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19. 独占スクープ

「だからフェイクニュースを拡散させるなとあれほど」

「フェイクじゃないよ。わかりやすいようにドラマティックな手法で書いただけだよ」

「話を盛ってると認めたな」


朝から明日見と誠が言い合いになっていたが、それも恒例の風景と化していたので、マーガレッタは気にすることなく、くるみに訊ねる。


「朝から何の騒ぎなんだ?」


いつもなら、登校してくる生徒が穏やかにさざめいているはずの、朝の学園は騒然となっていた。


教室棟一階にある掲示板の前には人だかりができている。

一般の告知を押しのけるように、百峰学院新聞が貼られているのだ。

生徒達は、その記事に注目している。


時代錯誤!

閉じ込められた姫を、勇敢に救出、薔薇の騎士!


というゴシップ記事の臭いが炸裂しているタイトルの新聞には、扇状的な文言が踊り、薔薇の花びらの中を走る、華麗なマーガレッタと瑠璃花の姿を写した写真まで添えられていた。

騒いでくださいと言わんばかりの記事の書き方だ。


「家庭というのは密室なんです。軟禁や結婚の強要なんて、密室でされたら誰も手も足も出ないじゃないですか。公表してしまえば、結婚の強行なんてできなくなりますよ。ペンは剣なのです!」


鼻息の荒い明日見を見て、彼女なりに瑠璃花の境遇を何とかしたいと思っているのだろう、と思うと、くるみの胸は熱くなった。


くるみはそっと、生徒達の騒ぎを眺めているマーガレッタと、その隣に立つ瑠璃花に視線を移した。


大立ち回りの救出劇の後、忍は瑠璃花を自宅に連れ帰った。

くるみの本心は、自分こそが瑠璃花を匿いたいと思ったのだが、それではくるみの父親の立場が悪くなるだろう、という皆の意見に、ただ唇を噛んで沈黙するしかなかったのだ。


あれから、忍と瑠璃花の間でどんなやりとりがあったのか、くるみは知らない。


けれども、二人並んで、まるで以前からの友人のように登校してきた姿に、安堵と同時に、複雑な思いを抱いていた。

(結局、自分は何もできなかったのだ――)

そんな思いが、くるみの心を重くしていた。


忍と瑠璃花が一緒に登校してきた姿に、瑠璃花のいじめを知っていた生徒は驚愕し、知らなかった生徒は、掲示板の百峰学院新聞に驚愕していた。


騒ぎを聞きつけたのか、幾人かの教師が駆けつけ、やがて、生徒会長、緑川さやかが副会長の黒木隼人を伴って現れた。

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