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第二十六話 一人を慰めたのはあなた

「人はどうして愛を求めるのだろうね」


 久しぶりに戻ってきたロス様はそんなことを、呟いていた。

 妾はぎょっとしてロス様を見やると、妾の頭を見たようでロス様はてへ、っと笑っていた。

 睨み付ければ肩を竦めた。


「愛がなければ生きていけない。君でさえそうだった」

「そうね、ホモの愛でいっぱい」

「それだけじゃない。君はサリスへの愛に目覚めつつある」

「人から言われるとすごうく恥ずかしい!」


 やめてほしくて睨み付ける。

 今はとくに領地のお勉強中なのだから、集中力を掻き乱すのはやめてほしいわ。


「僕はね、恋も愛も縁遠いんだ、だって誰も僕を知らない」

「? 知ってるじゃない、ロス様を。ロス様は神様だもの、みんな何もかも知っている」

「ううん、僕の声が届くのは君だけだよイデアローズ」


 ロス様はこそりと耳打ちする。


「だから君がお気に入りなんだ」


 *


 街に暫くして、魔物の群れが街を襲いに向かってくると報せが広がった。

 妾は聖女として戦場に駆り出され、その補佐でオズもそばにいる。

 オズは真っ青な妾を心配してくれていた。


 騎士団は討伐してくれる冒険者のサポートで忙しく。

 とにかく街の近辺を魔物狩りするばかりの日々が続く。

 やがて冒険者の一人がミスをして怪我を受けそうになったところを、アシュが庇ったと報せが届いた。

 妾は慌ててアシュの元に辿り着き、アシュを手当するも意識が戻らない。

 身体だけは綺麗な身体になっていくのに、アシュの意識が戻らない。


 アシュは教会送りになり、しばらく看病をオズに任せる。

 妾には他に怪我を治さなければならない人達がたくさんいたから。

 悔しい、こういうとき、たった一人を選べない。

 アシュが大事だからいさせて、って言えたら良いのに。


 全てが終わって、教会に顔を見に来てもアシュは意識が戻らない。

 ルルは自分が呼びかけても駄目だと項垂れていて、どれだけ心臓が潰されそうなのだろうと同情した。

 ひどい男ね、好きな人泣かせるなんて。


 やがて意識が戻り、アシュは妾とルルに笑いかけた。


「しばらく、ルルの元にいる。構わないかねローズ」

「いいわよ勿論。ルル、このひとたっっぷり叱ってやって」

「任せてください、奥様」


 ルルはやっと安堵して幸せそうに笑う。

 妾は邸宅に戻り、なんとなく一人を感じる。

 メイドや執事はいるけれど、寂しいな、と感じていた。


 窓にこつん、と何かが当たる音。


「お嬢! 大丈夫ですか!」

「サリス……」


 窓を開けると、サリスが木の枝に腰掛け、花束を妾に向けて。届かないと知るとちょっと退いてと告げてから退いた瞬間、窓辺に投げ入れた。

 華麗な薔薇の花から香りが広がる。

 色は黄色い薔薇だった。


「お嬢、コークスが退院するまで毎日きます! そしたらお嬢寂しくないでしょ!」

「……なんで、そんなに。妾に尽くしてくれるの」

「お嬢がだいだいだいだいだああいすきだからです! 俺のお嬢泣かせやがってあの野郎! お嬢もお疲れでしょう、しっかり寝て休んで! ポプリもおまけしておきましたんで!」

「サリス、中に入れば良いのに」

「玄関よりこっちからのが。私用の時は安心するんです」


 サリスはそれじゃあ!! と木から器用にさるみたいにおりていって、そそくさと去って行く。

 恩着せがましいわけでもなく、したいからした、というような行動。

 妾は花束を拾い、中に詰まれていたポプリを手に取る。

 羊のマスコットに詰め込まれている様子だった。


「……ひどいひと」


 それはサリスに向けたのか、アシュに向けたのかは判らない。

 ただサリスは雨の日も嵐の日も、どんなに忙しくてもアシュが退院する日まで毎日来てくれて。花を渡しに来てくれた。


 花を飾るのが楽しみになってしまう。嵌められたわ。

 オズが遊びに来てくれたとき、「綺麗な花ですね」と笑ってくれた。


「そうね、手放せなくなっちゃう」


 *


  アシュの退院した日とサリスが花を届けに来る日が被った。

 アシュがサリスに気付き窓を開くと、サリスはアシュに食ってかかる。


「てっめ、弱々騎士!」

「いやはや面目ないね。ローズに届け物かね」

「ああそうだ! お嬢励ましたくて持ってきたんだ、今日の花は百合にコスモスに」

「センスがないな。紅い薔薇を選べば良いのに」


 アシュの軽口にサリスが怒っている。

 妾は笑ってアシュの隣に並んで窓から声を掛けた。


「サリス、今度何処かへ出掛けない?」

「え? お、お嬢!?」

「今までのお礼よ」

「そいつはずるいね!!!」

「きゃあああ?!」

 

 ぬるんっとカーペットから現れたのはガニメデ様。

 ガニメデ様は真っ赤な薔薇を何十本も手にして、妾に向けると妾はアシュにこそっと問う。


「あれがセンス良い花束?」

「私が悪かった、プレゼントする持ち主によるね」

「コークス! ボクがセンスわるいとでも! ローズちゃん、ボクともお出かけしようよ! どうだね、世界のドレス集めた宝石コレクションでも!」

「お嬢はそんなのより、ピクニック行きたいですよねー!?」

「なんだ童貞どもの発想だな」

「コークス! そこになおれ!」

「殿下はともかく、サリス、ちょっとそれは大人のするデートじゃない……」

「で、でも、天気良い日に食べるサンドイッチ最高ですよ!?」

「発想が子供なんだよなあ……」


 ぎゃいぎゃい騒ぐ三人に賑やかさが戻った気がして思わず妾は噴き出してしまい。

 妾はアシュに尋ねる。


「二人のどちらがおすすめ?」

「君が幸せになれるほうかな。どちらもどちらだ、大差ない」

「差はあるよ!! ボクのほうが全女性がよろこぶぞ!」

「着せ替え人形扱いのなにが喜ぶんですか! 俺の方がいいよね、お嬢!? お嬢!?」

「ふふ……」


 楽しくなってきちゃった、妾はにこりと微笑んだ。

 

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