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【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム終盤
70/92

最初からイベント大渋滞で引きこもりたい!②

「うう……何が……あった?」



 少し意識が混濁しているみたいだったから、優しく声をかける。



「ルカ様、意識が戻られましたのね。良かったですわ。あともう少しでソファーに到着しますのでもう少し我慢してくださいませ」


「ん……この声は、クロエ・スカーレット……か? 俺は……」


「まだお話になられない方が良いですわ。この階段を降りればソファーが……」



 そこまで喋って、足ががくんと抜けたみたいになった。ソファーが見えたことで安心してちょっと力が抜けちゃっただけなんだけど、大きく揺れたルカが私の肩を掴んだ。そりゃそうよね、背中から落ちたら危ないから掴むよね。



「ひゃ……!」



 掴まれた……と言うより、抱き付かれた恰好になったことに驚いて変な声が出てしまった。そしたら耳元でルカが「すまん」なんて囁くから、テンションが上がりすぎて「そのパワーどこに眠っていたの?」というくらいの力が湧いてきて、あっという間にソファーまでたどり着くことができた。

 声優さんの声って、パワー出るよね。それを耳元で聞いたら……頑張っちゃうのは私だけじゃないハズ! え? 赤面? そんなの耳まで赤くなってるに決まってるじゃない!

 赤くなったのを見られたくなくて早くソファーまで来たとも言える、かも。


 風魔法でそっとソファーにルカを寝かせて、色んな意味で全身の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

 四つん這いになっている私を見て、ルカがねぎらいの言葉をかけてくれる。



「すまん。ここ数日まともに寝ていなかった。本を整理している途中で意識を失ったみたいだな」


「そうでしたの。意識が戻って安心しましたわ」



 どうやら、睡眠不足から意識を失い本棚に倒れ込んで、その反動で本棚に押しつぶされてしまったみたい。私が訪ねて来なかったらどうなっていたのよ。本人は知らないとはいえ、すごく危険な状態だったのに。

 そう考えたら何だかホッとして涙が出てきた。人間、極度の緊張の後って涙腺が緩むのよ。決して中身の年齢がアラサーだから涙腺が弱くなってたわけじゃないわよ? ええ、断じて!

 確かにピーカラプレイ中に感動イベントで何度か泣いたけど、今回はそういうのじゃないから!


 脳内で涙の理由について全力否定していると、まだ身体は動かしにくいと思うのに、ルカは上半身を起こしてぽろぽろ流れる私の涙をぬぐってくれる。そして……そのままルカがフリーズした。

 あ、スチル。そう思った途端、周囲にバラの花が飛び散っている。



 冷静に考えれば、やっぱりこれは人助けイベントだったかぁ。おかしいと思ったのよ、ルカがあんな下敷きになるようなヘマ(・・)するわけないもんね。



 私の頬にルカの手が触れたまま時が止まっているんだけど……これ、どうやったら元に戻るんだろう? 時が止まる前に何もセリフがなかったから、何を言っていいか正解が分からない。

 この場合は、そのままストレートに感情を伝えるのが一番良いと思ったから、それを伝えてみる。せっかくだから、頬に添えられた手も握ってしまおう。



「大丈夫です、ルカ様。安心したら涙が出てしまっただけですわ。無事で本当に良かったです。本当に、ご無事で……」



 言葉にしたら、また涙が出てきた。

 ルカの方を見ながら話したのがいけなかった。図らずとも少々上目遣いの構図、目の前の潤んだ瞳の(自分で言うのもなんだけど)美女が、自分を気遣って泣いたら普通の男子なら一発ノックアウトよね。

 ただでさえ恋愛シミュレーションゲームの攻略対象なんだから、普通よりも情緒は流されやすいものだと思うの。

 何となく顔が近づいてきてるなーって思ったけどね? でも、力も抜けてたしあんまり頭も回っていなかったと言い訳させてほしい。


 ルカは、そのまま私の涙をぬぐうように優しくキスをして、また花が舞い散り周囲がフリーズする。


 スチルのデパートか!


 照れが追い付かず爆発してくれたおかげで、逆に頭がスッキリしてツッコミが入れられるくらいには回復した。ええ、回復しましたよ。



「ルカ様……私には婚約者が居ましてよ?」


「知っている。だが、こうしたかった。……いきなり、すまなかった」



 照れながら顔を背けるルカに、キュンが溢れそうだ。

 耳まで真っ赤になってない? 純情青年~!って、さっきまで顔を真っ赤にしてた私が言えないのだけど。

 そう言えば、キスをされて気が付いたけどルカは眼鏡をしていなかった。私は照れるルカに「気にしないでくださいませ」と言葉をかけると、もう一度本棚の方へ足を運んだ。


 眼鏡を無事回収し、ルカに渡そうと声をかける。もうそこには照れまくっていた年相応の少年じゃなくて、いつもの魔法局長のルカが居た。


 どれだけメンタル強いのよ、私も相当だと思うけど……


 さっきの事は何もなかったかのように眼鏡を受け取るルカに、そういえば今日は招待状を持ってきたのだと、ルカに倣い何事もなかったように振舞ってパーティの招待状を渡す。



「誕生日か。俺は誕生日パーティーなどに呼ばれたことも行ったこともないが、いいのか?」



 困惑しながらも嬉しそうな顔に、またキュンとなる。



「ええ、来てくださると嬉しいですわ。せっかく仲良くなれたのですから、来てくださいますか?」


「ああ、考えておく」



 そんなそっけない返事の割に、顔は満面の笑みですよ? え? これってスチルじゃないんですか? あ、違うんですか、そうですか。

 スチルが発生しなかったので、その笑顔を心のアルバムに念写……いえ、しっかり刻み込む。

 ルカの身体に本当に異常がないか本人に何度も確認を取り、帰りに念のため医者の手配をすることを伝えて執務室を出たところで、無事(?)に私は限界を突破する。


 なになになに、あの笑顔! もう、しんどい! 色々大渋滞してた! しんどい! はあ、尊い、尊すぎる! いきなりのツンデレからのツン!!! からの、デレ!!!!!


 一気に押し寄せた推しからのアプローチと、明らかにルカとの親密度が上がった為に起きた不意打ちの可愛い笑顔攻撃にしっかりやられた私は、そのまま廊下に崩れ落ちた。

 何度か深呼吸を繰り返してやっと落ち着きを取り戻したけど、私の手元には残り三枚の招待状がある。


 こ、これを短期間でやりきるの? しかも人助けイベントはあと三人……


 耐えられる?


 もうこのあたりで攻略はやめて、集めたスチルを眺めながら引きこもりライフを過ごしても良いですかー?

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次話は18時更新予定です。

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