親密度上げが色々しんどいので引きこもりたい
翌朝、あまり良く眠れず早く目覚めた私は、ステータスの確認をすることにした。
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クロエ・スカーレット(17歳)
Lv.20
属性:火・地・風・闇
HP(体力)…………… 31
MP(魔力)…………… 5000
ATK(物理攻撃力) … 17
MAT(魔法攻撃力) … 1500
DEF(物理防御力) … 11
MDF(魔法防御力) … 2000
LUK(運の強さ) …… 33
親密度
アメリア(幼馴染)…… 287/500
クロム(婚約者)……… 192/500
ナイル(婚約者の弟)… 328/500
ガイウス(執事|暗殺者) 460/500
???…………………… 000/500
???…………………… 000/500
???…………………… 000/500
???…………………… 000/500
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ふぁ!!?
何度見てもガイウスの親密度がおかしな数値だ。
なんで? なんでこんなに高いの?
「ウエンディ、なんでこんなにガイウスの親密度が高いの? 私、昨日はじめて認知したんだけど?」
『ハイ、ガイウス様はクロエ様の執事です。従者が主人との間に信頼関係がつくれていない事はありえません。ですから親密度は高くなります』
「にしたって、彼は暗殺者よね? 私のことを殺すはずじゃ……?」
『それについては、ストーリーに深くかかわるため話すことはできません。本日もLUK上げを頑張ってください。昨日はLUKが30を超えたため新しい攻略対象との出会いがありました。残り四名との出会いを果たすための目標は最低値250になります』
「250。そこも一応ゲームと同じゲージなんだね。私の最推しと出会えるのはいつになるんだろう」
私の最推しは、アメリアでプレイ時にガイウスに狙われることで現れるんだけど……。まだクロエルートを未プレイの私にはどのように出会うのかが全く分からない。
とりあえず攻略対象を五人まで出現させるとパーティを組んで討伐依頼を受けられる。
親密度が250を超えていれば断られないので、私のやることと言えば婚約者のクロムの親密度上げと引き続きLUK上げ。
「クロムと言えば、親密度が微増してるみたいに見えるけど……私何かしたかな? まだ彼には一度も会ってない気がするけど?」
『クロム様は、昨日ナイル様よりの報告でクロエ様のお作りになったクッキーを召し上がっています。直接渡していないので微増となっています。直接お渡しになればもっと上がると推測されます』
「確かに、直接渡したアメリアとナイルの親密度はかなり上がってるもんね? じゃあ、今日も何か作ろうかな? キッチン、今の時間忙しいかもしれないけど端の方を少し借りようかな」
私は身支度を済ませて、キッチンのある使用人棟まで向かってみた。
昨日とは違って活気のあるキッチン。
やっぱり、朝の準備で大忙しみたいだ。ここで端っこでもいいからお菓子作らせて?なんて言えない。
「何か手伝いましょうか?」
「じゃあ、そこのキャベツの千切りお願いね」
お手伝いの皆はバタバタしていて、私の方を見向きもしないで料理をしている。
朝食は、シェフが夜のうちにある程度仕込みをしてくれているはずだけど、それでも使用人たちはバタバタとせわしなくあちこち走り回っている。
私は指示されたとおり、キャベツの千切りに着手した。
料理はそんなに得意ではないけど、実はキャベツの千切りと玉ねぎの薄切りは得意なのよね。
なぜかって、一時期キャベツの千切りを生で食べるのにハマって、キャベツを千切ってばかりいたから。玉ねぎはどれだけ薄く切れるかチャレンジをしていたら、自然と上手くなった。
自分でも思うけど、私は凝り性なんだと思う。飽きたら興味がなくなるのも早いんだけど、熱中してると周りが見えなくなってしまうところがある。
直さなきゃとは思うんだけど、なかなかクセを直すのは難しいよね。
大人しくキャベツを千切りしていると、悲鳴が上がった。
「お、お、お嬢様!!? 何をされているのですか!!?」
「キャベツの千切りだけど?」
「いつからいらっしゃったのですか?」
「ちょっと前からかな? 忙しそうだから何か手伝おうかって言ったら、キャベツ切ってって言われたから。どう? 良い感じでしょ?」
目の前にあったキャベツを全部千切りにしていたら、ザル山盛りのキャベツの千切りが出来上がっていた。
ちょっと多すぎる気もしたけど、千切りが楽しくて熱中していたらこうなっていた。
「やりすぎちゃった? ごめんなさい」
「いえ、ありがとうございます。素晴らしい出来で感動すら覚えます。ですがお嬢様、こんなことはなさらないでください。私どもが叱られてしまいます」
「誰に叱られるのかしら? けれど、やり過ぎじゃなくて良かったですわ。他に何か手伝えることがあれば手伝いますけど……」
「ひいぃ! 本当に勘弁してくださいませ! 私どもが上司に叱られます」
「なるほど、上司ですわね。では、私からお父様とお母様に相談して厨房を使わせてもらえるよう、その上司にお願いしてみましょう。それなら問題ないでしょう? 今日もお菓子を作りたいのよ」
お菓子を作りたいと言った私の言葉に、その場の全員が期待に満ちた目で私を見てくる。
どうやら私のクッキーは、想像以上に使用人の胃袋を掴んでしまったみたい。
そんなに甘い物に飢えてるの? この世界の人たちは……。
少し半眼になりながらも、今日はパウンドケーキを作りたいので材料を用意して欲しいとお願いすると、秒で私の目の前にケーキ型・薄力粉・卵などなど、必要な材料がずらりと並べられた。
「ありがとうございます。このほかにナッツとかレーズンとか、そういったものはあるかしら? あと、バニラビーンズがあると最高なのですけど……」
言うが早いか、シュバっと希望の食材が目の前に現れる。
「では、私は大人しくパウンドケーキを作っていますので、皆さんは自分の持ち場に帰ってくださいませ。朝食、楽しみにしています。あ、大丈夫、ちゃんと皆さんの分作りますから!」
私の言葉で使用人たちは持ち場に戻って行った。
どれだけ(以下略)。
ケーキを焼いて、少し粗熱が取れたら適当な大きさにカットしてラッピング。
王子の口に合うといいけど……。
そこまで行動しておいて、はたと我に返る。
こ、婚約者の王子と会う? これは結構ハードル高くない?
沢山作った余りのケーキは、使用人たちであとで食べてねと厨房に置いて、ラッピングしたケーキを手に、私はキッチンをあとにした。
朝食のあと、お父様とお母様にふるまったら絶賛してくださったパウンドケーキではあるけど……。
毎日おいしい物を沢山食べているだろう王子の口に合うのだろうか?
身内の意見は意見のうちに入らないしね。クロエは甘やかされているみたいだし。
あれこれ考えていたら、もう家を出る時間になっていて学問所に行く足どりが重い。
しかも送り迎えの付き添いはやっぱりガイウスで、満面の笑みを浮かべて私をエスコートする。
今朝の一件で使用人たちのLUKが入っているはずだから、一回くらい言ってもいいよね?
親密度上げるの、私の心臓が持ちそうにないから引きこもりたい!!!
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次話は23時更新予定です。
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