イベント目白押しで引きこもれない!
あー、染みる~!
バスタブの中に浸かると、身体の疲れが一気に吹き飛ぶ。疲れが取れた気分になるだけだけど、日本人はやっぱりお風呂よね! 癒すだけなら薬か魔法で良いんだから、この世界は情緒が無さ過ぎる。
気持ちよくお風呂に浸かっていると、ウエンディが話しかけてくる。
『クロエ様、本日はお疲れ様でした。無事、ターゲット二人の人助けイベントを攻略されましたね。魔法を乱発されたのでレベルアップも致しました。ステータスご覧になりますよね?』
「そうだね、一応確認しておいたほうがいいか。どれくらいアップしてるのか気になるし」
そう言うか言わないか。食い気味にウエンディがステータスを見せてくる。
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クロエ・スカーレット(17歳)
Lv.24
属性:火・地・風・闇・光
HP(体力)…………… 180
MP(魔力)…………… 7000
ATK(物理攻撃力) … 140
MAT(魔法攻撃力) … 3500
DEF(物理防御力) … 105
MDF(魔法防御力) … 3500
LUK(運の強さ) …… 886
親密度
アメリア(幼馴染)…… 579/999
クロム(婚約者)……… 922/999★
ナイル(婚約者の弟)… 790/999★
ガイウス(執事|暗殺者) 920/999★
ハル(占い師)………… 565/999
ルカ(魔法局長)……… 722/999★
ジーン(用心棒)……… 705/999★
シモン(近衛師団長)… 774/999★
特別スキル
スチル耐性……………… 900
虫の知らせ……………… 999
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『おめでとうございます。虫の知らせがカンストとなりました。危機回避能力が飛躍的にアップしました。また、LUK(運の良さ)も間もなく900目前です。ここまで来れば怖いものは無い数値です。行動さえすれば、間違いなくすべてのイベントが発生します。
運のなさが最低値だったあの頃のお嬢様と比べたら……ワタクシは、ワタクシは……』
わざとらしく泣くウエンディの演出は気持ちがちょっと冷めるんですけど。でも、人助けイベント攻略後の全員の数値が爆上がりしているのは素直に嬉しい。本当に頑張ってきたと思う。あとはアメリアとハル……なのだけど。
「やっぱり、最難関はハルよねぇ。」
仲良くはなっているけど、相性ボーナスが入らないのが厳しい。多分、人助けイベント発生後にポイントが入っても700超えないんじゃないかな?
「もう、攻略出来る気がしない」
『大丈夫です! クロエ様なら絶対何とかすることができます。なぜなら、LUK800越えなど今まで担当した誰よりも素晴らしい数値でございます』
誇らしげに言うウエンディの「今までの担当」が気になるところだけど、まあそこはスルーしておく。聞いてもいい事はあんまりない気がするし。
「ハルはまず招待状を渡さないといけないし、そこからだよね。まずはアメリアの攻略から始めることにする。明日も頑張ろうね!」
『やる気が出るクロエ様……推せます。明日もよろしくお願い致します』
お風呂から出て、そのままベッドにダイブする。ウエンディもなんだか最近ちょっと俗っぽくなってきたなぁなんて思いながら、重くなってきた瞼に抗えず目を閉じた。
ドンドンドン!
翌朝、やたら誰かが部屋の戸を叩く音で目が覚める。
「お嬢様! クロエ様! 起きていらっしゃいますか?」
「────、ガイウス?」
まだ眠いのだけど……窓の外を確認すると、空が白んでは来てるみたい。それにしても早朝すぎる。眠い目をこすりながらナイティのまま扉を開けると、やっぱりガイウスが立っていた。顔を見ると……真剣な顔から急に照れ始めてる?
「お嬢様、そのような恰好で男性の前に出てはいけません。特に俺────いや、私以外の前では」
「へ?」
よく自分の姿を見ると、寝崩れたままで色々セクシーなことになっていた。仕方ない、寝起きだし? 起こしたのはガイウスじゃない!?
「ああ、ごめんなさい」
パパっと体裁を整えて、何事も無かったかのように話を戻す。
「それで、どうしましたの? こんな朝早くから主人を起こすなんて」
「はい、それが……。先ほど、アメリア様の家の執事から連絡がありました。昨日昼過ぎからアメリア様の行方が分からない、と。お嬢様が知らないか確認をしてほしいとのことで……」
「っ!? 何ですって?」
まだ覚醒していなかった頭が一気に動き始める。アメリアが行方不明?
「私が知らないことは、あなただって知っているでしょう。昨日、ガイウスは昼過ぎから私と一緒でしたわよね?」
「はい。何かご存知ではないかと先方の執事があまりにも憔悴しておりまして……念のためとお伺いに参りました。お休みのところ、大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げられたら、もう怒れない。それに、アメリアが行方不明なのは凄く心配。何か変なトラブルに巻き込まれていなければいいのだけど……。
「分かりました。アメリアが心配なので私も探しますわ。着替えるまで待っていなさい。あなたも探すのでしょう?」
「かしこまりました」
身支度をパパっと済ませ、ガイウスと一緒に家を出る前に軽く腹ごしらえをする。腹が減っては戦は出来ぬだし、何よりパワーは付けておいた方が良いに限る。
ガイウスには「はしたない」と言われたけど、時間が惜しいので食べながらどこを探すか打ち合わせて、家を出た。
城の前でガイウスと別れ、アメリアが行きそうな場所を探す。
最初に行ったのはハルの家……安易だけど、乙女ゲームってちょっとストーキングっぽいところあるじゃない? 私も持ってる「誰がどこにいるか分かるMAP」みたいなものを、正規ヒロインのアメリアが持っていないとは言い切れない。多分、ガイウスも似たようなアイテムを持っていると思う。……これは勘だけど。
アメリアが見つかったら、それとなーく聞いてみようかな。
念のためウエンディに「誰がどこにいるか分かるMAP」を開いてもらったけど、反応はどこにも見えない。
「公園に居ないとなると……学び舎とか?」
『クロエ様、MAPを拡大されますか?』
悩んでいる私に神の声。ウエンディの提案を受け入れて部分マップを全体マップに変更してもらう。
すると、ピーク王国の国境……ゲーム内で言うと、それ以上開発されていないので存在しないエリアとの境界ギリギリの湖の傍に、アメリアの青紫色が点滅しているのが確認できた。
こんな端の方……しかも湖の色とほぼ同化してる。ゲームをやりこむ為に自作のワールドマップを描いた事がある私じゃなければ気付かないんじゃない?
こんな時に私のオタ活が役に立つなんて複雑だけど、急いでガイウスに連絡を……と思ったけど、連絡したら私がMAP持ってることバレちゃわない?
流石にこんな端までなんて足が無いと行けないし、適当な嘘でもついて連れて行ってもらおうかな?って思案してたら、ナイルに遭遇した。
アメリアが行方不明になったことは、ナイルにも連絡が来たそうで探してるんだって。
せっかく馬に乗れる要員と出会えたのだから、ここで逃す手はない。湖畔に行けばアメリアが居る気がすると強引に馬を出してもらって、城門を出る。
待っててアメリア! 何があったか分からないけど、すぐに行くから。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
土曜日なので次話はゲリラ公開とします。
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