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【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム序盤
30/92

狩猟が終わったら引きこもりたい④

 なんと、私を守るつもりだったのか目の前にシモンが立ちはだかったものだから、混乱魔法がワイバーンだけでなくシモンも一緒に貫いてしまった。



「あ」


「うぉ?」


「ギィイ!」



 何とも締まらない声が辺りに響く。

 ワイバーンも落ちたけど、シモンも落ちた。だらしなく半開きになった口、目がとろんとなってその場に崩れ落ちる。

 この魔法にかかると、屈強な兵士だってイチコロなのだ。

 慌てて倒れたシモンに駆け寄り、介抱しようとしたけど、顔を見る限りしばらくは現実に戻ってこれないみたい。


 光魔法が使えたらなあ。混乱を治せたのに。

 今はサポート魔導士さんまで捕獲補佐に駆り出されいる状態なので、目の前のワイバーンとシモンをどうするか悩んだ結果、シモンは起きるまでひざまくら。魔法でワイバーンは捕縛して、傭兵が捕獲しに来るまで待つことにした。


 男性を膝枕するのって、なんだか照れるんだけど、そうも言っていられない状況だ。

 混乱しているシモンは時折苦しそうに痙攣(けいれん)する。痙攣するたびに、私も驚いて反射的に体がビクっとしてしまう。

 何とかラクにしてあげたいとは思うんだけど……混乱を治す以外で楽にさせるには? 夢でも見れれば少しは楽になるのかな?

 使ったことはないけど、クロエは混乱と同系統の闇魔法で「いい夢を見させる」という精神系魔法を知っている。


 シモンの頭に意識を集中し、いい夢が見られるようにと願いを込めて魔法を発動する。闇色の円形がシモンの頭を包み込むと、シュン!と吸い込まれていく。

 シモンの苦悩の表情が安らかになり、呼吸もスースーと言った落ち着いたものに変わった。


 ふう、よかった~!


 さてシモンはもう少し寝ててもらって、私は戦闘に加わろうかな?

 よっこらしょっ……って、た・立てない(汗)


 シモンは筋肉が凄い。しかも甲冑を身にまとっていることもあり、そもそも重い。

 さっきは苦しんでいて身体が硬直していたのと、私自身が必死だったので感じなかった重みが、力を抜いた状態なので余計にずしっとひざにかかる。


 いやこれ、どうしたらいいんですか?

 クロエの身体は貴族令嬢なので、そもそもひざまくらには向いていないし。地べたに座るなんてことは今まで無かったから、足がしびれるのも早いのよ。


 足がしびれてくる感覚に半泣きになりながら、私は誰か来ないかと必死に辺りを見回した。



「何してんだ? お嬢さん?」



 諸悪の根源、ジーンが登場した。

 私が「もう、何でもいいから助けて!」と懇願すると、ジーンがシモンを担ぎ上げる。



「なんだ、コイツ。ひざまくらとか……クソ羨ましいな?」



 また軽口を言うジーンだけど、それを咎める力も残っていない。

 足がしびれて感覚がない。一気に血が流れるジワジワする感覚と必死で戦う私を見て、一大事とばかりにジーンが人を呼ぶ。



 いや! やめて! ただ、足がしびれてるだけだから! 恥ずかしいから人を呼ばないで!



 足のびりびりに声を出す気力もない私の心の叫びもむなしく、わらわらと人がやってきた。

 ルカが癒し魔法をかけてくれて、私もシモンも事なきをえたのだけれど、ルカの顔を見ると呆れているようだったので恥ずかしさ爆発だった。


 ワイバーンは、私が落とした二匹と襲ってきた一匹の合計三匹を捕獲出来たそう。

 残りのワイバーンは乱獲になるとのことで山へ帰したんだって。



 兎にも角にも、何とか一人もけが人を出すことなく捕獲イベントは終了することができた。

 今回捕獲したワイバーンは八匹。

 目標より沢山捕獲出来たことで、戦力が強化できると皆大喜びをしている。しかも半日程度で達成できてしまったというのは、かなり異例のことらしい。


 私と言えば、色々と疲れてしまって早く家に帰りたい気分になっていた。

 そんな私の様子を見て、ルカが声をかけてくれる。



「クロエ、今日はご苦労だった。少々トラブルがあったのに、この速さで捕獲が終えられたのはお前の活躍があってこそだ。まだ王城に戻るまでに時間がかかるだろうし、疲れているのなら家まで送るが?」



 魔法の使い過ぎと思われたのかな? 魔力はほとんど使っていないんだけど(なにせMP5500持ちなので)、気遣いが有難い。



「ありがとうございます。何から何までご迷惑をおかけしてしまって」


「いや。無茶な予定を立てたのに、それ以上に働いてくれて有難かった。こちらこそ、お前は一般人なのに気遣いが足りなかった。申し訳ない。改めてお詫びに伺おう」



 真面目に謝るその姿に、ちょっとキュンとしてしまったのは秘密にしておこう。

 そのまま空飛ぶ壺に乗せられて、家まで送ってもらうことができた。


 ふぃー! 疲っっっかれたー!!!


 部屋に戻るとベッドに倒れ込む。今日はあまり普段使う事のない闇系魔法を沢山使ったので、精神的な疲れが少しある。

 まだお昼を過ぎたところで、お腹は軽く空いているけど捕獲の緊張と気疲れから、ウエンディが何か言っているのも聞き取れず……そのまま眠ってしまった。



 このまま数日、引きこもりたいなあ。昼間から眠れるなんて最高! ああ、ベッド幸せ♡

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次話は23時更新予定です。

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