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【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム中盤
52/92

ご都合展開で引きこも…れない③

「あ! クロエ様、こんにちはー!」



 ハルのお店に行くと、元気よくハルが挨拶をしてくれる。

 とってもかわいい笑顔で、見るだけでキュンとしちゃう。本当にクロエより年上の男性なのかと疑ってしまう(何度でも)。



「こんにちは、ハル。今日はお店、繁盛しているみたいね?」



 今日は休日なので街の人出もまあまあ多い。

 ピーカラの世界でも、占いやおまじない系アクセサリーが好きな女性は割と多い。ハルの占いは予約制だけど、アクセサリーはいつでも見られるし、価格帯もリーズナブルな物から高級品まで幅広く、常連も割と多い。

 中にはハル目当てのお嬢様もいるけど、ハルはあくまでもお客様対応をしている。



「今日はどうされましたか?」


「先日、当家の執事がお世話になりましたので、そのお礼としてハルさんにディナーでもと思いまして。今日はご迷惑だったでしょうか?」



 店内には数名のお客様が居て、中にはどこかの貴族令嬢がいらっしゃるので、ハルとの会話は丁寧にするよう気を付ける。

 これはこれで「ごっこ遊び」みたいで楽しいんだけど、他のお嬢様からの視線が痛くて気疲れはするかも。



「お気遣いありがとうございます。お客様がいらっしゃるので、店内でお待ちください。こちらへどうぞ」



 店内の休憩スペースの椅子を引いて、エスコートしてくれるハルのさりげない所作からオトコマエを感じる。可愛い顔とのギャップ萌えしちゃう。



「ハル、今日も男前で素敵だね」



 座るときにこっそり耳打ちすると、ハルは嬉しそうにはにかんで小さな声で「照れるなあ」とボソッと言うと、パタパタとお得意様の方へ走って行った。

 ハルを待っている間、持参の小さなスケッチブックにハルのお店をスケッチする。こうしてしっかり観察してみると、ハルのお店は小物までこだわって作られているのが良く分かる。

 店内装飾やテーブル上の小物など、三枚ほどスケッチが終わった頃、ハルが声をかけてきた。



「わー、クロエさん上手! プロみたい!」


「そんなことないよ、私はちょっとかじってるだけだから。お客様は?」


「うん、全員お帰りになったよ! それより、ディナーのお誘いなんて嬉しいな!」


「ごめんなさい、いきなり押しかけてきて。予定は大丈夫だったかな?」


「もちろん! で、どんなお店に連れて行ってくれるの?」


「うふふ、それはナイショ!」



 出がけにガイウスに指示した仕事は、ハルを招待するレストランを予約することだった。

 お店は行きつけの少し高級なレストラン。コースはガイウスに一任してあるので、どんな料理が出てくるのか私も知らない。


 コンコン!


 お店の扉をノックする音がする。お店に入るのにノックとは律儀なお客様が居たものだと思って見ると、そこにはガイウスが立っていた。



「!? なんでガイウスがここに!!?」



 慌てて扉を開けると、うやうやしく頭を下げたガイウスは紙袋を二つ持っていた。



「お嬢様。レストランの予約を取りましたのでお迎えに上がりました。こちらにお着換えください。もちろん、ハル様の分もご用意しております」



 そう言うと、紙袋のうちひとつを私に、もうひとつをハルに渡す。

 ガイウスはハルに紙袋を渡すと、あの時はありがとうございましたと丁寧にお礼をしている。そういう律儀なところがガイウスのいいところだなと思う。

 本当はガイウスには予約だけお願いしたのだけど、直接お礼を言いたかったのかな?


 私との親密度がカンスト目前のガイウスは、気を付けていないとエンディングに向けた恋愛イベントが発生してしまう。気分的には、ロードできるように今この瞬間をセーブしておきたいくらいだ。

 とにかく私の誕生日イベントが終わるまでは、ギリギリの状態をキープしないと私の希望する友情エンディングを見ることができない。

 そんな私の心配をよそに、ハルとガイウスの二人は和やかムードで会話が弾んでいる。


 せっかくガイウスが衣装を用意してくれたので、お店の一角を借りて着替えをし、身支度を整える。私は黒とピンク系ベージュを使った派手過ぎない上品なドレス。ハルは黒のタキシードでビシっとキメていて、少し幅広のネクタイがとてもよく似合っている。



「ハル、すごく良く似合ってる! かっこいい!」


「クロエさんもとても素敵です。なんだかちょっと、緊張しちゃうな」


「お二人とも、私の見立てどおりよくお似合いでございます。ではこちらへ」



 ガイウスのエスコートで馬車に乗り、お店まで送ってもらう。

 馬車が到着したのは飲食エリアの中でも高級店が立ち並ぶ場所で、ハルの表情がちょっと固まっているように見える。



「ハル、大丈夫?」


「こんな高そうなところでご馳走してもらえるなんて、緊張する」


「大丈夫! 出来るだけカジュアル寄りのお店にしてるから」


「あはは……」



 そんなに心配しなくても大丈夫なんだけどなあ。

 私も前世、仕事の関係で高級レストランに連れて行ってもらった時、ビビってこんな風になっていた気がするのを思い出し、なんだかちょっと微笑ましく思った。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

日曜日なので次話はゲリラ的に更新します。

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