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黎明っ!我ら皆望南生組!

 

 ナツキ達が破壊級魔獣(アポリュオンビースト)の《A-001》を討伐してから一週間が過ぎた。

 周辺の建物に甚大な被害があった今回の事件だが、周辺住民の負傷者は僅か数百名で死者はゼロという歴史的な勝利を収めた。

 ナツキの宣言通り、全ての者達が生きて夜明けを見ることができたのだ。


 そしてそんな中、光沢輝く高層ビルに位置するアイゼンドラッヘ社にて、そのトップの椅子に座る女性は机に置かれた一つの封筒を手に取った。


「社長、それはなんですか?」

「ああ、これはナツキ達が部隊名を新しくしたいと言いだしてな。そう易々と変えることはできないのだが、《A-001》を倒した褒美としてせがまれてはこちらも拒否できまい」


 アイゼンドラッヘ社は対魔獣討伐企業の中でも指折りの大企業。そこに属する討伐隊の名は世間的にも希望の源であり、簡単に名前を変えることはできない。

 だが、ナツキ達が新しく提出した部隊名を見た社長は気が変わったのか、彼女達の意向を汲むことにした。


「確か今は『無名(ナモナキ)組』でしたよね。ナツキ、モモ、ナキの頭文字を取って無名(ナモナキ)。いい名前じゃないですか、変えるのもったいないですよ」

「そうだな、私としてもなんでこんな名前になったのか不思議に思うよ」

「なんて部隊名になったんです?」

「ああ、それは──」


 ◇◇◇


 光り輝く晴天の元、ナツキ達はアイゼンドラッヘ社より新たな仕事を請け負っていた。

 今回の標的は、何故か人を襲わないと報告があがっている魔獣の調査らしい。

 ナツキ達はその魔獣がいるという廃墟へと向かうため、現地での集合を約束していた。


「お、来たようだな」

「おまたせー!」


 そう言って手を振り、先で待っている二人の元へと駆けつけるナツキ。


「先輩遅いですぅー! モモもう一人で行くところでしたよー!」

「そうだとしても私を置いて行くなよ、二人だっただろ」

「ごめんごめん! 前回ので汚れた服のクリーニングがまだ終わってなくて、何着ていこうか迷ってたんだ。私は制服でいいって思ったんだけど、ミナミが女の子はオシャレしなきゃダメだって言うからさ」

「それは災難だったな」

「どーりで今日の先輩は可愛いわけですー!」


 モモは相変わらず、ナツキのことを先輩と呼ぶ。

 ナキはナツキが私の名前を挙げても動揺しなくなり、その存在を受け入れ始めているようだった。

 そしてナツキ自身も、今までよりもっと明るく元気になっているように感じる。

 その目に淀んでいたはずの深淵の暗がりも、いつの間にか淡い光が灯されていた。

 みんな、あの《A-001》を討伐してから結束力が上がっているような気がする。


「そうだね、今までで一番いいチームになってる気がする!」


 そう言ってナツキは後ろを振り向き、こちらと目を合わせた。


「でもそれは、ミナミもでしょ?」


 ──!? ナツキ、私が見えて……。


「さーて、今回もお仕事? 任務? 依頼? 頑張りますかー!」

「何でもいいだろう。それに、私も人を襲わない魔獣というのには少しばかり興味がある」

「ですですー! もしかしたら平和への足掛かりなるかもですし!」

「そうだね。じゃあ、いっちょ気合入れてみようか!」


 そう言いながら、ナツキは円陣を組む要領で中央に手を添えた。

 すかさずモモも手を添える。


「おい、私もやるのか?」

「当然! ナキっちもやるんですよー!」

「そうだね、()()で!」


 ナキは仕方ないといった様子で手を重ねる。

 三人の手が重なって、それでも誰かを待とうとしてくれているみんなの表情がとても暖かかった。


「ほら、ミナミも!」 


 そう言われて、私も一緒に手を添える。

 感じるはずもないみんなの体温が手のひらに伝わり、思わず涙が零れた。


「じゃあ、いくよ?」


 ナツキの合図が全員の心をひとつにする。

 そして、せーのという掛け声とともに全員が手を天高くあげた。






「「「「黎明(どーん)っ! 我ら『皆望南生(ミナモナキ)組』、しゅっぱーーつ!!」」」」

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