表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム終盤
79/92

またまた救出しなきゃで引きこもれない!①

「おやすみなさい、いい夢を」



 ネールにそう言って、私は部屋を出た。

 急に緊迫した状況になって焦った私は、ウエンディと脳内でこっそり相談をして、ネールには悪いけど眠ってもらった。



『まさか、ハルまで捕まっていたなんて』


『状況は最悪でございますね。まずはハル様の安否をご確認いただきたいのですが……』



 二人が眠る部屋から出て、誰がどこにいるか分かるMAPを広げる。ハルの色、どこかに桃色の点滅がないか探す。



「だめだ、どこにも見つからない……どうしよう? このままじゃアメリアが……」


『しっかりしてください、クロエ様。ハル様の居場所は設定で表示できないエリアと推測されます。ここは首謀者に聞くのが一番でございます』


「なるほど、設定か……。それならウエンディの提案に乗るのが一番いいね」



 ニヤリと笑う私の顔は本当に悪人顔になってたと思う。それくらい腹が立っていただけなんだけどね? 私は眠っている男たちの中から、統率していた一番偉いと思われる男を文字通り叩き起こす。


 ダアン!


 風魔法で浮かんだ身体を小屋の壁に叩きつける。悪夢から目覚めさせてあげたんだからむしろ感謝してほしいくらい。まあ、悪夢を見せたのも私なんだけど。

 だらしなく壁に叩きつけられ、その場に座った格好になった男はうめき声をあげ、目を覚ました。



「お前、何を……」



 ドカッ!!!


 何か言いかけた男の顔の横の壁をブーツで壁ドンする。ブーツはヒールなので、当たったらかなり痛いでは済まないと思うけどそんなことは構わない。アメリアに続きハルまで危険な目に合わせたなんて聞いてしまったら、私の怒りメーターなんて振り切れちゃうに決まってる。

 こうなったらお嬢様のクロエは封印し、徹底的に悪役令嬢になってやるわよ!



「あなた、ピンクの髪の男をどこにやったの? さらったんでしょ? アメリアと一緒に」



 耳元で私のヒールが小屋の壁にめり込む音を聞いた男は、顔面蒼白になる。



「ひっ……あの男は、洞窟に捨ててきた。流石に目が覚めれば自分で街に戻れるだろ。……生きてさえいれば」


「それはどういう意味ですの?」



 凄んだ私を見て、更に縮み上がる男……そんなに般若な顔になっていたかな? もう一度ゴミを見るような目で睨む。



「次は悪夢どころではない夢を見ることになりますわ。よろしくて?」


「わああ!!! 勘弁してくれ! もうあの夢は見たくない!!! ごめんなさい、ごめんなさい!」



 少々やりすぎたようだけど、ハルに命の危険があればアメリアは自分を責めると思う。しかも恋した相手がこの世から消えるなんて、アメリアが受ける心の傷を考えれば絶対に阻止しないといけない。



「わかりましたわ、話してくださるなら悪夢は見せません。ただし、きちんとお話してくださらないと、どうなるか……」


「わかった、わかったからやめてくれ! 洞窟の周りには魔物が居るんだ。運が悪ければ襲われてるかもしれない。魔物は夕方に目覚めるからな、まだ昼間のうちは安全なんだよ!

 ちゃんと話したぞ? お願いだ、もう許してくれ!」


「洞窟の場所は?」


「裏口から出て北東に進めばある! 片道二十分もない、本当だ!」


「嘘だったらその時は、お分かりですわよね?」



 捨て台詞を言うと、私はそのまま男に睡眠魔法をかける。さっきと同等の、悪夢の世界へ誘う。そのまま小屋を飛び出すと、男が言った通り北東方向にのびる獣道(けものみち)を進んだ。

 たまにこれ以上行けない場所(・・・・・・・・・・)があったけど、あれは多分開発されてないエリアなんだろう。純粋なゲームキャラの皆さんは、多分気が付かないのだろうけど。


 とにかく時間がない。もう間もなく夕方がやってくる。間に合って!


「あった……!」


 身体強化を使いながら走って、見つけたのはかなり深そうな洞窟。正直なんかヤバそうな雰囲気を醸し出していて入りたくない。けど、ここにハルが居るのなら連れ帰らないと。

 ゆっくり大きな深呼吸をして、上がった息を整える。ウエンディにもう一度MAPを見せてもらうと、目の前の洞窟の中でピンクの光が点滅していた。



「点滅してる……近くまで来ないと見えない場所ってこと?」


『ハイ、このあたりの瘴気は強いです。瘴気に邪魔され受信できなかったのでしょう。クロエ様、お気を付けくださいませ』


「ひぃ……怖い」


 一人で突っ走ってしまった事にほんの少し後悔しながらも、ごくりと息を呑みこんで洞窟の中に足を踏み入れる。ビシビシと冷たい空気と一緒に気味の悪いねっとりとした何かが身体にまとわりついてくるんですけど……蜘蛛の巣みたいな。

 魔法で明かりの代わりに炎を作って奥へ進むと、程なくして大きな岩に寄りかかるようにしたハルを見つけることが出来た。



「ハルっ!!!」



 急いで駆け寄って、身体をゆすってみたけど返事がない。相当な力で殴られたんだろうな……きれいな顔が傷だらけで、アメリアを守ってくれたことが分かる。

 そして後ろ手にされた手首を縛っているのは、アメリアと同じ魔法を封じるまじないのかかった縄だった。これでは魔法を使えないし、このまま放置されていたらもれなくモンスターの餌食だったと思う。

 縄を外し、回復魔法で外から見える傷は治した。他に重大な傷があるかもしれないけど、この気持ち悪い場所から早く出たいので、私は救出を先に行うことにした。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

土曜日なので次話はゲリラ公開とします。

↓↓↓の方に評価ボタンがあります。

作者のモチベーションにもなりますので、面白いと思われましたら☆やいいねで応援をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ