ぐ……」


 オズワルドは、言葉を失った。


 周囲の衛兵たちも、驚いた表情でオズワルドを見ている。


「監獄長……イカサマを……」


「信じられない……」


「黙れ!」


 オズワルドは激怒した。


「こいつは、でっち上げだ! そうに決まってる!」


「でっち上げじゃない」


 悠斗は冷静に言った。


「お前は、イカサマをした。だから、このギャンブルは無効だ」


「無効だと!?」


「ああ。それとも、もう一度やるか? 今度は、俺がカードをシャッフルする」


 悠斗の目は、真剣だった。


 オズワルドは、しばらく沈黙していた。


 そして――


「……わかった」


 オズワルドは、諦めたように言った。


「お前の勝ちだ」


「本当か?」


「ああ。約束は守る」


 オズワルドは、衛兵たちに指示を出した。


「道を開けろ。英雄様のお通りだ」


 衛兵たちは、渋々ながら道を開けた。


「行け。二度と、ここに戻ってくるな」


「ああ、そのつもりだ」


 悠斗は、ガレスとバルトロメウスを連れて、正門へと向かった。


 廊下を進み、階段を登り、ついに正門に到着した。


「開けろ」


 悠斗が命令すると、門番が重い扉を開けた。


 外は、真っ白な雪景色だった。


「やった……外だ……」


 ガレスが感動した表情で呟いた。


「本当に……出られたんだ……」


「ああ」


 悠斗は微笑んだ。


「約束通り、お前を外に連れ出したぞ」


「ありがとう、悠斗……」


 ガレスの目に、涙が浮かんだ。


「お前がいなかったら、俺は一生あの監獄にいたかもしれない」


「礼なんていいって」


 悠斗は照れくさそうに頭を掻いた。


「それより、早くルーナと合流しないと」


 三人は、監獄を後にした。


 雪の中を歩きながら、悠斗は周囲を見回した。


「ルーナ……どこにいるんだ……」


 その時――


「悠斗!」


 前方から、声が聞こえた。


 悠斗は顔を上げた。


 雪の中を、一人の少女が走ってきた。


 銀色の髪。銀色の瞳。白と銀のドレス。


「ルーナ!」


 悠斗は駆け出した。


 二人は、雪の中で抱き合った。


「無事だったのね……」


 ルーナの目に、涙が浮かんでいた。


「心配したわ……」


「ごめん。でも、大丈夫だった」


 悠斗は、ルーナを優しく抱きしめた。


「お前は……ずっと、ここで待っててくれたのか」


「ええ。あなたが必ず戻ってくると信じてたから」


 ルーナは微笑んだ。


「そして、あなたは戻ってきてくれた」


「ああ」


 悠斗は、ルーナの額に軽くキスをした。


「ありがとう、待っててくれて」


「あら、あら……」


 ルーナは顔を赤らめた。


「人前で、そんなことして……」


「あ、ごめん」


 悠斗も顔を赤らめた。


 ガレスとバルトロメウスが、少し離れたところで二人を見ていた。


「いいコンビだな」


 ガレスが微笑んだ。


「ああ」


 バルトロメウスも頷いた。


「彼らなら、きっと世界を救えるだろう」


 ルーナは、ガレスとバルトロメウスに気づいた。


「あら、この方たちは……」


「ああ、紹介する」


 悠斗は二人を指差した。


「こっちは、ガレス。監獄で知り合った。冤罪で捕まってたんだ」


「初めまして」


 ガレスが丁寧に頭を下げた。


「噂は聞いてます。月の女神様」


「よろしく、ガレス」


 ルーナは微笑んだ。


「そして、こっちは……」


 悠斗は、バルトロメウスを指差した。


「元黒月教の第九使徒、バルトロメウスだ」


「元黒月教……」


 ルーナの表情が、一瞬硬くなった。


「大丈夫」


 悠斗は、ルーナの肩に手を置いた。


「彼は、黒月教から離反した。今は、俺たちの味方だ」


「そうですか……」


 ルーナは、バルトロメウスを見つめた。


 バルトロメウスは、深々と頭を下げた。


「月の女神様。お初にお目にかかります」


「……よろしく」


 ルーナは、少し警戒しながらも、挨拶を返した。


「あなたから、黒月教の計画について聞かせていただけますか」


「もちろんです」


 バルトロメウスは頷いた。


「すべて、お話しします」


「ありがとう」


 ルーナは微笑んだ。


「では、場所を変えましょう。ここは寒すぎるわ」


 四人は、監獄から離れた場所へと移動した。


 雪原の中に、小さな洞窟があった。


「ここなら、風を凌げるわ」


 ルーナが洞窟の中に入った。


 そして、手のひらに光の球を浮かべた。


 温かい光が、洞窟の中を照らした。


「すごい……」


 ガレスが感嘆した。


「これが、月の女神の力……」


「まだまだ、力は戻ってないけどね」


 ルーナは苦笑した。


 四人は、洞窟の中に座った。


「それでは、バルトロメウス」


 ルーナが口を開いた。


「黒月教の計画について、詳しく教えてください」


「わかりました」


 バルトロメウスは、ゆっくりと語り始めた。


「黒月教の最終目標は、『黒月の儀式』を発動させることです」


「黒月の儀式……」


「ええ。この儀式は、世界を破壊するための儀式です」


 バルトロメウスは続けた。


「大陸各地に、二十四の祭壇が配置されています。これらすべてを同時に起動させることで、儀式は完成します」


「二十四の祭壇……」


 ルーナは眉をひそめた。


「それは、かなりの規模ね」


「ええ。そして、儀式が発動すれば……」


 バルトロメウスは一呼吸置いた。


「すべての生命が、滅びます」


「すべての……」


 ルーナの顔が、蒼白になった。


「そんな……」


「本当です」


 バルトロメウスは真剣な表情で言った。


「教祖ゼノンは、狂っています。彼は、この世界を『間違った世界』だと信じている。だから、すべてを破壊して、新しい世界を作ろうとしているのです」


「そんなこと、許されない……」


 ルーナは拳を握りしめた。


「絶対に、阻止しないと」


「でも、どうやって?」


 ガレスが尋ねた。


「二十四の祭壇を、全部破壊するのか?」


「それは、難しいでしょう」


 バルトロメウスが答えた。


「祭壇は、大陸全土に散らばっています。すべてを破壊するには、時間がかかりすぎる」


「じゃあ、どうすれば……」


「一つ、方法があります」


 バルトロメウスは、真剣な表情で言った。


「黒月教の本拠地を襲撃し、教祖ゼノンを倒すのです」


「本拠地……」


「ええ。大陸の最北端、凍土地帯の奥深くに、『黒月の聖堂』があります」


 バルトロメウスは続けた。


「そこが、黒月教の本拠地です。ゼノンを倒せば、儀式の指揮系統が崩壊します」


「なるほど……」


 悠斗は頷いた。


「トップを倒せば、組織全体が崩れる、ってことか」


「その通りです」


「でも、危険じゃないか?」


 ガレスが心配そうに言った。


「本拠地には、黒月教の精鋭が集まってるんだろ?」


「ええ。十二使徒と呼ばれる幹部たちがいます」


 バルトロメウスは答えた。


「彼らは、非常に強力です。特に、影の司祭、牙の狩人フェンリル、毒の巫女セルペンタは、私よりもはるかに強い」


「そんな奴らと戦うのか……」


 ガレスは不安そうな表情をした。


「でも、やるしかない」


 悠斗は決意を込めて言った。


「このまま放っておけば、世界が滅ぶんだろ? だったら、戦うしかない」


「悠斗……」


 ルーナは、悠斗を見つめた。


「ありがとう。あなたがいてくれて、本当に心強いわ」


「当たり前だろ」


 悠斗は微笑んだ。


「お前と一緒なら、どんな敵だって倒せる」


「ええ」


 ルーナも微笑んだ。


「私たちなら、きっとできるわ」


「それで、俺たちはどうすればいい?」


 ガレスが尋ねた。


「俺も、手伝いたい」


「ガレス……」


「だって、お前らに命を救われたんだ。恩返しさせてくれ」


 ガレスは真剣な表情で言った。


「俺、商人だったから、戦闘はできないけど……情報収集とか、物資の調達とか、そういうことなら役に立てる」


「ありがとう、ガレス」


 悠斗は感謝した。


「じゃあ、お前には、エルディア王国に戻って、国王に報告してほしい」


「報告?」


「ああ。黒月教の計画について、すべて伝えてくれ。そして、協力を要請してほしい」


 悠斗は続けた。


「俺たちだけじゃ、黒月教に勝てないかもしれない。王国と帝国の軍隊が必要だ」


「わかった。任せてくれ」


 ガレスは頷いた。


「必ず、国王に伝える」


「それと、バルトロメウス」


 悠斗は、バルトロメウスを見た。


「お前は、どうする?」


「私は……」


 バルトロメウスは少し考えてから、答えた。


「あなた方と一緒に、黒月の聖堂に向かいます」


「本当か?」


「ええ。私は、黒月教の元幹部です。聖堂の内部構造を知っています。それに……」


 バルトロメウスは拳を握りしめた。


「ゼノンを倒したい。彼が、この世界を破壊するのを、止めたい」


「ありがとう」


 悠斗は微笑んだ。


「一緒に、戦おう」


「ええ」


 バルトロメウスも微笑んだ。


 四人は、それぞれの役割を確認した。


 ガレスは、エルディア王国へ。


 悠斗、ルーナ、バルトロメウスは、黒月の聖堂へ。


「それじゃ、ここで別れよう」


 悠斗は、ガレスと握手した。


「気をつけてな」


「お前もな」


 ガレスは微笑んだ。


「また、会おう」


「ああ」


 ガレスは、南へと歩き出した。


 悠斗、ルーナ、バルトロメウスは、北へ。


 雪原を歩きながら、悠斗はルーナの手を握った。


「いよいよ、だな」


「ええ」


 ルーナは頷いた。


「でも、怖くないわ。あなたが一緒だから」


「俺も同じだ」


 悠斗は微笑んだ。


「お前がいれば、どんな敵だって倒せる」


 二人は、手を繋いだまま、北へと進んでいった。


 その背中を、バルトロメウスが静かに見つめていた。


「彼らなら……きっと、世界を救える」


 バルトロメウスは呟いた。


「私も、全力で支えよう」


 三人は、凍土地帯の奥深くへと進んでいった。


 遠くに、黒い山脈が見えてきた。


 その向こうに、黒月の聖堂がある。


「行くぞ」


 悠斗は決意を込めて言った。


「黒月教を、倒す」


「ええ」


 ルーナも頷いた。


「この世界を、救うために」


 三人は、雪の中を進み続けた。


 そして――


 悠斗とルーナの戦いが、今、始まろうとしていた――


お読みいただき、ありがとうございます。ルーナです。

今回は、悠斗が監獄に潜入して……正直、とても心配でした。外で待っている間、何度も監獄の門を見つめて、彼が無事に戻ってくることを祈っていました。

でも、彼は約束通り戻ってきてくれました。それも、二人の仲間を連れて。

悠斗は本当に優しい人です。自分のことよりも、他人のことを優先してしまう。そんなところが、私は大好きです。(……あら、また恥ずかしいことを書いてしまいましたね)

ガレスさんは誠実な商人で、バルトロメウスさんは過去を悔いている真面目な方です。彼らとの出会いが、これからの戦いにきっと役立つはずです。

次はいよいよ、黒月教の本拠地へ向かいます。

正直、怖いです。でも……悠斗が隣にいてくれるから、私は戦えます。

皆様も、どうか私たちを見守っていてくださいね。

それでは、次回もお楽しみに。


――月の女神ルーナ


P.S. 悠斗が監獄で食べていたパンとお水……本当にひどかったそうです。帰ってきたら、美味しいものをたくさん食べさせてあげないと。彼、本当にすぐお腹が空くんですから……(苦笑)

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