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第十九話 次の恋、になれる瞬間っていつかしら

 別荘から戻れば帰りかけのルルと出くわす。

 少しだけ暗い顔をしていたので気になって問いかけてみる。


「どうしたの? アシュが何かした?」

「いいえ。奥様の気遣いで良い思い出ができました」

「思い出って……恋人にならないの?」

「奥様、少しだけ。二人で話せませんか」


 ルルは儚い笑みを浮かべるので、これは守りたくなるとアシュの気持ちが伝染する。

 妾は頷きサリスに案内を頼み、そのまま馬車にもどって城下町の以前秘密の話をしたサリスが教えてくれた店に向かう。

 ルルと妾は紅茶を頼み、サリスは疲れていたのかワインとチーズを頼んだ。


「貴方もきちゃうのね」

「この男が安全だとは俺はまだわかんねえっすからね」

「まあ、聖騎士様相手に」

「いいんですよ。奥様、私はいまいち次の恋に踏み出せないのです」

「どうし……ああ」

「その様子だとご存じなのかな? 私の妻は亡くなりました。病にかかっているのを気付いてあげられなかった。また、同じことが起きると怖いんです」

「……気持ちの切り替えができていないのね」

「それに。世間の目も怖いんです。それはきっとアシュもそうなのでしょうね」

「ふふ、でも愛称で呼ぶくらい仲良くなった」

「奥様、からかわないでください」


 妾は一度深い恋をしたひとの後の姿という、初めての出来事に困惑する。

 深い恋のあとに、新しい恋ってきっと難しいのよね。

 初めての恋ですら妾はきっと怖くなってしまうから。失った後にまた失うかも知れない恋をするのは、怖いはず。


 それでも。


「ルル。あのね、人生は一度きりだから。好きなことしないとだめ。物事にはタイミングっていうのがあってね。いいなって思ってた物もいつかなくなる」

「……そうですね」

「旦那様の恋心も永遠ではないかもしれない。なら、噛み合っているうちに。楽しむのもいいとおもう。誰か責めてきたら妾の名をだしなさいな。あの人は妾の旦那様だから、って」

「そうすればゲイじゃないと証明できるって?」

「そう、貴方は遊びに付き合わされたんだ、圧力がかかったんだって顔をすればいいの」

「嘘が、いやなのです」

「……驚くほど、愚直な人ね。きっと、アシュはそういうところがいいのね」


 妾はルルの頬に手をあてて慰めて微笑む。

 横でサリスが、あー!!!あー!!!っと指さしていて五月蠅い。


「大丈夫よ。そのうち、真実の愛って証明される。さっきのがいやなら、妾が婚約破棄になったとき。彼は貴方を選び取ったと、宣言すればいいじゃない」

「……それまで、勇気がでるかどうか」

「そこは貴方の問題よ。貴方が勇気を出してまでアシュが欲しいなら協力する。でもね、何も変化したくないけどあの人が欲しいなんて都合がいいことはいやよ」

「ありのままは、だめですか」

「ううん。ありのままだけじゃだめってこと。彼のために成長するのも、大事」

「奥様は手厳しいですね」


 ルルは笑って有難う御座います、と深呼吸した。

 それから妾たちとルルは別れて、ルルは教会に帰っていったのだけれど。

 サリスにちらっと顔を見つめる。気付かれないように。



(いつまでも、そうね、あるとおもっちゃいけないわ)


 だから、妾も。いつかなにか、変わる必要が、あるのでしょうね。


「お嬢?」

「サリスは、妾のこと好きなの?」

「ぶっふ!! そ、そりゃ!! 突然なんです!! とってもとっても大好きですよ!!」

「いつかその恋は失う物だとしても?」

「そんなのそのときはそのときでしょ! 俺は刹那主義、今を楽しむ。今の俺はお嬢が好き、だからそれだけでいいんです。シンプルがいいんです」

「……そう」

「あ、お嬢! 顔紅い! 可愛い! 少しは届きましたかあ?! 俺の気持ち、なーんて……」

「そうね、少しは、きたわ」

「え!????????? お、お嬢!? いま、なんて……なんて!!! ちょっとお、こっち見て言ってクダサイよ、なんで顔隠すんですか!!」

「う、五月蠅いからよ。ほら、帰るわよ。もう。見ない振りしたら、金貨一枚あげるわ」

「お嬢。駄目ですよ、見せて顔」


 サリスがぐいっと妾の肩を押すから妾は振り返る状態になってしまい。

 真っ赤な顔を晒してしまい、眉を八の字にして涙目になる。

 サリスは釣られて顔を真っ赤にして、時が止まる。


「……やめてっていったのに」

「お、じょう」

「ばか」

「なんで、そんな……普段の軽口じゃないですか」

「貴方にはね」

「お嬢! もしかしてほんとに!!!」

「もう知らない!」


 妾はつかつかと馬車に乗るとばたん!!と勢いよく扉を閉めた。

 窓からべーっと舌を出せば、サリスは初めて見る破顔をしていた。


 


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