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【完結】悪役令嬢は引きこもりたい  作者: MURASAKI
ゲーム序盤
22/92

討伐がえらいこっちゃで引きこもりたい②

 翌朝。遠足前の子どもみたいに緊張で早くに目が覚めたので、キッチンを借りて討伐用のお弁当を作ることにした。

 お弁当は使用人の皆様が作ってくれるので、私はお菓子担当。

 あ、サンドイッチに具材を詰めるくらいのお手伝いはちゃんとしましたよ?


 今日のクッキーは、お願いして型抜きを買ってもらったので、それを利用して形を楽しめるようなものにしたいなあ。

 ハートの型を使ってゲン担ぎになるよう四つ葉のクローバーを作ってみたら、結構うまく出来て自分でも満足してる。

 抹茶パウダーがあれば、緑のはっぱに見えるクッキーが作れたのに。今度抹茶パウダーを仕入れられないか調べてみよう。


 運営(かみ)のご都合で作られている世界だから、きっとどこかに日本のものがあるに違いないと、確信している。

 色鉛筆に「そらいろ」とか「やまぶき」があるくらいだから。


 クッキーとお昼のサンドイッチをバスケットに詰めると、五人分だからやたらすごい荷物になってしまった。この荷物一式は、ガイウスが荷物を小さくするマジックアイテムを持っていたので、全部きれいにしまってくれた。


 持つべきものは有能な執事よね!


 朝食を食べて待ち合わせ場所のギルドに行く。

 時間、ちょっと早かったかな?と思ったにもかかわらず、王子二人がすでにギルドに到着していて、キラキラオーラがギルドの一角を違う世界に変えていた。

 知っていたけど、やっぱりクロムとナイルの二人が揃うとオーラが違う。慣れている私でさえ近付くのは躊躇するレベルで眩しい。



「お待たせしてしまって申し訳ありません」


「クロエ。私たちが待ちきれず早く来ただけだから、気にしないでくれ」



 久しぶりに会うクロムは、1000%の笑顔で迎えてくれる。目を細める私の姿を見たガイウスから、なぜか黒いオーラを感じる。

 キラキラとダークオーラに挟まれた格好の私は冷や汗ダラダラ……。一触即発にならないかと焦る。


 一応ガイウスは、私とクロムの関係を分かっているので、大人しくしていてくれるはず。

 裏じゃない方の職務を全うする約束はしてくれているので、どす黒いオーラくらいで済むなら目をつぶっておこう。



「兄上と一緒にこうして行動をするのは久しぶりで、実は私も嬉しいんですよ?」


「確かに、ナイルと一緒にどこかに行くのは久しぶりだな。遠征などは大勢の兵と一緒で、お互いどこにいるか分からないしな」



 王子二人は、久しぶりに一緒に行動するのだそう。

 二人の話す姿は美しいけど、会話の言葉遣いが綺麗すぎて兄弟というより他人と話してるみたい。

 ナイルはクロムと一緒の時は、余所行きの王族風の言葉を使う。と言うより、私とアメリアと三人(または二人)の時だけしか馴れ馴れしい言葉は使わない。それはアメリアも同じで、普段はちゃんと伯爵令嬢としてふさわしい言葉遣いをしている。

 アメリアはたまに、丁寧な言葉が混じっているのが可愛いんだよね。


 そんなことを考えながら、兄弟の会話を微笑ましく聞いていると、ハルがやってきた。



「ごめんなさい、ちょっと出がけに色々あって。遅くなりました」


「いいえ、時間より五分早いですよ。我々が早すぎただけです。お気になさらずに」



 なぜかガイウスが時計を見ながら対応してくれる。

 さすが! 執事の仕事ちゃんとしてくれてる。



「では、お嬢様。討伐の出発手続きに参りましょう。カウンターはあちらでございます」



 ガイウスが私の手を取ってエスコートしてくれる。

 カウンターの位置も手続きも、私はよく分かっているんだけど……いちいち言うのも面倒なので従った。



「あ、ボクも一緒に」



 ハルも一緒についてきてくれる。

 そして、こそっと私に耳打ちをする。



「クロエさん、あの二人ってまさか王子様じゃないですよね?」


「ええ、そうよ。幼馴染なの」


「聞いてないですよ、ボク。恐れ多くて一緒に行っていいんでしょうか?」


「心配ご無用です。お二人は身分についてとやかく言う方々ではありません」


「うう、そういう事じゃなくってね!?」



 半泣きになりそうなハルを横目に、バッチリ五人の名前を書いて討伐登録が終了した。

 さて、これでようやく討伐に行ける!


 早速、王子二人がキラキラオーラで人避けしているテーブルに戻り、軽く打ち合わせをして討伐に出かける。

 王都を出て歩いて二時間ほどの場所、てっきり歩きで行くものだと思っていたら、馬が用意されていた。


 そ、そうか。王子が移動するのに徒歩はないよね?


 私とクロム、ナイルとハル、ガイウスに分かれて馬に乗る。

 ハルはガイウスと乗ると言ったけど、馬に乗り慣れていないガイウスには二人乗りは難しいだろうということになり、この組み合わせとなった。

 なったのだけど……。


 正直、馬に二人乗りは近い!!!


 スチル耐性があるとはいえ、背中にクロムの温もりを感じながら馬に揺られるのは……あ、これスチルじゃないから耐えれるわけないや。


 まだ森に入ってもないのに、私は緊張のあまり口からエクトプラズムを出す勢いで、半分意識が飛んでいた。

 色々クロムが話をしているようだけど、生返事しかできない。

 念のためウエンディを持ってきていてよかった……内容を把握するために、あとでこのシーンを再生してもらおう。違う意味でダメージは受けそうだけど、聞いていなかったという不義理はしたくないもんね。

 とはいえ、やっぱり私には討伐依頼は早かったかもしれない。



 今から引き返すことは……無理ですよねぇぇ!!?

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次話は23時更新予定です。

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