注目を浴びるのは嫌なので引きこもりたい①
討伐から帰ってきた私は、しばらく家から出ずに引きこもっていた。
学問所がテスト明けで一週間お休みなのが救い。その間、イラストを描いたり漫画のネームを描いたりして過ごしていた。
ネットの無い世界では私の描いているBL漫画は誰にも見せられないけど(恥)
引きこもっている理由はふたつ。
ひとつは討伐に行ったせいで親密度が上がりまくり、恋愛イベントがラッシュで起こって私が耐えられないこと。
もうひとつは、ジーンがやたら私にくっついて回るので、他の男性陣がざわついて一触即発になってしまうこと。
私としてはジーンの事は最推しなので、近くで観察できることが嬉しいのだけど。
ガイウスとクロムのピリピリが激しすぎて、衝突を避けるために引きこもりをしている。
私としては引きこもれることは嬉しいんだけどね、こうして思う存分絵が描けるし!
ただ、あと数週間でクロエの誕生日なのに、残り一人の恋愛対象者がまだ出現していない事が気になっている。
魔法局で魔法の鍛錬でもしていれば出会えそうな気はするんだけどね。ここ数日の引きこもり生活が楽しすぎて、実は外に出るのが億劫になっていたりする。
「ウエンディ、ステータスを見せてくれる?」
『ハイ、かしこまりました。現在のステータスです』
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クロエ・スカーレット(17歳)
Lv.21
属性:火・地・風・闇
HP(体力)…………… 102
MP(魔力)…………… 5500
ATK(物理攻撃力) … 53
MAT(魔法攻撃力) … 2000
DEF(物理防御力) … 28
MDF(魔法防御力) … 2500
LUK(運の強さ) …… 346
親密度
アメリア(幼馴染)…… 450/500
クロム(婚約者)……… 625/999
ナイル(婚約者の弟)… 503/500
ガイウス(執事|暗殺者) 640/999
ハル(占い師)………… 383/500
ルカ(魔法局長)……… 220/500
ジーン(用心棒)……… 392/500
???…………………… 000/500
特別スキル
スチル耐性……………… 430
虫の知らせ……………… 320
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「はあ、なかなか親密度を下げるのは大変なのね。ガイウスは執事だから毎日顔を合わせるし、クロムも相性がいいから少し話すだけでも親密度上がっちゃうし。
アメリアとは討伐以来、顔を合わせていないから親密度下がっちゃうし」
討伐のおかげで、男性陣との仲はかなり進展したし、LUKも悲観しなくていい程度には上がってくれた。
その代わり、アメリアとの仲が微妙に落ち込んでいる。ルカともあれ以来全然顔を合わせていない。
これだけLUKが上がれば最後の一人にも出会えるはずなんだけど、引きこもっていては会えるものも会えない。
今はまず、親密度低い組の親密度を上げておきたいところなんだけど、どうしたらいいかなあ。
「ウエンディ、親密度が低い人と親密度を上げるためにはどうしたらいいかなあ?」
『お答えします。それはデートまたは討伐がよろしいと思います』
「はあ、だよねえ。となるとルカと討伐に行ける程度に親密度を上げないとかなあ」
『ハイ、そう思います。まずはデートをされますか? ルカ様は、有事以外はほとんど魔法局から出られません』
「有事……討伐とかそういうのに、こそっとついて行くとか出来ないかな?
今は私、周りがうるさくてデートに誘うのは難しそうだから」
『ハイ、確認します』
しばらく沈黙が続き、ウエンディの検索が終わるのを待つ。
検索できるなら、ネットワーク繋げてSNSとかできたらいいのにね。ネットが恋しい……。
『クロエ様、丁度明日北の鉱山の奥に居るワイバーン狩りがあるようです。そちらにルカ様が同行されるようですが、ご一緒されてはいかがでしょうか。討伐ではありませんが、狩猟は討伐より難易度がありますので親密度も上がると思われます』
「なるほど、狩猟ね。ゲームではそんなイベント無かったなぁ。ゲームの世界だけど、ゲーム通りではないってことだよね。この世界で"生きている"ってこういう事なんだねぇ」
一度この世を去ったからこそ「生きている」という事により感謝してしまう。
こうしてイラストを描くことが出来るのも生きているからだし。引きこもれるのだって生きていないと出来ないもんね!
「問題は、どうやって狩猟について行くか、だけど。また、お父様にお願いしてみようかな?」
『ハイ、ワタクシもそれが一番確率の高い手法と考えます。今から魔法局に向かわれますか?』
「うん、行ってみる。その前にMAP出してくれる? 誰にも会わずに何とか魔法局まで出かけたいんだよね」
『承知いたしました』
ウエンディが「誰がどこにいるか分かるMAP」を出してくれる。
厄介なのはやっぱりガイウスとジーンの二人。とにかく私の行くところに必ず現れるから。殺し屋も用心棒も情報が命だろうから、何かしらのアイテムを使っていると思う。
私だってこうやってMAP見てるしね、人のことは言えない。
「魔法局までは、この屋敷を出て徒歩で三十分。馬車なら十五分。ガイウスは屋敷に居るし、回避は難しいから魔法局まで馬車で送ってもらうとして。問題はジーンだけど、今はギルドに居るみたい。ギルドの前を通るけど、馬車なら大丈夫かな?」
ルートの確認をして、馬車を手配する。
ガイウスは喜んで私のエスコートを買ってくれる。馬車に乗る時なんて普通にお姫様抱っこだもん。
流石の私ももう慣れちゃったけど、恥ずかしいから屋敷の外ではやらないで欲しいとキッチリ調きょ……コホン、お願いしてある。
基本的にガイウスは御者の隣に座るか、後方の荷台に乗っているので、車の中に入ってしまえば割と平和だったりする。
スチルは親密度が一定値まで上がった時と、恋愛イベントが発生した時に見ることができるのだけど、クロムとガイウスに関してはこの数日で現時点で見れるものは出尽くしている。親密度を爆上げさえしなければ、しばらく平和に過ごすことができそう。
問題はジーン。なぜか最初から親密度が高いのに、まだ一枚もスチルが発生していない。
私は最推しのスチルに耐えられるのかな……そこが一番不安で、出来るだけ会わないよう避けている。
会いたいけど会えないって、何かの歌詞にありそう。恋愛のような色っぽい悩みではないけれど。
ギルド前を通るときはカーテンを閉めて、中を覗かれないようにすることでジーンを回避する作戦……だったのに。
なぜ、ここに! あなたが! 居るの!!?
「よお、お嬢さん! どうして魔法局にいるんだ?」
魔法局の中にある受付前の待合所にジーンが座っていた。
ガイウスは中にまではついて来ないので、一触即発は免れたものの……私の努力が報われなかったことがちょっと悲しい。
はあっとひとつ溜息をついて、ジーンの質問に答える。
「ごきげんよう。私の父が魔法局の役員なのですわ。ご存知ありませんでした?」
「ああ、通りであの魔法の腕前か! なるほどな、ようやく合点がいった。スゲエもんな、あんたの魔法」
「ありがとうございます。あなたはなぜ魔法局にいらっしゃるの?」
「明日大規模な捕獲があるって聞いてな。統括が魔法局だって言うから、参加させてもらえないかと思ってちょっと直談判に」
ニカっと笑った顔が、最高に好みのタイプ……じゃなかった! ついつい見とれている場合じゃない! ワイルドイケメン最高!と心の中は万歳の嵐ではあるけれど、ここはビシっと参加しないよう伝えなくては。
「そんなに簡単に一般人が捕獲に参加できますの? ケルベロス一体も倒せないのに。身の程をお知りなさいな」
「そんなに冷たいコト言うなよ? 俺だってあの時は丸腰だったんだ! いきなり出てきたから全部荷物はパーティに預けてある状態で、身に着けている道具は銃一本。すぐに玉は尽きるし、散々だったんだ。手元に道具さえあれば、ケルベロス一体くらい!」
討伐の帰りにもそんなことを言っていたけど、一生懸命取り繕う姿もいちいち可愛いからずっと眺めていられる。
「クロエ様、許可が下りました。どうぞ、お入りください」
受付で名前を呼ばれ、名残惜しいけどジーンとはここでお別れ。お父様の執務室まではエレベーターを使う。
一度行ったことがあるので、今日は職員の案内を断って一人で乗り込む。
そう、一人で……って、なんでジーンも一緒にエレベーターに乗り込んでくるの?
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次話は17時更新予定です。
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