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【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム中盤
51/92

ご都合展開で引きこも…れない②

 魔法局に着いた私は、ルカから褒賞で渡された転移の指輪をはめてエレベーターに書かれた魔法陣に乗る。

 以前来た時は何度か転移したけど、特別な指輪は呪文すらなしですぐにルカの執務室前の魔法陣に転移することができた。


 褒賞の品、実は凄い物なんじゃ?

 これは絶対に紛失できない!


 指輪を見ながら軽く身震いしてしまった。

 一呼吸おいて、執務室のドアを軽くノックしようとしたところで、背後から声がかかる。



「お前はノックせずに気軽に入っていいぞ、クロエ」



 振り向くと、そこにはルカが立っていた。



「ルカ様、流石にそれは不敬に当たりますわ。私は貴族令嬢とは言え一般市民で、ルカ様は魔法局長。それに、あいにくと他人の執務室にノックなしで入る教育は受けておりませんの」


「そうか」



 ルカは少し寂しそうな顔をしたように見えたけど、一瞬で眼鏡の奥はいつもの気だるげな表情に戻っている。

 そのまま執務室の扉を開け、私を招き入れてくれた。


 図書室や古本屋のような、独特な紙とインクの匂いが少し心地いい部屋は、やっぱり薄暗い。



「それで? 今日は何の魔法書を読みに来たんだ? 丁度休憩時間だ。探してやる」


「今日はSランク以上の魔法について少々学びたいと思っておりました」


「ほう、Sランク以上の魔法か。学問所ではSランクまでしか教えないからな。知識として知っておくには必要だろう。属性ごとにあるがどうする?」


「出来るだけ広範囲を知りたいと思っておりますの。全属性がまとめられているものはありますか? その中で気になったものを更に細分化して調べられると嬉しいのですけれど」


「それなら、これがいい」



 ルカが一冊の古びたノートを手渡してきた。中身は几帳面な文字でびっしりとS級からそれ以上のランクの魔法をまとめてある。

 属性ごとに索引もあり、とても分かりやすい。



「素晴らしいですわ! しかし、これは?」


「ああ。俺が十四歳の頃、勉強がてらにまとめたものだ。何の本のどこの章に書かれているかも書いてあるから参考にするといい。気になった魔法があれば、俺が直々に教えてもいいぞ」



 ドヤ顔のルカを見て、その自信は積み上げられた努力の上にあるものなのだと改めて知らされる。



「こんな……ここまで丁寧にまとめられたノートは見た事ありませんわ。ルカ様の努力だけでなく、お人柄までがこの一冊を見るだけでも伝わってまいります。大切に拝見いたしますわ」


「そんな大層な物でもないがな。まあ、そのノートの価値が分かるのはお前くらいだろうが」



 少し嬉しそうな顔をしたルカは、指を鳴らしてテーブルセットを呼び出す。

 私はソファに座ってゆっくりノートをめくり、自分でもその中から気になる魔法のメモを取り一覧にする。メモの一覧から目的の本を探すだけなので、作業としてはとてもスムーズだ。

 私がどの魔法から覚えようかリストとにらめっこしていると、ルカが「知識として覚えておく魔法」と「実際に覚える魔法」の選別を手伝ってくれたので、更に時短になった。



「ルカ様は博識で、大変勉強になりますわ。ありがとうございます」


「同年代で話が合う者が居ることが珍しいだけだ。いつもは年長者とばかりと話をしているからな」


「そう言っていただけると、私も勉強し甲斐がありますわ」



 ルカに笑顔を向けると、照れたのか顔を背けられてしまった。耳がほんのり赤くなっているので、照れは確定だと思う。

 大人びてはいるけれど、まだまだ少年なんだなと思わずニンマリしたのはここだけの話。


 何の気なしに時計を見ると、執務室に来てから二時間ほど経過していることに気が付いた。



「ルカ様、そろそろ失礼致しますわ。魔法の構築と詠唱については自宅でしっかり叩き込んでまいりますので、次に伺うときは練習室をお借り致しますね」


「時間は別に気にしなくてもいいのだが。遅くなれば送る」


「ありがとうございます。お気持ちは大変嬉しいのですが、このあと所用がございまして。本日はそろそろ失礼いたしますわ。…………あ、そうでした! これを」



 私はルカへのプレゼントをバッグから取り出して手渡すと、ルカは驚いた表情を見せる。



「これは……?」


「執務室をお借りするお礼ですわ。もしかして、ご迷惑でしたでしょうか?」


「いや、その逆だ。俺がなぜ星を好きだと? 誰かに聞いたのか?」


「その品を見た時、ルカ様がお好きそうだと思いましたの。好みに合って良かったですわ」



 本当は、攻略サイトに乗っていた公式の専用攻略アイテム(プレゼント)だから、誰かに聞いたと言うより元々知っていたんだけどね。

 せっかくなのでどのように起動するか見てみたいと言うと、ルカはウキウキしながら箱からプラネタリウムセットを出して、台座に魔力を込めはじめた。


 注ぎこまれた魔力は光となって部屋に星座を映し出し、元から薄暗い部屋に映し出される星の光はとても幻想的で美しかった。



「綺麗……」


「そうだな」



 思わず感嘆の声が漏れると、ルカも相槌を打ってくれる。

 その背景には星座とともに綺麗な花々が舞っている。本日のスチル二枚目ゲット!

 少年のようにキラキラとしたルカの瞳には星座が写り込んでいて、私の想像していた以上に……実際に見るスチルのルカの顔は綺麗でとても素敵だった。


 五分ほど星を見るルカに見とれてしまって、慌てて私は執務室をあとにした。これからハルのお店に顔を出して、親密度を少しでも上げておく。

 アメリアが近くに居れば、お茶でもしながら女子トークで親密度上げもしておきたい。


 何人もの人と合う計画を半日に詰め込むのは、流石に無謀なスケジュールだったかも?


 少々自分の計画センスのなさに嫌気がさしてしまったけど、もう一度MAPでみんなの居場所を把握して、まだ公園のお店に居るハルの元へ急いだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

日曜日なので次話はゲリラ的に更新します。

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