恥ずかしすぎて引きこもりたい①
なんだかんだで結局今日も学問所に来てしまった。
帝王学は昨日帰宅してから勉強して、多少は理解したつもりだけど……クロエの記憶が覚醒してくれないと「ポンコツ」の烙印を押される日も近いんじゃないかと、今からガクブルしてしまう。
何だか今日は、やたらと私の周りが騒がしい。
昨日の私の行動が普段と違いすぎて、クロエ様がおかしくなったと噂になっているようだ。
まあ、そうなるよね。
クロエの基本データは、とにかく高慢ちきで人(特にアメリア)を陥れることを考えてばかりの人物。とにかく短気でプライドが高く、下々の者に声をかけることなんてないし、声をかけられても返事をすることすらない。
ひとことで言えば、嫌な性格の貴族ってやつね。
ただ、その姿が一部の人間には人気があり、いつも取り巻きに囲まれているという典型的な悪役という立ち位置。
そのクロエが、階段から落ちたら急にプライドも何にもないただの人見知り陰キャの私になっちゃったものだから、噂がどんどん広まってしまったらしい。
何があったのかと他の教室からも人が見に来る有様で、私は恥ずかしすぎて小さくなるしかなかった。
「アメリア、助けて……!」
視線が痛すぎて、キラキラ陽キャのアメリアにヘルプを求める。
するとアメリアが廊下や窓から覗いてくる生徒たちに注意をしてくれた。
「ごめんなさい。クロエは調子が悪いんですの。申し訳ありませんがご自身の席へお戻りいただけませんでしょうか?」
キラキラ陽キャのアメリアは、実はクロエよりかなり格下の貴族の生まれだ。
まだ五歳くらいの頃にアメリアの両親が亡くなり、子どもの居なかった親戚筋にあたるラピスラズリ伯爵家に養子として引き取られたのよね。
お父様とラピスラズリ伯爵は学問所の頃から切磋琢磨した既知の仲で、それで幼い頃のアメリアはクロエともよく遊んでいたみたい。
ちなみにクロエの闇スイッチはその頃に発動していたりする。
アメリアの人タラシ能力に嫉妬したのが原因なのだけど、友情ルートではアメリアの嫌われてもクロエを諦めなかった心が奇跡を生んで、わだかまりがなくなるんだよね。
いや、ホントにクロエってどんだけ(略)。
自分でも嫌になるくらい拗らせてる……って、茜も違う方向の拗らせ女子(?)だったけれども!!
彼氏だって一回しか出来たことなかったし。
惰性で付き合ったせいで結局キスまでしか無理だったし。
人を愛するってどういう事なんだろうなあって思うのは、なんだか共感できる。
これは哲学だ。
集まる視線から意識を逸らすために、私があれこれ思考をめぐらせていたら、あらかたアメリアがギャラリーを追い払ってくれていた。
病み上がりなのでと言えば、皆さん一応は良家の子女ということもあって、各々の教室までお戻りになってくれた。
一緒にギャラリーを追い払ってくれたナイルにも、手を合わせてありがとうとお礼を言う。
ナイルは一瞬ぎょっとした顔をしていたけれど、気さくに「気にするな」と言ってくれた。
アメリアとナイルは、私の記憶が曖昧なことや何かが違う事には気が付いているので、記憶の中にぼんやりとある、幼い頃のように接してくれる。
私に合わせて言葉遣いをフランクにしてくれているのも、実はすごく嬉しい。
初日はあまりにも余所行きの言葉遣いに慣れなくて、緊張して気絶の連発だったもんね……あは。
そんな二人には、休憩時間にパウンドケーキをおすそ分けして、今日も美味しい!と言ってもらえた。
このままクロムに合わずに家に帰ったらウエンディに怒られそうなので、これを機にナイルに相談をもちかける。
「あの、ナイル様。クロム様は本日ご在宅でしょうか。私、クロム様の分のケーキも持参していて……その……」
自信がなくなってきて、語尾がどんどん小さくなっていく私の頭をぽんっと優しく叩くと、ナイルは私の頭をくしゃくしゃと撫でて、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「本当にクロエは可愛らしくなってしまったな! 兄上は執務室にいらっしゃると思う。ぜひ、直接渡してやってくれ。喜ぶぞ!」
「まああ、クロエ! 私も照れてしまいますわ! クロム様には久しぶりにお逢いになるのよね? きゃー///」
ナイルもアメリアも勝手に盛り上がっている。
こっちは親密度上げるために仕方なくね、吐きそうな気分を我慢して行くの。
クロムは私好みの美形ではあるけど、私の最推しは別にいるし……どちらかと言えばクロムよりナイルのほうが好みのタイプだったりするのよね。
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