表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム序盤
9/92

恥ずかしすぎて引きこもりたい②

 言っておくと「ナイルの方が好みタイプ」って言っても、推しとしてって意味。

 一応ピーカラは箱推しだしね。ただ、キャラのストーリーによってそれぞれ推しレベルは違うわけで。


 クロムのストーリーはいわゆる王道中の王道だったので、あまりズキューンとは来なかったんだ。


 そんなクロムの元に……やってきてしまった。

 学問所の近くにクロムの執務室がある。

 クロムは、日本で言うところの大学院で政治を学んでいる。

 私たちもあと半年ほどで学校を卒業する。その後はクロムが学んでいるようなもっと専門に特化した学問所に入るか、就職するか、結婚するかのどれかを選ぶこととなる。


 クロエの場合、クロムと仲を深めれば結婚なんだろうけど……今はあまり仲が良いとは言えなかったりする。

 だからシナリオではアメリアにかっさらわれちゃうわけなんだけど。

 クロエがアメリアと仲が悪いとそのまま断罪イベントに、アメリアと仲がいい場合はクロエが身を引くエンディングとなる。


 はー、どっちに転んでもやっぱりベッタベタの王道展開よね。


 一旦ネガティブはため息として吐き出して、私はクロムの執務室の扉をノックする。



「入れ」



 中からは、あまり機嫌がいいとは思えないような声が聞こえる。

 でも、やっぱり人気声優があてる良い声……画面を通さず生で聞くとクラクラ来ちゃう。



「失礼します。クロム様、お久しぶりですわ」



 緊張しながら執務室に入ると、クロムは若干驚いたような顔をした。

 一応、婚約者としての責任はあるのだろう。嫌がらずに相手をしてくれる。



「すまない、この書類が終わるまで待ってもらえるだろうか?」



 クロムの執事がソファーセットに案内してくれ、お茶を淹れてくれる。

 お茶を準備したら執事は部屋から出て行った。


 ふ、二人っきり……!!!


 一瞬だけ緊張で石化したけれど、カリカリという羽ペンの心地よい音が響く執務室と、ふかふかのソファーが気持ちよくて……ついウトウトしてしまった。



「クロエ、起きてください」



 いつの間にか寝てしまった私を、クロムが起こしてくれる。

 目を開けると、が……顔面が近い!!!

 私のことをのぞき込んでいたみたいで、目の前に整った美形が急に現れるものだから……顔が見る間に真っ赤になる。



「いやですわ、私……はしたない。どれくらい寝ていまして?」


「大丈夫、一時間くらいだよ。ほら、まだ陽は落ちていない」



 クスクス笑いながらクロムが窓の外に視線を誘導する。確かに、陽は少し傾きかけてるかな?くらいで、夕方にさしかかるくらいの時間だ。



「珍しいね、きみの方から私に逢いに来るなんて。そういえばナイルから聞いてはいるが、階段から落ちて色々なことが抜け落ちてしまったんだそうだね?」


「はい、記憶が曖昧でして。何か失礼なことをしてしまったら申し訳ありません」


「いや、いいんじゃないかな? 以前の人を近づけたくない!という感じが抜けて、なんだか少し……綺麗になった?」



 き、来た!!! スチルが発動した。

 そろそろ見慣れてきたけど、やっぱり口から魂が抜けるレベルだ。声優さんの甘い声が私の脳内にキマる。

 余韻に浸っていると、クロムは続けてきた。



「それで、私に何か用でもあったのでは?」


「あ、はい! これを渡そうかと思いまして。私の手作りなのでお口に合うかどうかわかりませんけれど」



 ラッピングしたケーキを手渡すと、クロムは意外にもワイルドに包みを開けて、そのままかぶりついて食べる。



「うまい! 昨日の紅茶の味のクッキーも非常に美味かったが。クロエにこんな才能があったなんて知らなかったよ」



 はい! 満点の笑顔をいただきました! この顔見ながらイラスト十枚は描けます! ありがとうございます!

 感動して思わず拝んでいたら、クロムがなんか変な雰囲気に。

 顎クイで迫られる私。



「こんなにお菓子作りが上手い人を伴侶に迎えられるなんて、私は幸せ者だな」



 ぎゃー! なんで? 二枚目のスチルが発動してる!!!

 もう、顔近いし私のキャパは限界をむかえていますけど!!!

 口から心臓が! 出る!!!


 コンコン!



「クロエお嬢様、大変申し訳ありませんが、そろそろご帰宅の時間でございます」



 た、助かった!!! ガイウス、グッジョブ!!!

 心の中でグッドサインを出しながら、私はあわてて残りのパウンドケーキを机に置いた。



「あの、クロム様。迎えが参りましたので失礼します。こちら、執務の間にでもお召し上がりくださいませ。では……」



 挨拶をしてそそくさと部屋を出る。

 迫った女がこんな態度を取るなんて超失礼だろうけど、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

 クロムの顔を思い出したら悶絶してしまいそうになる。

 私の様子が変なことに気が付いているガイウスが、色々聞いてくる。


 そんなの恥ずかしくて話せるわけがないじゃない!

 もう、穴があったら入りたい!


 明日一日、部屋にひきこもってもいいですか?

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次話は7時更新予定です。

↓↓↓の方に評価ボタンがあります。

作者のモチベーションにもなりますので、面白いと思われましたら☆やいいねで応援をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ