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【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム中盤
54/92

誤解を解かないと引きこもれない!①

 朝がやってきた。

 とは言ってもあまり眠れなくて、結局まだ暗いうちに目が覚めてしまった。


 寝たら起きられそうにないので、使用人たちが起きるまでに久しぶりにクッキーでも焼こうかとキッチンに来てみたら、もう使用人たちが働いていた。



「どうされたんですか? みなさん朝早いんですのね?」


「く、クロエお嬢様~~~!!? おはようございます!」



 何だか使用人たちの動きがおかしいように感じるけど、気にしないでキッチンに入る。



「忙しいところごめんなさい。端の方を少し使わせてもらってもよろしいかしら?」


「もちろんですとも! 私どもはミーティングがございますのでしばらくキッチンを離れております。ご自由にお使いください」



 料理長の緊張した顔は一体何だろう? そもそも、いつもこの時間に料理長は出勤していないはずじゃない?

 とりあえずキッチンは使わせて貰えるみたいなので、久しぶりにクッキーを焼く。

 アメリアの誤解をどう解こうか?

 そんなことを考えながら卵白をかき混ぜていると、メレンゲが良い感じになったのでメレンゲクッキーを焼く。卵黄は普通のクッキーを焼く材料にする。



「アメリア、喜んでくれるかな?」



 心を込めて焼いたメレンゲクッキーは、ふんわり膨らんで上手に焼きあがった。いつものように山のように作ってしまったので、余った分は親密度を上げたい皆様に配れるように小分けにして包装する。

 アメリアだけは、包む量もラッピングも特別仕様にして気を遣ってみたけど……どうかな~?


 クッキーを包みながら、昨夜を振り返る。

 多分、ガイウスが言っていた「誰か見ている」というのがアメリアだったのだろう。一応あの場にガイウスが居てくれたから、流石にハルと二人っきりだったとは思われなかったはず。

 ただ、ガイウスは執事だからなあ。使用人が居るくらいに思われていたら、結構厄介かもしれない。


 どれくらい誤解されているんだろう?


 気になるけど、本人に聞いてみないとそればかりは分からないし、とにかく誤解を解きつつハルとも親密度を上げるしか方法はない。

 私の誕生日はもう二週間もなくやってくる。それまでにあとちょっとの親密度上げ、やっておかなきゃ絶対に後悔する。

 アメリアには、私がハルに恋愛対象として気があるわけじゃないことをアピールしなきゃね!


 軽くキッチンを片付けながら、二周目のクッキーをオーブンから出す。


 使用人たちは、私がキッチンを片付け終わった頃に皆で戻ってきた。

 二度目に焼いたクッキーは、いつも通り場所を貸してくれた使用人たちのためなので、そのままお皿に盛りつける。戻ってきた使用人に、この皿のクッキーはあなたたちの分だと伝えてキッチンを後にした。


 朝食をいただいて、学問所への身支度を済ませると、ガイウスがいつもと違い何やら荷物を持っていることに気が付いたので聞いてみる。



「ガイウス、今日もよろしくお願いします。ところで、それは何でしょう?」


「クロエ様。おはようございます。クロエ様をお送りした後に、旦那様のお言いつけで所用がございまして。荷物がお邪魔でございますか?」


「そう、お父様のご用ならせっかく街まで行くのだし乗せて結構ですわ」


「ありがとうございます。ではクロエ様……」



 ガイウスが馬車にエスコートしてくれる。

 馬車に乗ろうとステップを一段上がったところで、ガイウスが囁いてきた。



「紙袋からいい香りがしているが、それは俺には貰えないのだろうか?」



 あまりにも顔が近く、唇が耳に少し触れた。耳を抑えて振り返ってガイウスの顔を見ると、とてもニヤニヤした笑顔を浮かべている。



「もう! 今回はありませんわ! どうしても欲しければ、使用人用に作ったものをキッチンに置いておきましたので、無くなる前に取りにお行きなさいませ」


「そう言われると思って、すでに」



 ガイウスは自分のハンカチの中から、紙ナプキンで包んだクッキーを見せてくる。

 もう持ってるんなら、わざわざあんなこと言わなくてもいいのに。

 ちょっとした憤りと耳についた感触がまだ取れなくて、私は赤くなった顔を見られないようにガイウスから顔を逸らして馬車に乗った……のに! お父様の大切な荷物とかで、馬車には荷物とともにガイウスも一緒に乗りこんできたので、ちょっと地獄の気分だった……ぐう。


 とにかく今日はアメリアとの仲直り&ハルとの親密度上げが目標!

 ガイウスのちょっかいについては考えないようにして、目標を達成することに意識を向けよう! 乗り越えれば晴れて引きこもり生活ゲットだから!


 自分を奮起させて馬車を降り、いざ学び舎へと足を運ぶ。



「クロエ、おはよう」



 自分に気合いを入れた直後に声をかけてきたのは、アメリアだった。

 ビクっとした私に「?」顔をしたアメリアは、困ったような笑みを浮かべる。



「アメリア、おはよう。いつもながら早いね。教室まで一緒に行こう?」


「ええ、喜んで。そういえば、週末の討伐は大活躍だったそうじゃない。ナイル様をバジリスクから救ったって聞いたわよ?」


「!!? そんな話、どこから……?」


「ジーンと名乗る用心棒からギルドで聞いたの。何でもクロエは極大魔法を使って大活躍だったとか。私もクロエの活躍を見たかったな~!」


「その話、どこからどこまで聞いたの?」


「どこからどこまで? ミノタウロスとバジリスクを倒して、その時ナイル様が受けたバジリスクの毒が消えなくて困ったけど、クロエが血清を持っていて助かったって話よ」


「そ、そう」



 口移しの話が流出していなかったことにホッと胸を撫でおろして、ジーンがちゃんと真実の部分はぼかしてくれていることに安堵する。

 シモンとナイルが口移しとか、お互いの名誉にかかわるもんね。現場では私がしたことになっているけどね!!!

 他愛のない話をしながら教室に着き、お互いの机に座る。



「ねえ、アメリア。私、今日クッキーを作ってきたの。どうかな?」


「ありがとう! クロエのクッキーは本当に美味しいもんね! 売ったらいいのにと思うレベルだよ?」


「ああ、以前ハルにも同じことを言われた。勿論断ったけどね」


「え!? ハルさん?? クロエ……やっぱりあなた……」



 言ってから、しまったと思ったけどもう遅い。アメリアは私とハルの関係を誤解していて、今日はそれを解こうと思っていたのに……。

 このままでは更に拗らせてしまいそう。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次話は12時更新予定です。

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