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1. 華麗なるマーガレッタ・バーデット・オブライエン参上
ぱっちりと目を開いたオド子を見た生徒達は驚いた。
強い視線、揺るがぬ意志を秘めた口元、そして、まるで手を取られるのが当然のように、間近の男子生徒に差し伸ばされた手。その一連の動作全てに、堂々とした風格が満ちていたからだ。
思わず手をとってしまった男子生徒、新條誠は、成り行きでオド子を助け起こす事になった。
「ありがとう」
体を起こしたオド子が誠ににっこりと微笑みかけると、周囲にどよめきが起こる。
顔を隠していた長い髪をかきあげると、オド子は堂々とその素顔を晒した。
誠は、初めてオド子の顔を見た。
これまで、オド子の顔は長い髪に覆われて、ホラー映画の貞子のように隠されていたのだ。
(オド子なのに、オド子じゃないみたいだ)
誠の驚きは、的を射ていた。
今、オド子の中には、大貴族の悪役令嬢、マーガレッタ・バーデット・オブライエンの魂が宿っていたのだ。