目標クリアだけど引きこもれない!
『クロエ様、おめでとうございます! また一歩、友情エンディングに近づきました!』
夕食後、今までの中で一番嬉しそうにウエンディが報告をくれる。頼んでいないのに、ご丁寧にステータスまで表示してくれる。
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クロエ・スカーレット(17歳)
Lv.23
属性:火・地・風・闇・光
HP(体力)…………… 150
MP(魔力)…………… 6500
ATK(物理攻撃力) … 100
MAT(魔法攻撃力) … 3000
DEF(物理防御力) … 70
MDF(魔法防御力) … 3000
LUK(運の強さ) …… 760
親密度
アメリア(幼馴染)…… 510/999
クロム(婚約者)……… 730/999
ナイル(婚約者の弟)… 715/999
ガイウス(執事|暗殺者) 890/999
ハル(占い師)………… 515/999
ルカ(魔法局長)……… 550/999
ジーン(用心棒)……… 501/999
シモン(近衛師団長)… 545/999
特別スキル
スチル耐性……………… 700
虫の知らせ……………… 825
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今日のアメリアとハルのスチルが効いたらしく、親密度500を全員超えることができた。
こうやって見てみると、解放された999の文字がとても誇らしい。私の誕生日まであと十日を切った状態でここまでこれたことはなかなか感慨深い。
「うう、ようやく私もここまで! ウエンディ、もう引きこもっても……」
『良いわけありません! クロエ様、数字をよく見てください。ジーン様とハル様、アメリア様はあと30はプラスにしておいてください。一度親密度が落ちてしまうと、イベントが発生致しません。すぐに500以上の親密度まで戻せませんのでお気をつけください』
「はぁい」
喜んだのもつかの間、まだやることが残っていたとため息をつく。
「そう言えば、今週末はシモン様の家に呼ばれていたんだっけ」
ゼリーの作り方を教えてほしいと言われていたことを思い出す。正直、イケてるおじさまのエプロン姿はヨダレが出るくらい楽しみだ。
スチルが出てくれたら、しばらくずっと見ていられるはずと期待してしまう。
『クロエ様から邪なオーラが感じられます。週末までに、先ほど挙げた三名の親密度上げを頑張ってください』
「邪なオーラ……はは……はい、わかりました。エンディングを終えた後の引きこもりのために、頑張ります!!!」
『良い心がけでございます。それで、明日はどうされますか?』
「ジーンの好感度を上げておきたいかなあ。アメリアは学問所で何とかなるとして、ハルは……もう! 面倒だからまたゼリーで一網打尽でいいよね!?」
『もう少し状況を楽しんでも良いのでは? クロエ様は効率にこだわり過ぎに見えます』
「いいの! 効率は正義!!! パパっとパラメーター上げて行きましょ! よしゃー! 明日は早起きしてゼリー作りしよ。ゼリーの材料があるかどうか、調べておかないとね!」
自室を出て、もう暗くなった外を使用人棟まで走る。キッチンにはまだ灯りが付いていて、どうやら夕食の後片付けと朝食の仕込みをしているようだ。
「お邪魔しますわ!」
キッチンに入ると、使用人たちが慌てふためく。
「お嬢様! いらっしゃるなら事前にご連絡いただけましたら、もっと早くに片付けておきますのに」
厨房を仕切っている使用人頭が慌てて私に駆け寄ってくる。
そそくさと使用人たちが色んなものを片付けているのが気になるけど、私は材料さえ確認できれば退散するつもりだから気にしないでほしい。
「ごめんなさい。次からはそうしますわ」
一度自分の行動について非を詫び、本題に入る。
「ところで、この間作ったゼリーを明日の朝作りたいのですけど、材料はあるかしら?」
「固める素材はありますが、先日お使いになった果実はございません」
「何があるか見てもいいかしら?」
「もちろんでございます! ただいまレシピ開発をしておりまして、少々物が多くなっておりますが……」
「へえ、レシピ開発までしてくださっていますのね。いつもご苦労様ですわ。常に上を目指し、たゆまぬ努力をしてくださって私も誇らしいですわ。皆さん料理人の鑑ですわね」
使用人たちを褒めると、どよめきが起こり……あれ? ちょっと涙ぐんでる人までいない?
何も泣くほどのことでもないだろうと思うけど、この時代設定だと身分の差はハッキリしているだろうし、主人がキッチンまで足を運ぶようなことはそうないのかも。
私は今後も堂々と人を褒めていこうと決心する。
キッチンにある食材をざっと見ると、なんと! 桃があるじゃない!?
これをシロップ煮にしてそのままゼリーにしてしまえばかなり美味しい!
そうなると、今から仕込みをしたいけど……いいのかな? これ使って。
「この果物はあまり見たことがないですが、私が使ってもいい物かしら?」
使用人に確認を取る。すると料理長が快くオーケーをくれた。
「その果実は珍しいので仕入れてみたのですが、固くてあまり美味しい物ではなかったのです。
西方の国からの輸入ものらしいのですけど、それでよろしければお使いください」
桃が珍しいのか、と思いながら有難く使わせてもらう事にする。珍しい桃を使えば、親密度50どころか100くらい上がっちゃうんじゃないかな? 期待大!!!
桃の皮をむいて、レモンを搾り、お砂糖を用意していざレッツクッキング!
私の作るシロップ煮を料理長が何やらメモを取りながらまじまじと眺めてくる。
「あの……何か?」
「いえ、お嬢様はこの国では誰もやっていないような調理法をよくご存知だなと思いまして。
お菓子作りのレシピ本まで読まれているとは、流石としか言いようがございません。そのうえ手際も大変良く……勉強させていただきます」
「そんな大したことないのですけどね。ほほほ」
今回はあまり桃の数も多くないので、ゴロゴロとゼリーに入れることはできないけど、小さく切り分ければそれなりの人数分確保できそう。
攻略対象の三人は大きい器で、他の人はひとくちサイズくらいでいいかな?
ふとナイルの恨めしそうな顔が脳裏をよぎる。学問所でアメリアに渡すということは、ナイルにも必然的に渡さないといけないわけで……仕方ない、一応ナイルとクロムは中くらいの器にしておくか。
シロップを冷ましている間に、器の数やサイズを確認しておく。
料理長の言う通り、食べてみるとかなり甘みの少ない……というかちょっとエグいくらいの桃だったので、しっかり甘さを浸透させるために一晩は置いておきたい。
冷蔵庫に入れられるかどうかも一応確認して……と思ったら、冷蔵庫は今は満杯だと料理長に開けるのを止められてしまった。
困った、冷蔵庫に入れないと明日ゼリーも作れないし。
「お嬢様、このシロップ煮を冷蔵庫で一晩冷やせばいいのですよね? 今から総出で片付けますので、あとは私たちがやっておきます。本日はおやすみください。明日の朝までにゼリーを冷やす分のスペースも空けておきます」
何だか様子が必死なのが気になるけど、そんなに散らかっているなら仕方ない。
平らな容器にシロップで煮た桃を綺麗に並べる。汁は桃の皮を入れていたので、並べた桃が浸かるくらいまでこしながら流し込む。
ラップはないので布巾をかぶせると、あとは料理長にお願いしてキッチンをあとにした。
何かみんないつもと違った気がするけど、気のせいかな?
やってくれるというのは嬉しいけど、私の個人的な趣味を押し付けてしまったような気がして申し訳ないなぁ。
モヤモヤしながら自室に戻り、明日の朝に美味しい桃のシロップ漬けが出来上がっていることを楽しみにしながらベッドに入った。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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