【派生ルート】ルカエンド
ルカを選んだ場合のifエンディングストーリーです。
最後にキャラのイラスト付き初期設定(最初に作った設定なので本作の内容とは若干異なります)カードを掲載していますのでお楽しみください。
ギイイイイイ…………
中庭への扉が開く。
私の目に飛び込んできたのは、最前列に居たルカだ。いつもの気だるそうなルカのイメージと違う、ビシっとした服装と身のこなしで、私じゃなければルカと気が付かなかったかもしれない。
色とりどりの出席者の中で、私が選んだ赤紫のドレスはものすごく目立っていた。主役としては、間違いのないチョイスだったとニンマリしたのは内緒。
スピーチを終えて、学友と歓談しているとルカが近づいてきた。独特のオーラのあるルカが動くと、なぜかモーゼのように人が道を開ける。特に女の子からは、かっこいい・素敵という声が聞こえてくるし、何なら倒れるお嬢様方もいらっしゃるくらいだ。
今日のルカはキマってるし、私も二度見したくらいだもんね。いつもこれくらい整えていれば、同い年の友人──特に女の子──なんていくらでも出来そうなものなのに。
「ルカ様、今日は来てくださってありがとうございますわ」
「ああ、お前の頼みだからな、クロエ」
ぶっきらぼうな言い方が、今日は余計にサマになる。一生懸命、私の為に身なりを整えてきてくれたのかと思うと、素直に嬉しい。
「すまんが、久しぶりにこのような場に来たからか疲れてしまった。休む場所がどこかにあるか?」
どうやら人の居ない場所で休憩したいみたい。確かに普段から人が居ない場所で、私以上に引きこもり生活をしているルカには、知り合いもほとんど居ないこのパーティは厳しいかも。
「それでしたら、こちらにお越しください」
案内した控室は、明かりが付いていないので少し薄暗い。少しだけ漏れてくるパーティ会場の喧騒がなければ、別空間みたいだ。
「ここでしばらくお休みください。水など飲み物は必要ありませんか? 今から明かりをつけますわね」
今日は私が主役なのにお世話をしようとするのは、ルカがクロエよりも年下だから。周りはいつも年上だらけで気を張っているだろうことは、私にだって分かる。しかも立場が立場だもんね。だから自然と気にかけてしまうのよね。
「明かりは必要ない、薄暗い方が心地いいからな」
「確かに、ルカ様のお部屋はいつも薄暗いですものね」
長椅子にドカッと横になるルカを見て、今日の主役の私を差し置いてその態度……と、ちょっと呆れる。まあ、それだけ心を砕いてくれていると言うことなのかもしれないけど。
「では、私は会場に戻ります。何かありましたらお呼びくださいませ。このマジックアイテムに魔力を込めてくだされば、すぐ駆け付けますから」
ルカの手に、マジックアイテムの呼び鈴(と私が勝手に呼んでいる玉)を握らせる。手を離そうとすると、アイテムを握っていない方の手で腕を掴まれてしまった。
「行くな……」
握る手は、少し弱々しく感じる。仕方なく、ルカの寝そべるソファの横にあるオットマンを引き寄せて座ると、ルカの方を向いてその姿を観察する。
そこには、魔法局長としてのルカの姿はない。まだ幼さが残る少年が寝ているだけだ。
「ルカ様、お疲れなのにパーティに来てくださってありがとうございます。何日眠られていないのでしょう?」
「……寝られないんだ。あの日から。瞼を閉じると、クロエがちらつく。俺はどうしてしまったんだろうか」
珍しく弱音を吐くルカに、キュンとする。でも私がちらつくって、生霊かな?
「いやですわ、ルカ様。私は生霊など飛ばしておりませんわよ?」
真顔で答えると、いきなりルカが大笑いする。起き上がってソファに座り直し、きょとんとする私の両手を取った。
「クロエ、お前のニブさは驚きを通り越して最早面白いな。俺以上じゃないのか? 贈った俺の髪と同じ色のドレスを選んだのも、何となくとか言うんだろうな。お前は研究のし甲斐がありそうだ」
ひとしきり笑うと、ルカは真顔になり私の目を見つめる。
「俺は、クロエのことを好きなようだ。正直、このような気持ちは初めてで困惑している。だが、嘘ではない」
いつも気だるい顔をしているルカの真剣なまなざしは流石に照れる。年下男子の猛烈アタックに私の心は既に陥落している。だって、今日のルカは本当に素敵なんだもん。
「嬉しいです、ルカ様。でも、どうして私を……?」
「以前言っただろう、同年代で同じくらい魔法に精通している者が居ない俺の世界で、お前は強烈に色を放っていた。最初は仲間が出来たと思ってただ嬉しかった。それなのに……お前が俺を助けたあの日から、その感情は大きく違うものに変わった」
私は小さく息を呑んだ。
「俺と一緒に歩んでくれないか。茨の道かもしれないが、必ず俺が守るから。──愛している」
そう言うと、ルカは私の手を離し胸ポケットから箱を取り出した。中にはとてもきれいな赤い宝石の付いたネックレスが入っていて、鎖には一目でなんだか高そうと思える細工が施されていた。
「ルカ様……よろしいのですか?」
「クロエに受け取って欲しい。俺では分不相応だろうか」
みるみるシュンとなるルカを放っておけるほど薄情でもないし、知れば知るほどルカに惹かれていたことは確かだ。
ルカが引こうとする手を握り、私は首を横に大きく振る。
「いいえ、いいえ! 分不相応だなんてそんなことありませんわ。私もルカ様のこともっと知りたいと思っていますわ!
ですから、この首飾りをかけてくださいませんか?」
ルカの表情が一気に晴れ上がる。私の後ろに回り込み、ネックレスを慣れない手つきでかけてくれる。
時間がフリーズして花が舞い散り、そのシーンがスチルとなって出現する。キャラクターボイスの声優が歌う恋愛エンディング曲「Colorful Love」が流れ、脳内に今までの出来事が走馬灯のように流れる。
曲が終わると、ルカは優しく笑いかけてくれる。
最高に可愛い。私だけが知る、ルカの少年の顔。笑顔を返すと、そのまま屈んで頬にそっとキスをくれる。
これから一緒に、この淡い恋を育てていこうと思う。
── ルカエンド 完 ──
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
他のエンディングもぜひお楽しみください。
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