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模型(1/10)スケールのアポカリプス  作者: 暁の裏


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第15話 「黒月の化身 ~最終決戦の幕開け~」

 五人――悠斗、ルーナ、バルトロメウス、セレスティア、そしてグラキエス――は、第八階層の大広間で、アルヴィンと対峙していた。


 アルヴィンの周囲には、黒い霧が立ち上り、その瞳には狂気と憎悪が宿っている。


「行くぞ!」


 悠斗が叫び、地面を蹴った。


 跳躍で、一気にアルヴィンに肉薄する。


「遅い!」


 アルヴィンは杖を振るった。


 黒い霧が、無数の黒い矢となって悠斗に向かって放たれた。


「くっ!」


 悠斗は空中で体をひねり、矢を避けた。


 しかし、矢は悠斗を追尾してくる。


「月の盾!」


 ルーナが両手を広げた。


 悠斗の周囲に、銀色の光の盾が展開される。


 黒い矢が盾に当たり、消滅した。


「ありがとう、ルーナ!」


 悠斗は着地し、再びアルヴィンに突進した。


「影の檻!」


 バルトロメウスが叫んだ。


 アルヴィンの足元から、黒い影が這い上がり、彼の体を捕らえようとする。


「ふん!」


 アルヴィンは杖を地面に突き刺した。


 すると、黒い霧が爆発的に広がり、影を吹き飛ばした。


「私の黒月の力は、お前の影魔法など比べ物にならん!」


「氷結の槍!」


 グラキエスが氷の槍を生成し、アルヴィンに向かって放った。


 槍は猛烈な速度で飛んでいく。


 しかし――


 アルヴィンは杖を一振りしただけで、槍を粉々に砕いた。


「無駄だ」


 アルヴィンは冷たく言った。


「お前たちの攻撃など、すべて無意味だ」


「月光の矢!」


 ルーナが光の矢を放った。


 セレスティアも杖を振るい、治癒の光を悠斗たちに浴びせる。


「全員で攻めるぞ!」


 悠斗が叫んだ。


 五人は一斉にアルヴィンに向かって攻撃を開始した。


 悠斗の拳。


 ルーナの光の矢。


 バルトロメウスの影の剣。


 グラキエスの氷の刃。


 セレスティアの光の魔法。


 しかし――


「黒月の障壁!」


 アルヴィンは杖を高く掲げた。


 すると、彼の周囲に巨大な黒い球体が形成された。


 すべての攻撃が、球体に当たって弾かれる。


「なんだと!?」


 悠斗は驚いた。


「言っただろう。無駄だと」


 アルヴィンは球体の中から、冷たい声で言った。


「私は、五十年間、黒月の力を研究してきた。お前たちごときに、負けるはずがない」


 球体が消え、アルヴィンが姿を現した。


 彼の周囲には、さらに濃密な黒い霧が渦巻いている。


「さあ、今度は私の番だ」


 アルヴィンは杖を振るった。


 その瞬間――


 広間全体が、黒い霧に包まれた。


「何だ、これ!」


 悠斗は周囲を見回したが、何も見えない。


 真っ暗闇。


 いや、ただの暗闇ではない。


 光を吸収する、絶対的な闇。


「悠斗!」


 ルーナの声が聞こえた。


 しかし、姿が見えない。


「ルーナ! どこだ!」


「ここよ!」


 声の方向に走ろうとしたが――


 ドガッ!


 何かに激突した。


「うっ!」


 悠斗は倒れた。


「これは……黒月の闇」


 バルトロメウスの声が響いた。


「光を完全に吸収する、絶対的な闇だ。視界が完全に遮断される」


「どうすればいいんだ!」


 悠斗は叫んだ。


 その時――


「黒の炎!」


 アルヴィンの声が響き、闇の中から黒い炎が襲いかかってきた。


「うわっ!」


 悠斗は横に転がって避けた。


 炎が地面を焼き尽くす。


「次はどこから来る……!」


 悠斗は必死に周囲を警戒した。


 しかし、何も見えない。


「月の光よ、闇を照らせ!」


 ルーナの声が響いた。


 すると、闇の中に小さな光が灯った。


 月光のような、柔らかい光。


 光は徐々に広がり、闇を押し返していく。


「やった!」


 悠斗は光の中にルーナの姿を見つけた。


 彼女は両手を高く掲げ、全身から光を放っている。


「でも……これが限界……」


 ルーナは苦しそうに言った。


 光はわずか数メートルの範囲しか照らせていない。


「ならば、これで終わりだ!」


 アルヴィンの声が響き、闇の中から巨大な黒い魔法陣が現れた。


 魔法陣は回転し、そこから無数の黒い矢が放たれた。


「みんな、伏せろ!」


 悠斗は叫んだ。


 五人は地面に伏せた。


 黒い矢が、彼らの頭上をかすめていく。


「くそ……このままじゃ……」


 悠斗は歯噛みした。


 その時――


「待って……私に考えがあるわ」


 グラキエスが言った。


「何だ?」


「私の氷の魔法で、闇を凍らせる」


「闇を……凍らせる?」


「ええ。闇も、一種のエネルギー。ならば、凍結させることができるはず」


 グラキエスは杖を握りしめた。


「でも、成功するかはわからない。試したことがないから」


「やってみてくれ!」


 悠斗は言った。


「わかったわ」


 グラキエスは目を閉じ、集中した。


 彼女の周囲に、冷気が立ち上る。


 気温が急激に下がっていく。


「絶対零度の氷結!」


 グラキエスが叫んだ。


 すると、彼女の周囲から、青白い氷の波が広がっていった。


 波は闇に触れると、闇を凍らせていく。


 闇が、まるでガラスのように固まっていく。


「すごい……」


 悠斗は驚いた。


 凍った闇は、透明になり、向こう側が見えるようになった。


「今よ!」


 グラキエスが叫んだ。


「凍った闇を壊して!」


「わかった!」


 悠斗は拳を握りしめ、凍った闇に向かって全力で殴った。


 ドゴォォン!!


 凍った闇が、粉々に砕け散った。


 すると、広間全体が再び見えるようになった。


「やった!」


「まだよ!」


 ルーナが叫んだ。


「アルヴィンを倒さないと!」


 五人は、広間の中央にいるアルヴィンを見つめた。


 アルヴィンは、驚いた表情をしていた。


「まさか……私の黒月の闇を破るとは……」


「お前の魔法は、確かに強い」


 悠斗は言った。


「でも、俺たちは五人だ。一人じゃない」


「その通りよ」


 ルーナが悠斗の隣に並んだ。


「私たちは、仲間。一緒なら、どんな敵にも勝てる」


「……フン」


 アルヴィンは鼻で笑った。


「仲間……か。そんなものに、何の価値がある」


 アルヴィンは杖を握りしめた。


「私は、かつて仲間を信じていた。王国を信じていた。月の女神を信じていた」


 アルヴィンの目に、深い悲しみが浮かんだ。


「しかし、すべてが裏切った。私の妻も、娘も、すべて奪われた」


「それは……」


 ルーナが言葉を詰まらせた。


「だから、私は信じない。仲間など、幻想だ」


 アルヴィンは杖を高く掲げた。


「私が信じるのは、ただ一つ。黒月の力だけだ!」


 アルヴィンの体から、黒い霧が爆発的に噴き出した。


 霧は渦を巻き、巨大な竜巻となって広間を包み込む。


「なんだ、これ!」


 悠斗は風に煽られ、体が浮きそうになった。


「黒月の嵐!」


 アルヴィンが叫んだ。


 竜巻の中から、無数の黒い刃が現れた。


 刃は高速で回転し、五人に向かって襲いかかってくる。


「みんな、集まって!」


 ルーナが叫んだ。


 五人は円陣を組んだ。


「月の結界!」


 ルーナは両手を広げた。


 五人の周囲に、銀色の光の結界が展開される。


 黒い刃が結界に当たり、弾かれた。


 しかし、刃の数があまりにも多い。


 結界にヒビが入り始めた。


「持たない……!」


 ルーナは苦しそうに呻いた。


「私も手伝うわ!」


 セレスティアが杖を掲げた。


「聖なる光の結界!」


 セレスティアの光の結界が、ルーナの結界に重なった。


 結界が強化され、ヒビが修復されていく。


「ありがとう、セレスティア!」


「でも、これも長くは持ちません!」


 セレスティアは必死に魔力を注ぎ込んでいた。


「くそ……このままじゃジリ貧だ……」


 悠斗は歯噛みした。


 その時――


 バルトロメウスが言った。


「悠斗、一つ提案がある」


「何だ?」


「私の影の魔法で、アルヴィンの影を捕らえる。その隙に、お前が攻撃する」


「でも、あの嵐の中に入るのは……」


「大丈夫だ。グラキエスと協力する」


 バルトロメウスはグラキエスを見た。


「グラキエス、私の影の道を、お前の氷で固めてくれ」


「わかったわ」


 グラキエスは頷いた。


「でも、タイミングが重要よ。私の氷が固まる前に、影の道を通らないと」


「任せろ」


 バルトロメウスは影の剣を構えた。


「では、行くぞ。影の道!」


 バルトロメウスは影の剣を地面に突き刺した。


 すると、彼の足元から黒い影が伸びていった。


 影は蛇のように地面を這い、嵐の中へと突入していく。


「氷結の道!」


 グラキエスが杖を振るった。


 バルトロメウスの影の上に、氷が形成されていく。


 影が氷に覆われ、固い道となった。


「悠斗、今だ!」


「わかった!」


 悠斗は氷の道に飛び乗った。


 そして、全速力で走り出した。


 嵐の中。


 黒い刃が四方八方から襲いかかってくる。


 しかし、悠斗の目には、その動きがスローモーションに見えた。


「遅い!」


 悠斗は刃を避けながら、走り続けた。


 氷の道は真っ直ぐアルヴィンに向かって伸びている。


「もうすぐだ……!」


 悠斗はアルヴィンまで、あと数メートルに迫った。


 しかし――


「甘い!」


 アルヴィンは杖を振るった。


 すると、悠斗の目の前に巨大な黒い壁が現れた。


「うわっ!」


 悠斗は咄嗟に拳を振るった。


 ドガァッ!


 壁にヒビが入るが、壊れない。


「くそ、硬い!」


「黒月の壁は、絶対に破れない」


 アルヴィンは冷笑した。


「お前の力では無理だ」


「そうかな!」


 悠斗は再び拳を振るった。


 一発、二発、三発。


 連続で壁を殴り続ける。


 ヒビが徐々に広がっていく。


「諦めが悪い!」


 アルヴィンは杖を振るい、黒い刃を悠斗に向かって放った。


「うっ!」


 悠斗は刃を避けようとしたが――


 一つの刃が、悠斗の肩をかすめた。


「ぐあっ!」


 悠斗は痛みに顔を歪めた。


 血が流れる。


「悠斗!」


 ルーナが叫んだ。


「大丈夫だ!」


 悠斗は歯を食いしばった。


「これくらい……!」


 悠斗は再び壁を殴った。


 四発、五発、六発。


 ついに――


 バリィィン!


 壁が砕け散った。


「よし!」


 悠斗は壁を突破し、アルヴィンに肉薄した。


「くっ……!」


 アルヴィンは後退しようとしたが――


「影の鎖!」


 バルトロメウスの影が、アルヴィンの足を捕らえた。


「な……!」


「今だ、悠斗!」


「ああ!」


 悠斗は拳を引き絞った。


 全身の力を込めて――


「うおおおおおお!!」


 悠斗の拳が、アルヴィンの腹部に直撃した。


 ドゴォォォン!!


 凄まじい衝撃音が響いた。


 アルヴィンの体が、吹き飛んだ。


 彼は広間の壁に激突し、そのまま崩れ落ちた。


 黒い嵐が消え、静寂が訪れた。


「やった……のか?」


 悠斗は荒い息をついた。


「まだよ!」


 ルーナが叫んだ。


「まだ魔力の反応がある!」


「なんだと!」


 悠斗は驚いて、アルヴィンを見た。


 アルヴィンは、ゆっくりと立ち上がった。


 口から血を流しながら。


「ハハ……ハハハ……」


 アルヴィンは笑った。


「素晴らしい……本当に、素晴らしい……」


「まだ戦うつもりか!」


「当然だ」


 アルヴィンは杖を握りしめた。


「私は、すべてを賭けてここまで来た。今さら諦めるわけにはいかない」


 アルヴィンの体から、さらに強い黒い霧が立ち上った。


 霧は彼の体を包み込み、形を変えていく。


「これは……変身……?」


 悠斗は驚いた。


「黒月の真の力を、見せてやる」


 アルヴィンが叫んだ。


 すると――


 彼の体が、急激に膨れ上がった。


 身長が伸びていく。


 腕が太くなり、筋肉が隆起する。


 顔が歪み、目が黒く染まる。


「うわっ……何だあれ……」


 悠斗は思わず後ずさった。


 やがて、変身が完了した。


 そこには、巨大な黒い怪物が立っていた。


 身長約5メートル。全身が黒い鱗で覆われ、背中には黒い翼が生えている。手には長い爪があり、口からは黒い炎が漏れている。


「これが……私の真の姿だ」


 怪物化したアルヴィンが、低い声で言った。


「黒月の力を完全に取り込んだ、究極の存在」


「やばい……」


 悠斗は冷や汗をかいた。


 怪物化したアルヴィンから放たれる圧倒的な魔力。


 それは、今までの比ではなかった。


「さあ、来るがいい」


 アルヴィンは両手を広げた。


「お前たち全員で来ても、私には勝てない」


「それはどうかな!」


 悠斗は叫んだ。


「みんな、行くぞ!」


「ええ!」


 五人は一斉にアルヴィンに向かって突進した。


 悠斗が先頭を切り、拳を振るう。


 しかし――


 アルヴィンは軽く手を振っただけで、悠斗を吹き飛ばした。


「うわっ!」


 悠斗は壁に激突した。


「悠斗!」


 ルーナが光の矢を放った。


 バルトロメウスが影の剣で斬りかかった。


 グラキエスが氷の槍を投げた。


 セレスティアが光の魔法を放った。


 しかし――


 すべての攻撃が、アルヴィンに当たる前に黒い霧に吸収された。


「無駄だ」


 アルヴィンは冷たく言った。


「お前たちの攻撃など、もはや届かない」


 アルヴィンは口を開き、黒い炎を吐き出した。


 巨大な炎の奔流が、五人に向かって襲いかかる。


「月の盾!」


 ルーナは急いで結界を展開した。


 しかし、炎の威力があまりにも強く、結界が砕け散った。


「きゃあ!」


 ルーナは吹き飛ばされた。


「ルーナ!」


 悠斗は立ち上がり、ルーナに駆け寄った。


「大丈夫か!」


「え、ええ……でも……」


 ルーナは苦しそうに顔を歪めた。


「魔力が……もうほとんど残ってない……」


「くそ……」


 悠斗は歯噛みした。


 他の三人も、疲労の色が濃い。


 バルトロメウスは膝をついている。


 グラキエスは杖を支えにして立っている。


 セレスティアは荒い息をついている。


「このままじゃ……全滅する……」


 悠斗は絶望しかけた。


 その時――


「ハハハハハ!」


 アルヴィンの哄笑が響いた。


「どうした、もう終わりか? たったこれだけか?」


 アルヴィンは五人を見下ろした。


「失望したぞ。お前たちには、もっと期待していたのだが」


「くそ……」


 悠斗は拳を握りしめた。


 まだだ。


 まだ諦めるわけにはいかない。


「みんな……立てるか?」


 悠斗は仲間たちを見た。


「ええ……なんとか……」


 ルーナが立ち上がった。


 バルトロメウス、グラキエス、セレスティアも、なんとか立ち上がる。


「もう一度……行くぞ」


「でも、どうやって……」


 グラキエスが言った。


「あいつ、強すぎるわ。まともに攻撃が通らない」


「なら……」


 悠斗は考えた。


 どうすれば、あの怪物を倒せるのか。


 その時――


 セレスティアが言った。


「あの……一つ、思いついたことがあります」


「何だ?」


「あの怪物、確かに強いです。でも……魔力の流れを見ると、一箇所だけ……」


 セレスティアは怪物化したアルヴィンを見つめた。


「胸の中央に、黒い核のようなものが見えます」


「核……?」


「ええ。おそらく、あれが黒月の力の源です。あれを破壊すれば……」


「倒せる、かもしれない」


 悠斗は頷いた。


「わかった。じゃあ、あの核を狙う」


「でも、どうやって近づくの?」


 グラキエスが尋ねた。


「あいつ、近づくだけで攻撃してくるわ」


「なら……」


 バルトロメウスが言った。


「私たち四人で、動きを止める」


「動きを止める……?」


「ああ。ルーナとグラキエスとセレスティアと私で、あいつの動きを封じる。その隙に、悠斗が核を破壊する」


「でも、それって……」


 ルーナが心配そうに言った。


「私たち、かなり危険じゃない?」


「ああ。下手をすれば、全員やられる」


 バルトロメウスは真剣な表情で言った。


「でも、他に方法はない。これが、最後のチャンスだ」


 悠斗は少し考えてから、頷いた。


「わかった。お前たちに任せる」


「ええ」


 四人は頷いた。


「では、行くぞ」


 バルトロメウスは影の剣を構えた。


「ルーナ、グラキエス、セレスティア、準備はいいか?」


「ええ」


 三人は魔法を準備した。


「では……今だ!」


 バルトロメウスが叫んだ。


 四人は一斉に魔法を放った。


 バルトロメウスの影の鎖。


 ルーナの月の光の鎖。


 グラキエスの氷の鎖。


 セレスティアの聖なる光の鎖。


 四つの鎖が、アルヴィンに向かって伸びていった。


「何!?」


 アルヴィンは驚いた。


 鎖は彼の手足に巻きつき、動きを封じようとする。


「くっ……!」


 アルヴィンは力を込めて、鎖を引きちぎろうとした。


 しかし、四人の魔法が同時に彼を縛っているため、簡単には外せない。


「今よ、悠斗!」


 ルーナが叫んだ。


「わかった!」


 悠斗は地面を蹴った。


 跳躍で、アルヴィンの胸の高さまで飛び上がる。


 そして――


 拳を引き絞った。


 全身の力を、すべて拳に込める。


「うおおおおおおお!!」


 悠斗の拳が、アルヴィンの胸の中央――黒い核に向かって突き進んだ。


「させるか!」


 アルヴィンは叫び、黒い霧を放出した。


 霧が悠斗に襲いかかる。


 しかし――


「月の加護!」


 ルーナが叫んだ。


 悠斗の体が、月の光に包まれた。


 光が霧を押し返す。


「行け、悠斗!」


「ああ!」


 悠斗の拳が、ついに核に到達した。


 そして――


 ドゴォォォォン!!


 核が砕け散った。


「ぐあああああああ!!」


 アルヴィンは絶叫した。


 彼の体から、黒い霧が噴き出す。


 霧は消えていき、アルヴィンの巨体が縮小していく。


 やがて、彼は元の人間の姿に戻った。


 そして――


 地面に倒れた。


「ハァ……ハァ……」


 悠斗は荒い息をついた。


「やった……のか?」


 四人も、鎖を解いて悠斗の元に駆け寄った。


「悠斗、大丈夫?」


「ああ……なんとか……」


 悠斗は地面に降り立った。


 五人は、倒れたアルヴィンを見つめた。


 アルヴィンは、もう動かない。


「終わった……のか……」


 悠斗は呟いた。


 しかし――


 その時だった。


 広間の天井が、突然開いた。


「何!?」


 五人は驚いて上を見た。


 天井の向こうから、一人の人影が降りてきた。


 黒いローブを纏った。


 そして、狂気に満ちた瞳。


「ゼノン……!」


 バルトロメウスが叫んだ。


「教祖……!」


 ゼノンは、ゆっくりと地面に降り立った。


 そして、倒れたアルヴィンを見下ろした。


「アルヴィン……お前は、よくやった」


 ゼノンは静かに言った。


「お前の五十年間の研究は、無駄ではなかった」


 ゼノンはアルヴィンの体に手を当てた。


 すると――


 アルヴィンの体から、黒い霧が再び立ち上った。


「何をする気だ!」


 悠斗は叫んだ。


「簡単なことだ」


 ゼノンは冷たく微笑んだ。


「アルヴィンに、さらなる力を与える」


 ゼノンの手から、黒い光が放たれた。


 光はアルヴィンの体に注ぎ込まれていく。


「やめろ!」


 悠斗はゼノンに向かって走った。


 しかし――


「遅い」


 ゼノンは手を振った。


 すると、悠斗の前に黒い壁が現れ、悠斗を弾き飛ばした。


「うわっ!」


 悠斗は地面に叩きつけられた。


「悠斗!」


 ルーナたちが駆け寄ろうとしたが――


 ゼノンは再び手を振り、四人を壁で阻んだ。


「誰も、邪魔はさせない」


 ゼノンは静かに言った。


 そして、アルヴィンへの魔力注入を続けた。


 アルヴィンの体が、徐々に変化していく。


 皮膚が黒く染まり、体が膨れ上がる。


 さらに、背中から黒い触手のようなものが生えてきた。


 顔が歪み、口が裂けて、鋭い牙が現れた。


「うわ……何だあれ……」


 悠斗は恐怖を感じた。


 アルヴィンは、もはや人間の姿をしていなかった。


 異形の怪物。


 まるで、悪夢から這い出てきたような存在。


「これが……黒月の真の力」


 ゼノンは満足そうに微笑んだ。


「アルヴィンは、今や純粋な黒月の化身だ」


 異形化したアルヴィンが、ゆっくりと立ち上がった。


「グオオオオオ……」


 低い唸り声が、広間に響いた。


 その声には、もはや人間の理性は感じられなかった。


「さあ、アルヴィン」


 ゼノンは命令した。


「彼らを殺せ」


「グオオオオオ!!」


 アルヴィンは咆哮し、五人に向かって突進した。


「やばい!」


 悠斗は立ち上がった。


「みんな、散れ!」


 五人は左右に散った。


 アルヴィンの突進が、地面を抉る。


「くそ、速い……!」


 悠斗は驚いた。


 異形化したアルヴィンは、以前よりもさらに速く、強くなっていた。


「月光の矢!」


 ルーナが矢を放った。


 しかし、矢はアルヴィンの体に当たっても、まったくダメージを与えられない。


「効かない……!」


「氷結の槍!」


 グラキエスが槍を投げた。


 しかし、これも効果がない。


「影の剣!」


 バルトロメウスが斬りかかった。


 剣はアルヴィンの体に当たったが、弾かれた。


「硬い……!」


「聖なる光!」


 セレスティアが光の魔法を放った。


 光がアルヴィンを包む。


 しかし――


「グルルル……」


 アルヴィンは光を吸収してしまった。


「そんな……」


 セレスティアは絶望した。


「どうすれば……」


「くそ……」


 悠斗は歯噛みした。


 この怪物、どうやって倒せばいいんだ……


 その時――


 ゼノンが言った。


「無駄だ。お前たちに、アルヴィンは倒せない」


 ゼノンは腕を組んだ。


「彼は、もはや不死身だ。どんな攻撃も効かない」


「不死身……」


 悠斗は絶望しかけた。


 しかし――


 その時、ルーナが言った。


「待って……不死身なんて、ありえない」


 ルーナはアルヴィンを見つめた。


「どんな存在にも、必ず弱点がある」


「でも、どこに……」


「わからない。でも……」


 ルーナは悠斗を見た。


「私たち、諦めないわよね?」


「ああ」


 悠斗は頷いた。


「諦めるわけにはいかない。ここで負けたら、世界が終わる」


 悠斗は拳を握りしめた。


「もう一度……攻撃するぞ」


「ええ」


 五人は再び、アルヴィンに向かって攻撃を開始した。


 しかし――


 やはり、すべての攻撃が効かない。


 アルヴィンは五人を次々と吹き飛ばしていく。


「ぐあっ!」


「きゃあ!」


「うっ!」


 五人は地面に叩きつけられた。


「もう……だめなのか……」


 悠斗は意識が朦朧としてきた。


 体が動かない。


 魔力も、体力も、限界だ。


「このまま……終わるのか……」


 その時――


 ルーナが、悠斗の手を握った。


「悠斗……まだよ」


 ルーナは血を流しながらも、微笑んでいた。


「まだ、諦めないで」


「ルーナ……」


「私たち、ここまで来たのよ。今さら諦められない」


 ルーナは立ち上がった。


「みんな、立って」


 ルーナの言葉に、バルトロメウス、グラキエス、セレスティアも立ち上がった。


「もう一度……協力しましょう」


 ルーナは三人を見た。


「バルトロメウス、グラキエス、セレスティア。私たちの魔法を、一つに合わせるの」


「一つに……?」


「ええ。四人の魔法を同時に発動して、あの怪物の動きを止める」


 ルーナは決意を込めて言った。


「そして、悠斗が止めを刺す」


「でも、前にもそれをやって……」


「今度は違うわ」


 ルーナは悠斗を見た。


「前は、核を狙った。でも今回は……」


 ルーナはアルヴィンを見つめた。


「セレスティア、もう一度魔力の流れを見て」


「はい」


 セレスティアは目を凝らして、アルヴィンを見つめた。


「……あ」


 セレスティアは何かに気づいた。


「あの……頭の中央に、小さな光が見えます」


「光……?」


「ええ。それは……おそらく、アルヴィンの本来の魂です」


 セレスティアは真剣な表情で言った。


「あの光を守るために、体全体が黒月の力で覆われているんです」


「なら……」


 悠斗は理解した。


「あの光を解放すれば……」


「ええ。アルヴィンは、元に戻るかもしれません」


「わかった」


 悠斗は立ち上がった。


「じゃあ、行くぞ」


「ええ」


 四人は円陣を組んだ。


「では、魔法を合わせます」


 ルーナが宣言した。


「月の力!」


「影の力!」


「氷の力!」


「聖なる光の力!」


 四人は同時に魔法を発動した。


 四つの魔法が、一つに融合していく。


 銀色の月光、黒い影、青白い氷、そして聖なる白い光。


 それらが混ざり合い、美しい虹色の光となった。


「これが……私たちの力」


 ルーナは微笑んだ。


「行くわよ!」


 四人は、虹色の光をアルヴィンに向かって放った。


 光は彼を包み込み、動きを止めた。


「グオオオ!」


 アルヴィンは抵抗しようとしたが、四人の力に押さえつけられて動けない。


「今よ、悠斗!」


「ああ!」


 悠斗は地面を蹴った。


 最後の力を振り絞り、全力の跳躍。


 そして――


 アルヴィンの頭部に向かって、拳を振り下ろした。


「うおおおおお!!」


 悠斗の拳が、アルヴィンの頭部に直撃した。


 ドゴォォォン!!


 凄まじい衝撃。


 アルヴィンの体から、黒い霧が一気に噴き出した。


 霧は消えていき――


 やがて、アルヴィンは元の人間の姿に戻った。


「ハァ……ハァ……」


 アルヴィンは地面に倒れた。


 しかし、今度は死んではいなかった。


「……私は……」


 アルヴィンは呟いた。


「私は……何を……」


 アルヴィンの目から、涙が流れた。


「妻よ……娘よ……許してくれ……」


 アルヴィンは静かに目を閉じた。


 そして――


 動かなくなった。


「終わった……」


 悠斗は地面に膝をついた。


「ようやく……終わった……」


 五人は、疲労困憊していた。


 しかし――


 その時だった。


「ブラボー」


 ゼノンの拍手が響いた。


「素晴らしい。本当に、素晴らしい」


 ゼノンは五人を見下ろした。


「お前たち、よくぞアルヴィンを倒した」


「ゼノン……」


 悠斗は睨みつけた。


「お前が、すべての元凶か」


「元凶……か」


 ゼノンは微笑んだ。


「そうかもしれないな。確かに、私がこの計画を始めた」


 ゼノンは両手を広げた。


「黒月の儀式。世界を滅ぼす計画」


「なぜだ……」


 悠斗は立ち上がった。


「なぜ、世界を滅ぼそうとする?」


「それは……」


 ゼノンは遠くを見つめた。


「話せば長くなるが……聞きたいか?」


「ああ」


「では、話そう」


 ゼノンは語り始めた。


「私は、かつて月の女神を信仰していた」


 ゼノンの目に、遠い記憶が浮かんだ。


「百年以上前。私はまだ若く、ある村の神官だった」


「神官……」


「ああ。月の女神に仕える、敬虔な神官だった」


 ゼノンは静かに語った。


「私には、愛する妻がいた。美しく、優しい女性だった」


 ゼノンの声が、わずかに震えた。


「私たちは幸せだった。村人たちと共に、月の女神を信仰し、平和に暮らしていた」


「それが……なぜ……」


「ある日、村に疫病が流行った」


 ゼノンの表情が曇った。


「恐ろしい病だった。感染した者は、数日で死んでしまう」


「……」


「私は、月の女神に祈った。毎日、毎晩、祈り続けた」


 ゼノンは拳を握りしめた。


「『どうか、妻を助けてください』と」


「でも……」


「月の女神は、何もしてくれなかった」


 ゼノンの声が、怒りに震えた。


「私は、あれほど信仰していたのに。あれほど祈ったのに」


「妻は……死んだ」


 ゼノンは目を閉じた。


「私の腕の中で、苦しみながら死んでいった」


「……」


 悠斗たちは、黙って聞いていた。


「その時、私は悟った」


 ゼノンは目を開いた。


「月の女神は、偽りの神だと」


「違う!」


 ルーナが叫んだ。


「私は、偽りの神なんかじゃない!」


「黙れ」


 ゼノンは冷たく言った。


「お前は、人々を救わなかった。お前は、私の妻を見殺しにした」


「それは……」


 ルーナは言葉を詰まらせた。


「私だって……すべての人を救えるわけじゃ……」


「言い訳するな」


 ゼノンは叫んだ。


「神ならば、すべての人を救うべきだ。それができないなら、神など不要だ」


 ゼノンは両手を広げた。


「だから、私は決めた。この世界を滅ぼすと、私とにた境遇の仲間もできた」


「世界を滅ぼして……どうする」


 悠斗が尋ねた。


「新しい世界を作る」


 ゼノンは宣言した。


「月の女神のいない、新しい世界を」


「そんなこと……できるわけない……」


「できる」


 ゼノンは確信を込めて言った。


「私は、百年間研究してきた。月と、黒月について」


 ゼノンは天井を見上げた。


「そして、知った。黒月が、破壊の力を持っていることを」


「黒月……」


「そうだ。白い月が生命と秩序を司るなら、黒い月は破壊と混沌を司る」


 ゼノンは微笑んだ。


「ならば、黒月の力を利用すれば、この世界を破壊できる」


「そして……」


「破壊の後に、新しい世界が生まれる」


 ゼノンは力強く言った。


「月の女神のいない、完璧な世界が」


「そんな……狂ってる……」


 悠斗は呟いた。


「狂ってる?」


 ゼノンは笑った。


「ハハハ、そうかもしれないな。だが、私は本気だ」


 ゼノンは黒いローブを脱ぎ捨てた。


 その下には、筋肉質な体が現れた。


 そして――


 胸の中央に、黒い紋章が刻まれていた。


「これは……」


「クルエンタの実験によるものだ」


 ゼノンは胸の紋章に手を当てた。


「クルエンタは、血の錬金術師として優秀だった。彼は、黒月の力を人体に取り込む方法を研究していた」


「まさか……」


「そうだ」


 ゼノンは微笑んだ。


「私は、クルエンタの実験体となった。そして、黒月の力を完全に取り込んだ」


 ゼノンの体から、黒い霧が立ち上った。


 霧は彼を包み込み、形を変えていく。


「ゼノン自身には、もともと戦闘力はなかった」


 ゼノンは語った。


「私は神官だ。戦士ではない」


「でも、黒月の力を取り込んだことで……」


 ゼノンの体が、膨れ上がった。


 筋肉が隆起し、腕が太くなる。


 背中から、巨大な黒い翼が生えた。


 頭には、黒い角が生えた。


「私は、神をも超える存在になった」


 変身を終えたゼノンが、低い声で言った。


 彼は、もはや人間の姿をしていなかった。


 巨大な悪魔のような姿。


 全身が黒い鎧のような鱗で覆われ、手には巨大な黒い剣が握られている。


「これが……黒月の真の力」


 ゼノンは剣を振るった。


 ズバッ!


 剣が空気を切り裂き、衝撃波が五人に向かって飛んできた。


「うわっ!」


 五人は咄嗟に避けた。


 衝撃波は壁に当たり、壁を粉々に砕いた。


「やばい……」


 悠斗は冷や汗をかいた。


「あの一撃……直撃したら死ぬ……」


「さあ、来るがいい」


 ゼノンは剣を構えた。


「お前たちの力、見せてもらおう」


「くそ……」


 悠斗は拳を握りしめた。


 まだだ。


 まだ戦える。


 アルヴィンを倒した。


 なら、ゼノンだって倒せるはずだ。


「みんな、行くぞ!」


「ええ!」


 五人は、ゼノンに向かって突進した。


 悠斗が先頭を切り、拳を振るう。


 しかし――


 ゼノンは剣で悠斗の拳を受け止めた。


 ガキィン!


 金属音が響いた。


「ぐっ……硬い……!」


 悠斗は驚いた。


 ゼノンの剣は、悠斗の拳を完全に受け止めている。


「その程度か」


 ゼノンは冷笑し、剣を振るった。


 悠斗は吹き飛ばされた。


「うわっ!」


「悠斗!」


 ルーナが光の矢を放った。


 バルトロメウスが影の剣で斬りかかった。


 グラキエスが氷の槍を投げた。


 セレスティアが光の魔法を放った。


 しかし――


 ゼノンは剣を一振りしただけで、すべての攻撃を弾き飛ばした。


「無駄だ」


 ゼノンは宣言した。


「お前たちの攻撃など、私には届かない」


「くそ……」


 五人は歯噛みした。


「どうすれば……」


 その時――


 ゼノンが動いた。


 彼は信じられない速度で五人に接近し、剣を振り下ろした。


「やばい!」


 五人は散った。


 剣が地面を叩き、巨大な亀裂が走った。


「速い……!」


 悠斗は驚いた。


 あの速度……


「次だ」


 ゼノンは再び剣を振るった。


 今度は横薙ぎ。


 剣が空気を切り裂き、衝撃波が五人に向かって襲いかかる。


「月の盾!」


 ルーナは急いで結界を展開した。


 しかし、衝撃波の威力があまりにも強く、結界が砕け散った。


「きゃあ!」


 五人は吹き飛ばされた。


「ぐあっ!」


 悠斗は壁に激突した。


 体が痛い。


 骨が軋む。


「これは……やばい……」


 悠斗は立ち上がろうとしたが、体が言うことを聞かない。


「悠斗、大丈夫!?」


 ルーナが駆け寄ってきた。


「ああ……なんとか……」


 悠斗はルーナに支えられながら立ち上がった。


 他の三人も、満身創痍だった。


 バルトロメウスは肩を押さえている。


 グラキエスは膝をついている。


 セレスティアは杖を支えにして立っている。


「このままじゃ……全滅する……」


 悠斗は呟いた。


 グゥゥゥ……


 その時、悠斗の腹が鳴った。


「え……今……?」


 ルーナが驚いた。


「いや……その……」


 悠斗は照れくさそうに言った。


「腹減ってて……」


「今、そんな場合じゃ……」


 ルーナは呆れたが、すぐに笑った。


「でも、らしいわね」


 ルーナは荷物から、最後のパンを取り出した。


「これ、食べて」


「でも、これ最後の……」


「いいの。あなたが食べないと、戦えないでしょ」


「……ありがとう」


 悠斗はパンを受け取り、一口で食べた。


 すると――


 体に力が戻ってきた。


「よし……まだ戦える……」


 悠斗は拳を握りしめた。


「ゼノン、まだ終わってないぞ!」


「ほう」


 ゼノンは興味深そうに悠斗を見た。


「まだ戦う気か。その体で」


「ああ」


 悠斗は前に出た。


「俺は、諦めない。絶対に」


「愚かだな」


 ゼノンは剣を構えた。


「では、とどめを刺してやろう」


 ゼノンは剣を高く掲げた。


 剣から、黒い光が放たれる。


 光は空中で集まり、巨大な黒い球体となった。


「これが……黒月の力の結晶」


 ゼノンは宣言した。


「この一撃で、お前たちは塵となる」


 球体は、さらに大きくなっていく。


 直径5メートル、10メートル、15メートル。


 広間全体を覆うほどの巨大さ。


「まずい……」


 バルトロメウスが呟いた。


「あれを受けたら……間違いなく死ぬ」


「どうする……」


 グラキエスも焦った。


「逃げるにも……もう遅い……」


 その時――


 悠斗が前に出た。


「みんな、俺の後ろに隠れろ」


「え……」


「早く!」


 悠斗の真剣な表情に、四人は従った。


 悠斗の後ろに隠れる。


「悠斗……何をする気……」


 ルーナが尋ねた。


「わからない。でも……」


 悠斗は拳を構えた。


「あの球体を……殴る」


「えっ!?」


 四人は驚いた。


「無理よ! あんな巨大な……」


「でも、やるしかない」


 悠斗は決意を込めて言った。


「俺が、みんなを守る」


「悠斗……」


 ルーナは涙ぐんだ。


「無茶しないで……」


「大丈夫」


 悠斗は微笑んだ。


「お前が一緒にいるから、俺は負けない」


「悠斗……」


 その時――


 ゼノンが叫んだ。


「行け、黒月の滅球!」


 巨大な黒い球体が、五人に向かって落ちてきた。


「来る……!」


 悠斗は拳を引き絞った。


 全身の力を、すべて拳に込める。


 そして――


「うおおおおおおおお!!」


 悠斗は、球体に向かって拳を突き出した。


 ドゴォォォォン!!


 拳が、球体に命中した。


 凄まじい衝撃。


 悠斗の体が、圧倒的な力に押しつぶされそうになる。


「ぐあああああ!!」


 悠斗は叫んだ。


 骨が軋む。


 筋肉が引き裂かれそうになる。


「まだだ……まだ……!」


 悠斗は必死に耐えた。


 後ろには、仲間がいる。


 ルーナがいる。


 彼らを守らなければならない。


「うおおおおお!!」


 悠斗はさらに力を込めた。


 すると――


 拳から、銀色の光が放たれた。


「これは……」


 悠斗は驚いた。


 光は、悠斗の体を包み込んでいく。


「月の加護……」


 ルーナが呟いた。


「私の力が……悠斗に……」


 光は、さらに強くなっていった。


 そして――


 ついに、球体が砕け散った。


 バリィィィン!!


 黒い球体が、無数の破片となって消えていった。


「ハァ……ハァ……」


 悠斗は荒い息をついた。


「やった……」


 しかし、次の瞬間――


 悠斗の体が、前に倒れた。


「悠斗!」


 ルーナが駆け寄った。


「大丈夫!?」


「ああ……ちょっと……疲れた……」


 悠斗は苦笑した。


「でも……みんな無事か?」


「ええ、無事よ」


 ルーナは涙を流しながら微笑んだ。


「あなたのおかげで」


「よかった……」


 悠斗は安堵した。


 その時――


 ゼノンの声が響いた。


「驚いたぞ……」


 ゼノンは、わずかに笑みを浮かべていた。


「まさか、私の黒月の滅球を防ぐとは」


「ゼノン……」


 悠斗は立ち上がろうとしたが、体が動かない。


「もう……限界か……」


「ああ、そのようだな」


 ゼノンは剣を構えた。


「では、今度こそ終わりだ」


 ゼノンは、五人に向かって歩き始めた。


「くそ……」


 悠斗は歯噛みした。


 体が動かない。


 もう戦えない。


「このまま……終われるか!……」


 その時――


 広間の天井が、再び開いた。


「何!?」


 全員が驚いて上を見た。


 天井の向こうから、無数の光が降り注いできた。


 銀色の光。


 月の光。


「これは……」


 ルーナは驚いた。


「月の力……」


 光は五人を包み込んだ。


 すると――


 五人の傷が、徐々に癒えていった。


 疲労も、消えていく。


「すごい……」


 悠斗は驚いた。


「体が……軽くなる……」


「これは……」


 ルーナは空を見上げた。


「月が……私たちの想いに共鳴しているのね……」


 確かに、天井の向こうに白い月が見えた。


 月は、いつもより大きく、明るく輝いている。


「月が……」


 悠斗は立ち上がった。


「俺たちに、力を……」


「ええ」


 ルーナも立ち上がった。


 バルトロメウス、グラキエス、セレスティアも立ち上がった。


「これで……もう一度戦える……」


 悠斗は拳を握りしめた。


「ゼノン、まだ終わってないぞ!」


「……フン」


 ゼノンは鼻で笑った。


「白い月が力を貸したか。だが、それでも無駄だ」


 ゼノンは剣を高く掲げた。


「私の力は、白い月をも超える」


「それは……どうかな」


 悠斗は前に出た。


「俺たち、白い月の力を借りた。そして、仲間がいる」


 悠斗は振り返った。


 ルーナ、バルトロメウス、グラキエス、セレスティア。


 みんな、悠斗を見つめている。


「一緒なら、お前にも勝てる」


「愚かな」


 ゼノンは冷笑した。


「では、見せてやろう。真の絶望を」


 ゼノンは剣を振り下ろした。


 巨大な黒い斬撃が、五人に向かって飛んできた。


「みんな、魔法を合わせろ!」


 悠斗が叫んだ。


「ええ!」


 四人は同時に魔法を発動した。


 月の光、影の力、氷の力、聖なる光。


 四つの魔法が融合し、虹色の光となった。


 光は、黒い斬撃を受け止めた。


 ドガァァン!!


 衝撃が走る。


 しかし、虹色の光は消えない。


「押し返せ!」


 悠斗が叫んだ。


「うおおおお!!」


 四人は力を込めた。


 虹色の光が、黒い斬撃を押し返していく。


 そして――


 ついに、斬撃を完全に消し去った。


「なんだと!?」


 ゼノンは驚いた。


「今だ!」


 悠斗は地面を蹴った。


 月の力を借りて、さらに高く跳ぶ。


 10メートル、15メートル。


「うおおおお!!」


 悠斗は拳を振り下ろした。


 月の光を纏った拳。


 それは、まるで流星のように輝いていた。


「させるか!」


 ゼノンは剣で受け止めようとした。


 しかし――


 悠斗の拳は、剣を砕いた。


 ガシャァァン!!


 剣が粉々になる。


「なんだと!?」


 ゼノンは驚愕した。


 そして――


 悠斗の拳が、ゼノンの顔面に直撃した。


 ドゴォォォン!!


 ゼノンの巨体が、吹き飛んだ。


 彼は広間の壁に激突し、そのまま埋まった。


「ハァ……ハァ……」


 悠斗は着地した。


「やった……のか……」


 しかし――


 壁から、ゼノンが這い出してきた。


「グッ……まだだ……」


 ゼノンは血を流しながらも、立ち上がった。


「まだ……終わらない……」


「しつこいな……」


 悠斗は歯噛みした。


「みんな、もう一度……」


「ええ!」


 五人は再び、ゼノンに向かって攻撃を開始した。


 そして――


 黒月教との最終決戦が、本格的に開幕した――


みなさん、ルーナです。


第15話、いかがでしたか?


アルヴィンとの戦い……本当に苦しかったわ。でも、みんなで力を合わせて、なんとか乗り越えることができました。


そして、ついにゼノンとの直接対決が始まりました。


彼の過去を聞いて……正直、胸が痛みました。私が、彼の妻を救えなかったこと。神として、すべての人を救えなかったこと。それが、こんな悲劇を生んでしまったなんて……


でも、だからといって世界を滅ぼしていいわけがないわ。


悠斗は、最後まで諦めなかった。ボロボロになっても、仲間を守るために戦い続けた。


私も、彼と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がするの。


次回、いよいよゼノンとの最終決戦が本格化します。


果たして、私たちは世界を救うことができるのか……


どうか、最後まで見守っていてください。


月の光が、みなさんを照らしますように――


ルーナ

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