00 はじまり
幼馴染の魔法使いが死んだ。
彼女はまだ、21歳だった。
公のニュースだと自殺とだけ書いていたが、彼女は自分に睡眠魔法をかけ、部屋を花で埋め尽くし、狂乱の魔法をかけた使い魔に自分を食わせたらしい。
明るく優しい子だった。
上級魔法使いを目指し、努力を惜しまない子だった。
小さいときから魔法使いになったその時まで
ずっと隣にいた子だった。
「お疲れ様」
少し血の残った、部屋の中の花畑。
あきらめられない。そう聞こえた気がした。
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ある夜、私はいつも通り仕事をしていた。
次期・魔法使い育成学校の教材作成という、少し面倒な作業だ。
この世界は魔素を中心に回っている。
魔素は自然や生命から生まれ、その魔素を使ってまた自然を豊かにし、生命たちは進化を遂げる。
そんな魔素を唯一自分で操ることができるのが、我々魔法使いである。
体内に巡らせ魔力という力に変化させたり
魔素を読み、多種の生物と会話することもできる。
魔素を使いどれか一つでもできる者は魔法使いになれる選ばれし者と呼ばれ、なれるかどうかは生まれたとき既に決まっているとも言われていた。
そんな魔法使いにも生まれ持った才能や得意なことなど個人差はもちろんあり、それにより階級もある。
初級魔法使い 全体の80%
魔素を使い、一つ以上の魔法を使える者
生まれ持った力のみでなれる・属性魔法を1つ使えること。
職業としてではなく、一つの資格として保持している者がほとんど。
中級魔法使い 全体の19%
魔素を使い、3~5つの魔法を使える者
属性魔法+精神魔法や特殊魔法など学習しなければできない魔法を使えること。
もしくは複数の属性魔法を使用できること。
難易度がかなり高く、中級になるためには試験を受けなれけばならない。
上級魔法使い 全体の1%
魔素を使い、全属性魔法+習得可能な魔法すべて使用可能な者
他30名の中級魔法使いからの推薦がなければ試験すら受けることができない。
国に認められた存在であり、国を守るために戦闘員として呼ばれることもある。
才能がなければなることができない狭き門。
『上記三階級の魔法使いを基準とし、例外も含めても魔法使いは人口の10%にも満たず...』
突然コンコンと、ドアがたたかれた。
「相変わらず口から全て漏らしていますね、」
そう言って笑うのは私の先輩魔法使いのルイさん。
古代魔法でも唱えているのかと、と冗談を言いながら珈琲を机に置いた。
『一応わたしも上級に推薦していただいた身なのに、魔素も使わない雑務とは…』
文句を垂れるとルイさんは優しく頭を叩き、シーっと指を立てた。
「ここだけの話、その資料は国のお偉いさんのお子さん達に使われるらしいです。
だから本当は上級に頼みたいと…。これは良くない大人の事情なんですね。フフフ。」
そんなこと知らないけど、ルイさんは不思議と私のイライラを吸い取ってくれた。
私は23歳になり、ルイさん含む中級魔法使いの推薦により上級試験を受けた。
世間的にはかなり早い段階での試験だったが、無事に試験は合格。
晴れて、狭き門で幻とも言われた上級になることができた。
まぁ認定式がまだだから、まだ扱いは中級なんだけど。
「それにしても、上級の説明欄はかなり辛口なんですね?」
そういって私の資料を指さされ、一気に顔が熱くなる。
『これはっ…!私が習った教材を参考にしているだけなので…!』
そう大きな声で否定するとルイさんはふふっと笑って、
すこし溜めた後、静かな声で私に言った。
「合格おめでとう。本当に頑張りましたね。」