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3. まさか、こんなことになるなんて……

 姫屋敷瑠璃花(ひめやしきるりか)はオド子をいじめていた。


 オド子こと、影沼忍(かげぬましのぶ)は、絵に描いたような陰キャだった。

 成績は良かったが、ひっそりと目立たず、いつもオドオドしている様子から、オド子、という呼び名が定着している。

 最初に忍をオド子と呼んだのは、瑠璃花だった。


 瑠璃花がいじめればいじめたぶんだけ、オド子の前髪は長くなり、今ではすっかり顔を覆い尽くしている。そんなオド子を見るたびに、瑠璃花は苛立った。

 長くなっていく前髪が、自分を拒絶しているように見えたのだ。

(貞子じゃあるまいし。何よ、言いたいことがあるなら言えばいいじゃない。ほんっとムカつく子)


 そうして日常的にオド子をいじめてはいたものの、弱って道端に落ちた虫を爪先でつつくような感覚で、瑠璃花はオド子をいじめていたのだ。

 オド子いじめは瑠璃花にとって、あくまでストレス発散に過ぎず、オド子に怪我をさせようとか、ましてや命を奪おうなどとは思ってもみなかった。


(まさか、こんなことになるなんて……)

 最上階の階段踊り場から、瑠璃花は騒ぎを見下ろし、呆然としていた。

 取り巻きの桜崎柊(さくらざきひいらぎ)と江川くるみも、瑠璃花の背後で息を飲んでいるのが分かる。


 昼休み、オド子を無理やり屋上ドア前の踊り場に連れ出した三人は、オド子を取り囲んでいじめていた。

 朝から機嫌の悪かった瑠璃花は、ついヒートアップして、手芸用のハサミでオド子の髪を切ろうとしたのだ。

 泣きながら逃げようとしたオド子は、あっという間に足を踏み外し、真っ逆さまに階段を落ちていった。


 階段から落ちて倒れたオド子を、大勢の生徒達が取り囲んでいた。


(大怪我をしたかもしれない。いいえ、もしかすると死んでしまったのかも――)

 瑠璃花の手が、小刻みに震えていた。

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