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模型(1/10)スケールのアポカリプス  作者: 暁の裏


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第3話 「王都エルディア」

 

 馬車が揺れるたびに、悠斗は窓の外の景色を眺めていた。


 草原、森、小さな村々。どれも18センチサイズの世界だが、悠斗にとってはもう普通の光景になりつつあった。この世界に来てから、まだ数日しか経っていないというのに。


「悠斗、大丈夫?」


 ルーナが心配そうに声をかけてきた。彼女は悠斗の隣に座っており、銀色の髪が窓から差し込む光を受けて輝いている。


「ああ、問題ない。ただ、色々考えてた」


「何を?」


「この世界のこと。俺がここにいる意味。それに……」


 悠斗は言葉を濁した。


「それに?」


 ルーナが身を乗り出してくる。その距離の近さに、悠斗は思わず顔を背けた。


「いや、何でもない」


「嘘。絶対何かあるわ」


 ルーナは悠斗の顔を覗き込んできた。


 二人の顔が、また近づく。


 悠斗は心臓が跳ね上がるのを感じた。ルーナの銀色の瞳が、自分を見つめている。その瞳には、優しさと、そして少しの不安が混じっていた。


「悠斗……」


「ル、ルーナ……」


 その瞬間――


 ガタン!


 馬車が大きく揺れた。


「きゃっ!」


 ルーナのバランスが崩れ、悠斗の胸に倒れ込んできた。


「う、わっ!」


 悠斗は反射的にルーナを抱きとめた。


 柔らかい感触。銀色の髪の甘い香り。温かい体温。


 悠斗の顔が一気に赤くなった。


「ご、ごめんなさい!」


 ルーナも真っ赤な顔で体を起こそうとしたが、馬車がさらに揺れて、また悠斗に倒れ込んできた。


「だ、大丈夫か!?」


「え、ええ……でも、その……」


 ルーナは悠斗の胸に顔を埋めたまま、もじもじしている。


「あの、悠斗……離してもらえないかしら……」


「あ、ああ! すまん!」


 悠斗は慌ててルーナを離した。


 ルーナは席に戻り、顔を真っ赤にしたまま窓の外を見ている。


 気まずい沈黙が流れた。


 悠斗も顔が熱い。心臓がまだドキドキしている。


「あ、あの……」


 ルーナが小さな声で言った。


「何?」


「さっき、抱きとめてくれて……ありがとう」


「い、いや、当然だろ。お前が怪我したら困るし」


「そう……」


 ルーナは少し寂しそうに微笑んだ。


 悠斗は自分の言葉が適切でなかったことに気づいたが、今さら訂正するのも変な気がして、黙っていた。


 しばらくして、馬車の前方から宰相レイナルドの声が聞こえてきた。


「お二人とも、そろそろ王都が見えてきますよ」


 悠斗とルーナは窓から顔を出した。


 地平線の向こうに、巨大な城壁が見えてきた。


「あれが……」


「王都エルディア。この地域で最大の都市です」


 レイナルドが誇らしげに説明した。


 馬車が近づくにつれて、城壁の大きさが明確になっていく。高さは約5メートル。元のサイズで言えば、50メートルの城壁だ。


「すごい……」


 悠斗は感嘆の声を上げた。


 城門には、衛兵が数人立っている。彼らは馬車を見ると、敬礼して道を開けた。


「宰相様のお帰りです!」


 衛兵の声が響く。


 馬車は城門をくぐり、王都の中へと入っていった。




 王都の街並みは、村とは比べ物にならないほど発展していた。


 石畳の道路。整然と並ぶ建物。市場には様々な商品が並び、人々が行き交っている。


「こんなに人がいるのか……」


 悠斗は驚いた。


 村では数十人程度しか見なかったが、ここには数百人、いや、数千人の人々がいるように見えた。もちろん、スモールサイズだが。


「王都には約一万人が住んでいます」


 レイナルドが説明した。


「一万人……」


 悠斗は改めて、この世界の規模を実感した。


 馬車は王都の中心部へと向かっていく。やがて、巨大な城が見えてきた。


「あれが王城です。国王陛下がお住まいになっています」


 城は白い石で作られており、美しい尖塔がいくつも聳えていた。高さは約5メートル。元のサイズなら50メートルの城だ。


「すごい……」


 ルーナも目を輝かせている。


 馬車は王城の正門前で停まった。


「さあ、お降りください。国王陛下がお待ちです」


 悠斗とルーナは馬車を降りた。


 王城の正門は重厚な造りで、衛兵が両脇に立っている。


「宰相レイナルド様、お帰りなさいませ」


 衛兵が敬礼した。


「うむ。こちらのお二人を、謁見の間へご案内せよ」


「はっ!」


 衛兵たちが門を開けた。


 悠斗とルーナは、レイナルドに案内されて王城の中へと入っていった。


 城の内部は豪華絢爛だった。


 大理石の床。壁には美しいタペストリーが飾られている。天井は高く、シャンデリアが輝いている。


「すごい……こんな場所、初めて見た」


 悠斗は思わず呟いた。


「王城は、この国の象徴です。百年以上の歴史がありますから」


 レイナルドが誇らしげに言った。


 廊下を歩いていくと、何人かの貴族らしき人々とすれ違った。彼らは悠斗とルーナを興味深そうに見ていたが、何も言わずに通り過ぎていった。


「あの人たち、俺たちを見てたな」


「噂が広まっているのでしょう。黒竜を倒した戦士、と」


「そんな大げさな……」


 悠斗は苦笑した。


 やがて、巨大な扉の前に到着した。


「ここが謁見の間です。国王陛下がお待ちです」


 レイナルドが扉をノックした。


「宰相レイナルド、神崎悠斗殿とルーナ殿をお連れしました」


 扉の向こうから、重厚な声が響いた。


「入れ」


 扉が開かれた。


 悠斗とルーナは、レイナルドに促されて中に入った。


 謁見の間は広大だった。


 長い赤い絨毯が部屋の中央を貫いており、その先には階段があった。階段の上には、豪華な玉座が設置されている。


 そして、玉座には――


 一人の男性が座っていた。


 年齢は五十代くらいだろうか。立派な髭を蓄え、威厳に満ちた表情をしている。頭には金の王冠が載っており、深紅のマントを羽織っている。


「国王陛下、神崎悠斗とルーナをお連れしました」


 レイナルドが膝をついた。


 悠斗とルーナも、慌てて膝をついた。


「顔を上げよ」


 国王の声が響いた。


 悠斗とルーナは顔を上げた。


 国王は、二人をじっと見つめていた。その視線は鋭く、まるで心の奥底まで見透かされているような感覚だった。


「そなたが、神崎悠斗か」


「は、はい」


「黒竜を単独で倒したと聞いた。まことか」


「いえ、単独ではありません。ルーナの援護があったからこそです」


 悠斗はルーナを見た。ルーナは少し驚いた表情をしている。


 国王は満足そうに頷いた。


「謙虚だな。良い。そして、そなたがルーナか」


「はい、陛下」


 ルーナが答えた。


「月の女神と名乗っているそうだが……まことか」


 国王の声に、わずかな疑念が含まれていた。


 ルーナは少し躊躇したが、はっきりと答えた。


「はい。私は月の女神です。ただし、今は力のほとんどを失っています」


「ふむ……」


 国王は顎に手を当てて考え込んだ。


「月の女神が百年ぶりに姿を現した、か。これは興味深い」


「陛下、彼らをどうなさいますか?」


 レイナルドが尋ねた。


「決まっている。我が国の客人として迎える、女神様に不自由などあってはならぬ」


 国王は宣言した。


「悠斗、ルーナ様。そなたたちに、王城での滞在を許可する。好きなだけ滞在するがよい」


「ありがとうございます、陛下」


 悠斗は深々と頭を下げた。


「ただし――」


 国王の表情が厳しくなった。


「そなたたちには、一つ頼みがある」


「頼み……ですか?」


「うむ。我が国は今、困難に直面している。黒月教の脅威、魔物の凶暴化、そして――」


 国王は言葉を区切った。


「隣国との緊張関係だ」


「隣国……?」


「そうだ。この大陸には、いくつかの国が存在する。我がエルディア王国、北のノルディア帝国、西のヴェスタリア公国、東のアストラル連邦。そして、南の砂

 漠地帯には遊牧民族の部族がいる」


 国王は立ち上がり、壁に掛けられた大きな地図を指差した。


「これが、この大陸の地図だ」


 悠斗とルーナは地図を見た。


 大陸は大きく四つの地域に分かれており、それぞれに国家が存在していた。


「百年前、ルーナ様が姿を消してから、各国は争いを続けている。食料、資源、領土。すべてが不足しているからだ」


「それは……黒い月の影響ですか?」


 ルーナが尋ねた。


「その通り。黒い月の力が強まってから、気候が不安定になり、農作物の収穫が減った。魔物が増え、交易路も危険になった。各国は生き残るために、互いを敵

 視するようになったのだ」


 国王は深くため息をついた。


「そして今、ノルディア帝国が我が国に侵攻しようとしている」


「侵攻……!」


「帝国は大陸最大の軍事国家だ。彼らは、我が国の豊かな農地を狙っている」


「それを、止めないといけないんですね」


 悠斗が言った。


「そうだ。そして、そなたの力が必要なのだ」


 国王は悠斗を真っ直ぐ見つめた。


「黒竜を倒した戦士。そなたがいれば、帝国の侵攻を防げるかもしれない」


「俺が……」


 悠斗は戸惑った。


 自分は確かに強い。しかし、それは物理法則の恩恵を受けているだけだ。本当の意味で「強い」のか、自分でもわからない。


「悠斗、無理に引き受ける必要はないわ」


 ルーナが悠斗の手を握った。


「でも……」


「国王陛下、少し考える時間をいただけますか?」


 ルーナが国王に頼んだ。


 国王は少し考えてから、頷いた。


「わかった。今日はゆっくり休むがよい。明日、改めて話をしよう」


「ありがとうございます」


「レイナルド、二人を客室へ案内せよ」


「はっ」


 レイナルドが悠斗とルーナを案内した。


 謁見の間を出て、廊下を歩きながら、悠斗は考え込んでいた。


 国のために戦う。


 それは、正しいことなのだろうか。


 自分は、この世界を救うためにここに来た。しかし、それは国同士の戦争に加担することを意味するのだろうか。


「悠斗、悩んでるわね」


 ルーナが声をかけてきた。


「ああ……正直、わからない」


「無理に決める必要はないわ。ゆっくり考えましょう」


「でも、時間がないんじゃないのか? 黒い月の力は強くなってるし――」


「それでも、焦って間違った選択をするよりはいいわ」


 ルーナは優しく微笑んだ。


「私も一緒に考えるから」


「ルーナ……」


 悠斗は少し救われた気がした。




 客室は、悠斗の想像を遥かに超える豪華さだった。


 広い部屋。柔らかいベッドが二つ。窓からは王都の街並みが一望できる。


「すごい……こんな部屋、泊まったことない」


 悠斗は部屋を見回した。


「本当に立派ね」


 ルーナもベッドに座って、柔らかさを確認している。


「ここで、しばらく滞在するのか……」


 悠斗は窓の外を見た。


 王都の街並み。遠くには城壁が見える。そして、その向こうには草原が広がっている。


 空には、二つの月が浮かんでいた。


 白い月と、黒い月。


 黒い月は、昨夜よりもさらに大きくなっているように見えた。


「時間がない……」


 悠斗は呟いた。


「ねえ、悠斗」


 ルーナが悠斗の隣に立った。


「何?」


「あなた、本当は優しいのね」


「え?」


「国王陛下の頼みを断れなくて、悩んでいるでしょう?」


 ルーナは悠斗の横顔を見つめた。


「それは……」


「あなたは、困っている人を見ると、放っておけない。だから、村でも戦った。だから、今も悩んでいる」


「俺は、そんな立派な人間じゃない」


 悠斗は首を振った。


「ただ、目の前で困ってる人がいたら、助けたいと思うだけだ」


「それが、優しさよ」


 ルーナは悠斗の手を握った。


「あなたは、自分が思っているより、ずっと優しい人なの」


「ルーナ……」


 二人は見つめ合った。


 ルーナの銀色の瞳が、月光を反射して輝いている。


 悠斗の心臓が、また激しく鼓動し始めた。


「あの、ルーナ……」


「何?」


「お前、俺のこと……どう思ってる?」


 悠斗は勇気を振り絞って尋ねた。


 ルーナの顔が、一気に赤くなった。


「え、えっと……その……」


 ルーナは視線を逸らし、もじもじしている。


「あなたのことは……大切、だと思ってる」


「大切……」


「ええ。あなたは、ずっと私を見てくれていた。大切にしてくれていた。だから、私も……」


 ルーナは言葉を詰まらせた。


「私も、あなたのことが……」


 その時――


 コンコン。


 扉がノックされた。


「お二人とも、夕食の準備ができました」


 使用人の声。


「あ、はい! 今行きます!」


 悠斗は慌てて答えた。


 ルーナは顔を真っ赤にしたまま、俯いている。


「ルーナ、行こう」


「え、ええ……」


 二人は部屋を出た。


 廊下を歩きながら、悠斗は考えていた。


 ルーナの言葉。


「あなたのことが……」


 その先を聞きたかった。でも、聞くのが怖い気もした。


 もし、自分の期待と違う答えだったら――


「悠斗、大丈夫?」


 ルーナが心配そうに声をかけてきた。


「ああ、大丈夫」


 悠斗は笑顔を作った。


 しかし、心の中では、答えを聞きたい気持ちと、聞きたくない気持ちが入り混じっていた。




 食堂は、謁見の間と同じくらい広大だった。


 長いテーブルが設置されており、そこには豪華な料理が並んでいた。


 肉料理、魚料理、野菜料理、パン、果物、ワイン。


「すごい……」


 悠斗は目を見張った。


「国王陛下が、特別に用意されたのです」


 レイナルドが説明した。


 テーブルには、国王と、何人かの貴族たちが座っていた。


「さあ、座るがよい」


 国王が手で席を示した。


 悠斗とルーナは、国王の近くの席に座った。


「では、乾杯しよう。新たな客人、神崎悠斗とルーナを歓迎して」


 国王がグラスを掲げた。


「乾杯!」


 全員がグラスを掲げ、一斉に飲んだ。


 悠斗もワインを一口飲んだ。甘くて、少しだけ辛い。


「さあ、遠慮なく食べるがよい」


 国王の言葉に従い、悠斗は料理に手をつけた。


 そして――


「うまい!」


 悠斗は感動した。


 どの料理も、信じられないくらい美味しかった。素材の味が活きていて、調味料も絶妙。


「気に入っていただけたようで、嬉しいです」


 国王が満足そうに微笑んだ。


 悠斗は次々と料理を口に運んだ。


 一皿、二皿、三皿。


「おかわり!」


「はい!」


 使用人が慌てて料理を運んでくる。


 四皿、五皿、六皿。


「悠斗……食べ過ぎじゃない?」


 ルーナが心配そうに声をかけた。


「仕方ないだろ。腹が減るんだ」


「でも……」


 七皿、八皿、九皿。


 貴族たちが、悠斗を驚いた表情で見ている。


「すごい食欲だな……」


「普通の人間の十倍は食べているぞ……」


 ヒソヒソと囁き声が聞こえる。


 しかし、悠斗は気にせず食べ続けた。


 十皿、十一皿、十二皿。


「ごちそうさまでした!」


 ようやく、悠斗は満腹になった。


「……よく食べたな」


 国王が感心したように言った。


「すみません……つい……」


「いや、構わん。戦士は多く食べるものだ」


 国王は笑った。


 食事が終わった後、貴族の一人が悠斗に話しかけてきた。


「神崎殿、少しよろしいですか?」


「はい」


「私は、軍務大臣のグレゴリーと申します」


 グレゴリーは厳格な顔つきの男性だった。


「あなたの戦闘能力について、詳しく教えていただけますか?」


「戦闘能力……ですか?」


「はい。黒竜を倒したと聞きましたが、具体的にどのような戦い方をしたのか」


 悠斗は少し考えてから、答えた。


「俺は、この世界では普通の人より力が強いです。あと、ジャンプ力も高い。それを活かして、機動力で戦いました」


「なんと……」


 グレゴリーは驚いた。


「ええ。あなたの力があれば、帝国の侵攻を防げるかもしれません」


 グレゴリーは真剣な表情で悠斗を見つめた。


「ぜひ、我が国のために戦っていただきたい」


「それは……」


 悠斗は言葉を濁した。


「グレゴリー、今日は客人を歓迎する日だ。仕事の話はまた明日にせよ」


 国王が諫めた。


「失礼しました、陛下」


 グレゴリーは頭を下げた。


 しかし、その目は、まだ悠斗を値踏みするように見ていた。


 悠斗は少し不快感を覚えた。


 まるで、自分が「道具」として見られているような。




 晩餐会が終わった後、悠斗とルーナは王城の庭園を散歩していた。


 庭園は美しく整備されており、様々な花が咲いている。噴水があり、小道が続いている。


「綺麗ね……」


 ルーナが花を見つめている。


「ああ」


 悠斗も頷いた。


 二人は並んで歩いていた。


 月の光が、二人を優しく照らしている。


「ねえ、悠斗」


「ん?」


「さっきの軍務大臣の言葉、気にしてる?」


「……ああ」


 悠斗は正直に答えた。


「なんか、道具として見られてる気がして」


「私もそう思ったわ」


 ルーナは悠斗の手を握った。


「でも、あなたは道具じゃない。一人の人間よ」


「ありがとう」


 悠斗は握り返した。


 二人は噴水のそばのベンチに座った。


 噴水の水音が、静かに響いている。


「ルーナ、お前……この世界を救いたいと思ってる?」


「もちろんよ。私は月の女神だもの。この世界を守るのは、私の役目」


「でも、今は力がないんだろ?」


「ええ。でも、いつか力を取り戻すわ。そして、黒い月のバランスを正す」


 ルーナは決意を込めて言った。


「そのためには、記憶を取り戻さないといけないわね」


「記憶……」


「ええ。百年前に何が起きたのか。なぜ私は力を失ったのか。それを思い出せば、解決の糸口が見つかるかもしれない」


「どうやって思い出すんだ?」


「わからない。でも、この世界を旅していれば、何か思い出すかもしれない」


 ルーナは空を見上げた。


 二つの月が、空に浮かんでいる。


「あの黒い月……百年前、何かが起きて、力を増し始めた」


「それが、お前の記憶と関係してるのか」


「おそらくね」


 ルーナは悠斗を見た。


「だから、一緒に旅を続けたいの。記憶を取り戻すために。そして、この世界を救うために」


「わかった。俺も、一緒に行く」


 悠斗は頷いた。


「ありがとう、悠斗」


 ルーナは嬉しそうに微笑んだ。


 そして――


 ルーナは、悠斗の肩に頭を預けた。


「え……」


「少しだけ、こうさせて」


 ルーナの声が、優しく響いた。


 悠斗の心臓が、激しく鼓動した。


 ルーナの温もりが、肩から伝わってくる。銀色の髪が、月光を受けて輝いている。


「ルーナ……」


「あなたと一緒にいると、安心するの」


 ルーナは目を閉じた。


「あなたは、ずっと私を見ていてくれた。大切にしてくれた。だから、私も……」


「私も……?」


 悠斗は尋ねた。


 ルーナは少し躊躇してから、小さな声で答えた。


「私も、あなたのことが……好き」


 悠斗の心臓が、止まりそうになった。


「え……」


「ごめんなさい。突然こんなこと言って」


 ルーナは顔を上げた。その顔は真っ赤に染まっている。


「でも、本当なの。あなたのことが、好き」


 悠斗は言葉を失った。


 頭が真っ白になった。


 ルーナが、自分のことを好きだと言った。


「俺も……」


 悠斗は勇気を振り絞って答えた。


「俺も、お前のことが好きだ」


 ルーナの目が、大きく見開かれた。


「本当……?」


「ああ。お前のフィギュアを見ていた時から、ずっと……」


 悠斗は照れくさそうに視線を逸らした。


「お前は、俺にとって特別な存在だった。だから、ここに来た時も、すぐにわかった。これが本物のルーナだって」


「悠斗……」


 ルーナの目に、涙が浮かんだ。


「嬉しい……本当に、嬉しい……」


 ルーナは悠斗の胸に飛び込んできた。


 悠斗は反射的にルーナを抱きしめた。


 柔らかい体。温かい温もり。甘い香り。


 二人は、しばらくそのままでいた。


 月の光が、二人を優しく照らしていた。




 深夜。


 悠斗は客室のベッドで眠っていた。


 しかし――


 カチャ。


 扉が開く音で、悠斗は目を覚ました。


「ん……?」


 悠斗は目を開けた。


 部屋の入り口に、人影があった。


「誰だ!」


 悠斗は跳ね起きた。


 人影は、ゆっくりと近づいてきた。


 月光が人影を照らし、その正体が明らかになった。


「ルーナ……?」


 それは、ルーナだった。


 彼女は白いナイトドレスを着ており、銀色の髪が月光を反射して輝いている。


「悠斗……起こしちゃった?」


「いや、大丈夫。どうしたんだ?」


「眠れなくて……あなたと、話したくて」


 ルーナは悠斗のベッドの端に座った。


「何を話したいんだ?」


「色々……」


 ルーナは視線を逸らした。


「さっき、告白したでしょう?」


「ああ……」


 悠斗も顔が熱くなった。


「あれ、本当なの。嘘じゃないわ」


「俺も、本当だ」


「嬉しい……」


 ルーナは微笑んだ。


 そして――


 ルーナは、悠斗のベッドに潜り込んできた。


「え、ちょ、待って!」


「だって、寒いんだもの」


 ルーナは悠斗の隣に横たわった。


 二人の距離が、異常に近い。


 悠斗の心臓が、爆発しそうなくらい激しく鼓動した。


「ル、ルーナ……これ、まずいんじゃ……」


「何が?」


「いや、その……男女が同じベッドに……」


「大丈夫よ。私たち、恋人同士でしょう?」


「え、恋人……」


 悠斗は言葉を失った。


 確かに、お互いに好きだと言った。でも、それで恋人になったのか。


「違うの?」


 ルーナが不安そうに悠斗を見つめた。


「い、いや、違わない。俺も、そう思ってる」


「よかった」


 ルーナは嬉しそうに微笑んだ。


 そして、悠斗の胸に顔を埋めた。


「あったかい……」


「お、おい……」


「悠斗、ずっとこうしていたい」


「で、でも……」


「ダメ?」


 ルーナが上目遣いで悠斗を見つめた。


 その表情があまりにも可愛くて、悠斗は何も言えなくなった。


「……わかった。でも、何もしないぞ」


「何もって、何を?」


「い、いや、何でもない」


 悠斗は顔を真っ赤にして視線を逸らした。


 ルーナは小さく笑った。


「悠斗、可愛い」


「可愛いって……俺、男なんだけど……」


「でも、可愛いものは可愛いわ」


 ルーナは悠斗の頬に手を当てた。


「ねえ、悠斗」


「何?」


「私のこと、ずっと好きでいてくれる?」


「ああ、ずっと好きだ」


 悠斗は即答した。


「嬉しい……」


 ルーナは目を閉じた。


「おやすみ、悠斗」


「おやすみ、ルーナ」


 悠斗もルーナを抱きしめたまま、目を閉じた。


 温かい温もり。甘い香り。柔らかい感触。


 悠斗は、幸せな気持ちで眠りについた。




 朝。


 悠斗は、ノックの音で目を覚ました。


「悠斗様、朝食の準備ができました」


 使用人の声。


「あ、ああ……今行く……」


 悠斗は目を開けた。


 そして、気づいた。


 ルーナが、まだ自分の胸に顔を埋めて眠っていることに。


「やばい……」


 悠斗は慌てた。


 このまま使用人が入ってきたら、大変なことになる。


「ルーナ、起きろ!」


 悠斗はルーナを揺すった。


「ん……あと五分……」


「五分じゃない! 起きろ!」


 悠斗はさらに強く揺すった。


「うーん……」


 ルーナがようやく目を開けた。


「おはよう、悠斗……」


「おはようじゃない! 早く自分の部屋に戻れ!」


「え、どうして?」


「使用人が来てる! このままじゃまずい!」


「あ……」


 ルーナもようやく状況を理解した。


「ど、どうしよう!」


「窓から出ろ!」


「窓から!?」


「他に方法がない!」


 悠斗は窓を開けた。


「そ、そうね……」


 ルーナは窓から外に出た。


「じゃあ、後で!」


 ルーナは窓から飛び降りた。


 その体は軽く、まるで羽のように降りていった。


「ふう……」


 悠斗は窓を閉めた。


 そして、扉を開けた。


「お待たせしました」


「いえ。では、食堂へご案内します」


 使用人は何も気づいていないようだった。


 悠斗は胸を撫で下ろした。


 食堂では、ルーナがすでに席に着いていた。


 何食わぬ顔で、紅茶を飲んでいる。


「おはよう、悠斗」


「お、おはよう……」


 悠斗は席に着いた。


 国王や貴族たちは、まだ来ていないようだった。


「昨夜は、よく眠れた?」


 ルーナがニコニコしながら尋ねた。


「あ、ああ……お前は?」


「私も、すごくよく眠れたわ」


 ルーナは意味深に微笑んだ。


 悠斗は顔を赤らめた。


 昨夜のことを思い出す。


 ルーナと同じベッドで眠ったこと。彼女の温もり。甘い香り。


「悠斗、顔が赤いわよ」


「う、うるさい」


 悠斗は紅茶を飲んで、顔を隠した。


 しばらくして、国王や貴族たちが食堂に入ってきた。


「おはよう、二人とも」


 国王が席に着いた。


「おはようございます、陛下」


 悠斗とルーナは頭を下げた。


 朝食が運ばれてきた。


 パン、卵料理、ベーコン、サラダ、果物。


 悠斗は、また大量に食べた。


 五皿、六皿、七皿。


「悠斗様は、本当によく食べますね」


 使用人が感心したように言った。


「すみません……」


「いえいえ。たくさん食べてください」


 朝食が終わった後、国王が悠斗とルーナに告げた。


「今日、軍の訓練場を見学してもらいたい」


「訓練場……ですか?」


「うむ。そなたの力を、実際に見せてもらいたい」


「わかりました」


 悠斗は頷いた。




 王城の裏には、広大な訓練場があった。


 兵士たちが、剣の訓練や射撃訓練を行っている。


「ここが、我が国の軍事訓練場だ」


 グレゴリー軍務大臣が案内した。


「兵士は約千人。全員、厳しい訓練を受けている」


 訓練場の中央には、大きな的が設置されていた。


「神崎殿、あの的に向かって、全力で攻撃してみてください」


「わかりました」


 悠斗は的に向かって歩いた。


 兵士たちが、悠斗を興味深そうに見ている。


「あれが、黒竜を倒した戦士か」


「本当に強いのか?」


 ヒソヒソと囁き声が聞こえる。


 悠斗は的の前に立った。


 そして――


 全力で、拳を振るった。


 ドゴォォン!!


 凄まじい衝撃音が響いた。


 的が粉々に砕け散った。


「な、何だ!?」


 兵士たちが驚いた。


「一撃で的を……!」


「信じられない……」


 グレゴリーも目を見開いていた。


「これは……驚異的だ……」


「次は、跳躍力を見せてください」


 国王が言った。


「わかりました」


 悠斗は地面を蹴った。


 その体が、7メートルの高さまで跳ね上がった。


「うわっ!」


 兵士たちが驚きの声を上げた。


 悠斗は空中で一回転し、優雅に着地した。


「すごい……」


「あんな跳躍、見たことない……」


 兵士たちが口々に言った。


「最後に、速度を見せてください」


 グレゴリーが言った。


「あの壁まで、全力で走ってみてください」


 グレゴリーは、訓練場の端にある壁を指差した。距離は約100メートル。


「わかりました」


 悠斗は構えた。


 そして――


 ダッ!


 悠斗が走り出した。


 その速度は、兵士たちの目には捉えられないほど速かった。


 数秒で、悠斗は壁に到達した。


「速い……!」


「まるで疾風のようだ……!」


 兵士たちが感嘆の声を上げた。


 グレゴリーは満足そうに頷いた。


「素晴らしい。これなら、帝国の軍勢とも渡り合えるでしょう」


「グレゴリー」


 国王が厳しい声で言った。


「神崎殿に、無理を強いるな」


「しかし、陛下……」


「彼は、我々の道具ではない。一人の客人だ」


 国王は悠斗を見た。


「神崎殿、そなたに強制するつもりはない。しかし、もし我が国のために戦ってくれるなら、我々は心から感謝する」


 悠斗は少し考えてから、答えた。


「陛下、一つ質問があります」


「何だ?」


「この戦争……本当に必要なんですか?」


 悠斗の質問に、その場の空気が凍りついた。


「どういう意味だ?」


 グレゴリーが厳しい声で尋ねた。


「帝国が侵攻してくるのは、食料や資源が不足しているからですよね? だったら、戦争じゃなくて、話し合いで解決できないんですか?」


「話し合い……?」


 グレゴリーは鼻で笑った。


「帝国は野蛮な軍事国家だ。話し合いなど通用しない」


「でも、試したんですか?」


 悠斗の言葉に、グレゴリーは言葉を詰まらせた。


「それは……」


「神崎殿の言う通りだ」


 国王が言った。


「我々は、帝国と話し合いをしていない。いや、できなかった」


「どうしてですか?」


「それは……信頼がないからだ」


 国王は深くため息をついた。


「百年前、月の女神が姿を消してから、各国は互いを信頼できなくなった。誰もが、自分の国だけを守ろうとした。その結果、争いが絶えなくなったのだ」


「だったら、俺が仲介します」


 悠斗は言った。


「え……?」

 国王が驚いた。


「俺は、どの国にも属していません。だから、中立的な立場で話し合いを仲介できるはずです」


「しかし、帝国が聞き入れるとは思えません」


 グレゴリーが反論した。


「試してみないとわかりません」


 悠斗は真剣な表情で言った。


「俺は、無駄な戦争は見たくない。もし話し合いで解決できるなら、それが一番いい」


 国王は少し考えてから、頷いた。


「わかった。では、帝国に使者を送ろう。神崎殿が仲介するという提案をするために」


「ありがとうございます」


 悠斗は深々と頭を下げた。


 ルーナが、悠斗の隣に寄ってきた。


「悠斗、やっぱりあなたは優しいのね」


「いや、ただ……戦争は嫌いなだけだ」


 悠斗は照れくさそうに答えた。




 午後。


 悠斗とルーナは、王城の図書館にいた。


 図書館は広大で、無数の本が棚に並んでいた。


「すごい……こんなにたくさんの本……」


 悠斗は圧倒された。


「この図書館には、この国の歴史がすべて記録されているわ」


 ルーナが説明した。


「ルーナの記憶を取り戻す手がかりが、ここにあるかもしれない」


「そうね。探してみましょう」


 二人は、月の女神に関する本を探し始めた。


 しばらくして、ルーナが一冊の古い本を見つけた。


「これ……『月の女神の伝説』」


 ルーナは本を開いた。


 そこには、月の女神についての記述があった。


「月の女神ルーナは、この世界に生命と秩序をもたらした。白い月を司り、黒い月との均衡を保った。しかし、百年前、黒い月の力が暴走し、女神は姿を消した

 ……」


 ルーナは読み進めた。


「女神が姿を消した原因は、不明。一説によれば、女神は黒い月の力を封じるために、自らの力を犠牲にしたという……」


「自分の力を犠牲に……」


 悠斗は呟いた。


「それで、お前は力を失ったのか?」


「わからない……でも、そうかもしれない」


 ルーナはページをめくった。


 そして、ある記述に目を止めた。


「待って……これ……」


「どうした?」


「『女神は、虚構の世界に逃げ込んだ』……虚構の世界……」


 ルーナの顔が蒼白になった。


「これって……ゲームの世界のこと?」


「おそらく……」


 ルーナは本を閉じた。


「私は、黒い月の力から逃れるために、ゲームの世界に閉じこもったのかもしれない」


「でも、なんでゲームの世界なんだ?」


「わからない。でも……」


 ルーナは悠斗を見た。


「あなたがいたからかもしれない」


「俺が?」


「ええ。あなたは、ゲーム『星辰のアルカディア』をプレイしていたでしょう?」


「ああ、何度もクリアした」


「そして、私のフィギュアを大切にしていた」


「それが、どう関係するんだ?」


「私は、あなたの思いを感じ取っていたの。だから、ゲームの世界に逃げ込んだ時、あなたとつながることができた」


 ルーナは悠斗の手を握った。


「あなたがいなければ、私は永遠にゲームの世界に閉じ込められていたかもしれない」


「ルーナ……」


 悠斗は、ルーナを抱きしめた。


「もう大丈夫だ。俺が、お前を守る」


「ありがとう、悠斗」


 二人は、しばらくそのままでいた。


 図書館の静寂の中で、二人の心が一つになっていく。


 そのとき――


「お二人とも、こんなところにいたのですか」


 レイナルドの声が響いた。


 悠斗とルーナは慌てて離れた。


「れ、レイナルドさん……」


「帝国からの返事が来ました」


「もう!?」


「はい。驚くべきことに、帝国は話し合いに応じると言ってきました」


「本当ですか!」


 悠斗は喜んだ。


「ええ。ただし、条件があります」


「条件?」


「話し合いの場に、神崎殿が同席すること。そして、ルーナ様も同席すること」


「俺とルーナが……」


「はい。帝国は、あなた方に興味を持っているようです」


 レイナルドは少し心配そうな表情をした。


「正直、罠かもしれません」


「でも、行くしかないな」


 悠斗は決意した。


「話し合いのチャンスを逃すわけにはいかない」


「わかりました。では、明日、帝国との会談が行われます。場所は、国境付近の中立地帯です」


「了解しました」


 悠斗は頷いた。


 ルーナも頷く。


「では、準備をしてください。明日は、重要な一日になるでしょう」


 レイナルドは去っていった。


 悠斗とルーナは、顔を見合わせた。


「いよいよね」


「ああ。でも、これが平和への第一歩だ」


「そうね」


 ルーナは微笑んだ。


「あなたと一緒なら、きっと大丈夫」


「俺もそう思う」


 二人は手を取り合った。


 明日、帝国との会談が行われる。


 それは、この世界の未来を決める、重要な会談になるだろう。


 悠斗は、決意を新たにした。


 必ず、平和的な解決を見つけ出す。


 そして、この世界を救う。


 ルーナと共に――




 夜。


 悠斗は客室で、明日の会談について考えていた。


 帝国が本当に話し合いに応じるのか。


 罠ではないのか。


 様々な不安が頭をよぎる。


 コンコン。


 扉がノックされた。


「悠斗、入っていい?」


 ルーナの声。


「ああ」


 扉が開き、ルーナが入ってきた。


 彼女は白いナイトドレスを着ており、髪を下ろしている。


「明日、緊張してる?」


「まあな」


 悠斗は正直に答えた。


「大丈夫。私も一緒にいるから」


 ルーナは悠斗の隣に座った。


「二人で力を合わせれば、きっとうまくいくわ」


「ありがとう」


 悠斗はルーナの手を握った。


「なあ、ルーナ」


「何?」


「もし、会談が失敗したら……戦争になるのかな」


「わからない。でも、最悪の事態は避けたいわね」


「ああ」


 悠斗は窓の外を見た。


 二つの月が、空に浮かんでいる。


 黒い月は、さらに大きくなっているように見えた。


「時間がない……」


「ええ。だから、明日は絶対に成功させないと」


 ルーナは決意を込めて言った。


「私たちなら、できるわ」


「そうだな」


 悠斗は頷いた。


 二人は、しばらく黙って月を見つめていた。


 そして――


 ルーナが、悠斗にもたれかかってきた。


「ルーナ……?」


「ねえ、悠斗」


「ん?」


「明日、もし何かあったら……」


「何かって?」


「もし、私が……」


 ルーナは言葉を詰まらせた。


「何を言ってるんだ。お前に何もさせない」


 悠斗はルーナを抱きしめた。


「俺が、絶対に守る」


「悠斗……」


 ルーナは悠斗の胸に顔を埋めた。


「ありがとう。あなたがいてくれて、本当によかった」


「俺もだ」


 二人は、そのまま抱き合っていた。


 温かい温もり。甘い香り。


 悠斗は、ルーナを守ると誓った。


 何があっても、彼女を傷つけさせない。


 そして、この世界を救う。


 必ず――




 朝。


 悠斗とルーナは、王城の正門に集合していた。


 国王、レイナルド、グレゴリー、そして数十人の兵士たちが、彼らを見送りに来ていた。


「神崎殿、ルーナ殿。この国の未来を、そなたたちに託す」


 国王が厳かに言った。


「任せてください」


 悠斗は頭を下げた。


「では、行ってくる」


 馬車が用意されており、悠斗とルーナはそれに乗り込んだ。


 レイナルドも同乗する。


「では、出発します」


 馬車が動き出した。


 王都の門をくぐり、草原へ。


 国境までは、約半日の道のりだ。


 馬車の中で、悠斗は緊張していた。


「大丈夫?」


 ルーナが声をかけてきた。


「ああ……ちょっと緊張してる」


「私もよ」


 ルーナは悠斗の手を握った。


「でも、二人で頑張りましょう」


「ああ」


 馬車は、国境へと向かって走り続けた。


 そして――


 悠斗とルーナの、新たな試練が始まろうとしていた。



悠斗には内緒ですが……


実は、彼が眠っている時、時々そっと頬にキスをしています。


彼の寝顔が、あまりにも可愛くて……我慢できなくて……


でも、これは絶対に秘密です!


もし彼が読んでいたら……


その、ごめんなさい(顔を真っ赤にして逃げる)


次回、帝国との会談で、衝撃の真実が明かされるかもしれません。


そして……私の記憶の一部が、戻るかもしれません。


楽しみにしていてくださいね。


では、また4話でお会いしましょう!


ルーナ

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