第二十四話 邪教徒(逆かぷ)
その日以降、ソレイユと社交場で出くわすと妾より、殿方に視線を向けているソレイユ。
けれど今までと視線の色が違っていて、必ず仲の良さそうな二人組で話している男性を見かけて、静かに嗤っている。
もしかして?? とは思うけれど、妾はそれよりもアシュのサポートに忙しかった。
アシュの顔は広く、敵も少なくはない。
社交場で下げようとルルの話をしようとする奴ら相手を目の前に、わざわざいちゃついてみせるのだ。
それが妾にとってのルルとアシュの守り方だった。
アシュは女性がメインで、あくまで男性は遊びとさせなければいけない。
毎回帰宅するとアシュはお礼に宝石を買ってくれて、馴染みの店が出来ている。
それくらい感謝されていた。
この日はとくにルルがいたから、ルルが警護をしていた。
教会の関係者も呼ばれていたので、それに倣ったのだろう。
妾はルルと顔を合わせると、微笑み手をひらりと。
ルルは妾に気付くと会釈し、少しだけ安心した様子だった。
ルルに先に席を外すように仕向けて、アシュと一緒に休憩するという体裁をとる。
実際の所はアシュと別れて、アシュはルルの元に。妾はバルコニーに向かって、妾一人休憩するだけなのだけれどね。
アシュは嬉しそうにルルのもとに向かい、妾はバルコニーで夜空を見上げる。
「なるほど、そういうことか」
この日は殿下も参加していたらしく、バルコニーの後ろから殿下がやってくる。
まともな登場の仕方に驚いてしまった。ここのところ地面からにゅるんと出てばかりだったから。
「誰にも内緒よ、気付いたことは」
「どうりで君が頷かないわけだ。君はそれでいいのか。いいように使われてる」
「そんなのお互い様よ。素敵なものもみれている」
「素敵な物?」
「真実の愛よ」
真実のホモというわけにはいかず、妾は手にしていたグラスを傾け、飲み物を口にする。
殿下は不思議そうに腰に手をあて、つかつかやってきた。
「君は愛を信じる?」
「そうよ」
「嘘だ。君はボクからの愛に応えないじゃないか」
「殿下のはいかさまっぽいです」
「手厳しいね。真実の愛はどんなものなんだね、君にとって」
「そうね。とても暖かくて、見てるだけで幸せになれる。とても嬉しくて、役に立てるのが」
「それはコークスへの恋とは違うのか」
「恋ならルルとお幸せに、なんて思わないでしょう?」
「そう、そうだね。それなら確かに恋ではなく、愛か。面白い形をしている」
ガニメデ様は会場を見てから妾を見つめ、ふ、と微笑んだ。
「美しい物は好きだ。ボクは君たちの愛は好きだな」
「なら、内緒ね」
「ああ暴くなんて下品な真似しない。とはいっても、君に求婚もやめない」
「お戯れを」
「楽しいんだ、君とのじゃれあいは最高に。本当にお嫁さんにしてもいいくらいにね」
ウィンクされても笑ってしまう。ガニメデ様には不思議な感情がある。
この方の恋や愛を本気に出来ないけれど、嫌いになれない。
いや、嫌いは嫌いだけれど、喧嘩仲間みたいなものね。もう。
「君の美しさはボクを前にしても消えない物か。少し気になるよ」
「ガニメデ様を?」
「そう。ボクの陰りに君は消えないか。君がほんとに消えなかったら。そのとき、ボクはきっと君を手放せなくなるから。気をつけて」
ガニメデ様は妾の髪に手を寄せて微笑み、風で花びらが髪に乗っていたのかとってくれた。
ガニメデ様が何処か寂しげだった。
*
会場に戻ろうとしかけているところにソレイユと出くわす。
ソレイユの声に、思わず反応してしまう。
「ルルアシュ……アシュルル……」
「アシュルルよ」
「! イデアローズ! この邪教徒!」
「そう、そうなの、貴方も目覚めた人なのね。だけど邪教徒はそちらよ。アシュルルこそ正義。他の人だと受けのアシュ様がルル相手に攻めになるのがいいんじゃない」
「何を言ってるの!? ルル様は腹黒攻めにちがいないわ、地雷よそんなの! 今までどんなかたも組み伏せてきたコークス様が受けるのがいいんじゃない!」
「そう……妾と貴方はわかり合えないわね、永遠に」
「貴方はわたくしのずっと敵よ! 未来永劫!」
むーっと妾とソレイユはにらみ合って、会場に向かって歩いていきながらにらみ合った。
「貴方につきまとっているあの男」
「サリス? 彼がなあに」
「あの人もきっと腹黒攻めよ」
「! サリス攻め地雷ですう!!! 解釈違いも甚だしいわ! サリスは天使のように愛らしいのよ!?」
思わず大声で騒ぎ、言葉を理解されなかったからよかったけれど。
その場に戻っていたアシュに大笑いされた。
はっとして妾はアシュの笑い声に真っ赤になっていく。
旦那様に聞かれちゃった……。




