【派生ルート】クロムエンド
クロムを選んだ場合のifエンディングストーリーです。
最後にキャラのイラスト付き初期設定(最初に作った設定なので本作の内容とは若干異なります)カードを掲載していますのでお楽しみください。
ギイイイイイ…………
中庭への扉が開く。
私の目の前には、沢山の人・人・人……その中で、ひときわキラキラ輝くオーラの人物が目に入った。
その人物の名はクロム。
「うっ! まぶしい……」
キラキラの笑顔には一切迷いがなく、私に向けられているのは好意以外の感情が見当たらない……はずなんだけど、どこか様子がおかしいのよね。全然近寄ってこない。
いつもなら、すぐに飛んできて甘くとろける言葉をささやき始めるクロムが、何もしてこない……?
学友と会話を楽しんでいても、料理を食べていても、楽しませるための出し物を見ているときも。
視線を感じて顔を向けると一億万点くらいの笑顔を見せてはくれるんだけど、それだけ。
正直、ちょっと気味が悪い。
確かに大勢の目の前でイチャつくのはあまり良い事ではないけれど、婚約者を見ているだけで放置するのもどうかと思う。
チクチク刺さる視線を気にしている自分も嫌なんだけど、あの何か言いたそうなのに言わない態度にちょっと腹が立ってきた。
ステルスを使って、裏庭に移動して一息つくと憤る。
「なんなの? 言いたいことがあるなら、言ってくれたらいいのに!」
「それは、私のことかい?」
私の憤り……一番聞かれたくない相手に聞かれてしまった。
「クロム様……? どうしてですの? 私、ステルスで抜けてきましたのに」
「クロエの事なら、何をしていてもお見通しですよ。特に今日は、君のことをずっと目で追っていましたからね」
そ、それは喜んで良いのか悪いのかどっち?
相当に微妙な顔をした私の元にクロムは近づいてくると、おもむろに私の手を取る。
笑顔がまぶしい……はずなんだけど、あれ? 笑顔が、ない? まさかこのまま断罪ルートになっちゃうの?
私の心配をよそに、クロムは私の手を取ったまま片膝を突いた。
「クロエ、学問所から卒業したらすぐに私と結婚してください」
クロムの手にはいつ出したのか……プロポーズの定番の指輪が光っている。ゲームのプロポーズなのに、この日本人喪女が考えましたみたいなプロポーズシーンって何? あ、そう言えば茜も喪女でした。
思わず冷静になってしまってごめん、クロム。
そもそもクロエとは婚約者なのだから、プロポーズなんて必要なくないですか?
「あの、クロム様……。私たちは婚約者ですから、このようなことなさらなくても……?」
私の言葉を聞いたクロムは立ち上がり、手にした指輪を私の左手の薬指にはめる。
「それは、肯定と取りますよ? 最近のクロエはどんどん美しくなっていく。そして美しくなるごとに、私との距離が遠くなっていく気がして……
そのドレス、暗い緑の色は私の瞳と同じ色――私がプレゼントしたものです。私を選んでくれたのだと、自惚れてもいいのでしょうか」
私の目を見つめるクロムの目が、だんだん熱を帯びてくるのが分かる。
相変わらずのキラキラの顔面に潤んだ瞳。元のクロエが欲しかったコトが目の前で展開している。
拒否できない、目を逸らすこともできない。こくんと、心の赴くまま頷いた。
「クロム様、嬉しいですわ」
クロムの手が私の髪を撫で、頬で止まる。
私はそのままそっと目を閉じ、キスを受け入れる。
体中が喜びに満ち溢れているのを感じる。
時間が切り取られ、スチルの中で確信する。
私は魂レベルでクロムの事が好きだ、と。そして、ずっとこの人を支えていきたい、と。
スチルが出現したあと、キャラクターボイスの声優が歌う恋愛エンディング曲「Colorful Love」が流れ、脳内に今までの出来事が走馬灯のように流れる。
歌が終わるとみんなの輪に二人で戻り、お父様にとお母様に「卒業したらクロム様と結婚する」と報告する。そして誕生会がそのまま結婚報告会へと変わる。
クロエが結婚してしまうと泣きはじめるお父様と、それを見て慰めるお母様、集まってくれたゲストみんなの笑顔が溢れ、最後に私とクロムが幸せに笑うシーンでゲームは終了した。
きっと、この気持ちは今後も覆らない。
クロエとして、この世界のこの国で恥じない生き方をしようと思う。
第二王子のクロムと結婚するということは、国政を助けるために尽力することになる。
引きこもりはまだ当分お預けだけど、しっかり全力で生きた後の余生でもいいのかもしれない……よね?
── クロムエンド 完 ──
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
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