表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/30

第十三話 リーゼルグ先生のやすらぎ

 パレードとパーティを終えて日が経ち、リーゼルグ先生のところにまた通うこととなる。

 教室に向かえば、リーゼルグ先生が鼻歌を口ずさんでいた。

 馴染みのあるメロディだけど有名な歌じゃない。妾が幼い頃から口ずさんでいるメロディだ。

 どうして先生が知ってるの? 妾のでたらめなメロディ。


「かのひとは思い出に生きてるね」

(思い出?)


 後ろからひょこっとロス様が覗き込んで、懐かしむような眼差しでリーゼルグ先生に指さした。


「君はこの人が何者か知ってる?」

「先生じゃないの?」

「この人はかつて勇者パーティにいたひとだ」


 まあ有名な方なのね。

 でも記憶の無いロス様がどうしてそれを知ってるのか不思議でロス様を見つめると、ロス様は肩を竦めた。


「僕にも何が何だか。懐かしい感覚がするのだけは分かるよ。起こさなくていいのか?」

「ああ、それはそう。鼻歌歌いながら寝るなんて器用なひとね」


 リーゼルグ先生を揺すると、身じろぎする。


「先生、起きて、先生」

「おお、おめでとうございます、ローズ姫。ああ、そのローブとてもお似合いだ」

「有難う、先生のおかげよ」

「お前の妄想が世界を救うなんて皮肉な話だな」


 先生は寝起きだからか口調が少し乱雑で、目が合うとにいと笑いかけてくれた。

 リーゼルグ先生は顎をさすりながら立ち上がる。


「先生、前に勇者のパーティにいたって本当?」

「誰から聞いた?」

「神様」

「じゃあ隠せないな。そのとおりだ。傭兵のつもりだったんだが、気付けばパーティの一員でしたよ」

「ねえお話し聞かせて、どんな敵をやっつけたの」

「そうですね、歌の下手なセイレーンに、動きが馬より速いゴーレムとかですかね」

「まあ素敵。ふふ、先生きっと立派な魔法使いだったのね」

「そうですね、立派だからこそ足を踏み外したのでしょう」

「どうして?」

「僕は――いちど、世界の滅亡を願ったことがあるんですよ」


 リーゼルグ先生が妾の髪の毛をしゅる、と指先に絡めてからキスをする。

 指先に絡み、キスされた髪の毛を見やり、妾は瞬く。

 妾の瞬くだけの反応を見て、リーゼルグ先生はくくっと喉奥で笑う。


「ローズ姫、清くなった君はこんな大人を理解しようとしちゃだめですよ」

「清くないわ、妾、貴腐人だもの」

「……ひどいんだよな、その仕組みが」


 リーゼルグ先生は呆れて、授業に挑もうとする。

 午後の日差しが教室に入り込む。


「リーゼルグ先生は、いいひといないの? イイ人失ったから滅亡ねがったの?」

「僕が愛するのは昔からたったふたつですよ」

「なあに」

「歌と、己の才能です。完璧すぎて自分が怖い。さて、雑談良いですかもう? 締め切りますね」

「もうちょっと付き合ってくれてもいいじゃない」

「そのぶんだけ、貴方の授業が長くなるだけですよ」

「けち!」


 ぷくーと膨れると、リーゼルグ先生は和やかに微笑み、妾の頭に手をおいた。


「ローズ姫、君には期待してます」


 *


 学校から出ると、町中にサリスを見つける。

 馬車を止めて貰って、サリスの方向に歩いて行った。

 サリスは町中で商談を進めていて、値段の確認をしている様子だった。


「なにしてるの、サリス。ごきげんよう」

「お嬢!? こんな掃きだめでなにしてるんですか!」

「まあ。貴方を見かけたからきたのにずいぶんな挨拶ね」

「いや掃きだめの中で特別輝いて見えていつもより美しさがやばいってことです」

「もう。お上手ね。なにしてるの」

「魔術書を引き取ってくれと言われてるんですが、からっぽでね」

「からっぽ?」

「こういった魔術書には、普通魔力が込められているんです。それで使用済みか未使用か判る。これはだけど、限度額まで魔力を使い切ってて、空っぽの本だ」

「内容がまずいよな、と話し込んでいたとこだお嬢ちゃん」


 商談相手のおじさまが妾をみるなりでれーっとしたので、サリスが本で頭をばしばしなぐる。

 揉めている間に本を手に取り、タイトルを眺めてみる。


「滅亡の書……不吉な本ね」

「一冊だけじゃないんだ、だいたいの滅亡の書と似た内容のものが魔力なしだ」

「リーゼルグ先生に聞いてみれば? 魔法にお詳しいでしょう?」

「お嬢、あいつは信じない方が良い」

「どうして」

「この本は、全部。あいつから買い取った本だ。本の持ち主なら、これらを使ったことがあるってことだろう」


 そういえば先ほど、滅亡を願ったことがあるなんて言っていた。

 考え込んでいれば、サリスが小さく呟いた。


「何に絶望したか判らないけれど、今時こんな本を使うってすげえ思春期なかんじじゃないっすか、あの人だいのおとなで……痛々しい青春。多分自宅にロス神様のアクセサリーいっぱいもってたり、ドクロとかもってるタイプですね」

「そういうものなのかしらね」

「お嬢ッそれより、偶然出会えたしこのまま俺とお仕事デートなんてそのっ」

「仕事中に遊ぶのはだめよ。あ、この本素敵、この本かっこいい男魔法使い特集ですって!! まあ豪華なポーズ集! 妄想捗る~」

「お嬢の前でホモには勝てないな~~~~~~~~~~」

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ