討伐がえらいこっちゃで引きこもりたい①
『クロエ様、ステータスを表示致します』
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クロエ・スカーレット(17歳)
Lv.21
属性:火・地・風・闇
HP(体力)…………… 102
MP(魔力)…………… 5500
ATK(物理攻撃力) … 53
MAT(魔法攻撃力) … 2000
DEF(物理防御力) … 28
MDF(魔法防御力) … 2500
LUK(運の強さ) …… 222
親密度
アメリア(幼馴染)…… 480/500
クロム(婚約者)……… 505/999
ナイル(婚約者の弟)… 473/500
ガイウス(執事|暗殺者) 512/999
ハル(占い師)………… 246/500
ルカ(魔法局長)……… 220/500
???…………………… 000/500
???…………………… 000/500
特別スキル
スチル耐性……………… 320
虫の知らせ……………… 250
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朝からウエンディがうるさいので、起きてすぐステータスを確認すると、魔法の特訓でレベルが上がっていた。やったー!
キャラもあと残り二人。
LUKが思ったより上がっていないのは、ハルとの親密度上げのために色んな事をおざなりにしていたせいと、私のネガティブ発言がなかなかやめられないせいだ。
数週間で、急に前向きになれって言われても、無!理!
「魔法関係のステータスの上がり方がエグいなあ、ものすごく上がってる」
『ハイ。クロエ様の魔法は、使えば使うだけ成長されるよう初期値で設定されています』
「初期値……ね(汗)」
んー、昨日はじめて会ったはずのルカとの親密度が割と高めだ。ひょっとして相性がいいのかもしれない。
普段不愛想なのに、あの笑顔は最高だった! ふはぁ///
眼鏡男子さいこう!
ルカのキラキラ笑顔を思い出して思わずニヤニヤと笑ってしまう。またあとで、スチル一覧を見ながらイラストでも描こうかな?
だいぶイラストも溜まってきたし、新しいスケッチブックを買いに行かなきゃ!
あれこれと脳内でスケジュールを立てていると、ウエンディが授業に遅れると急かすので、だらだらしつつ急いで準備をする。
矛盾してるけど、女子なら分かるよね? 抜くとこ抜きつつ急げるとこは急ぐって感じ。
朝食を優雅にいただき、ガイウスにエスコートされて学問所へ。
昨日はクロエの記憶のインストールで学校をサボってしまったので、アメリアとナイルがすごく心配してくれた。
本当に友達って有難いなって改めて思ったので、感謝の気持ちをしっかり伝えておいた。
まさか、クロエの記憶を呼び覚まして号泣し、そのまま思い付きで魔法の特訓してレベルアップしました、なんて報告出来るはずもない。
本当にごめんなさい。
そんなこんなでクロエの記憶と融合した私は、ビックリするほど勉強が頭に入ってくる。
凄い。これが勉強出来る人の考え方かなのねと、かなり感動した。
最初からこの記憶があったなら。私の記憶が目覚めてからの日々が恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい気分になる。
お昼の授業が終わって、アメリアとナイルと一緒にギルドへ行ってみることになった。
私が「討伐に行ってみたい」と言ったので、ふたりが依頼を選んでくれるらしい。
やっぱり友達っていいね~!
学問所は王宮の近くなので、みんなでギルドまで歩いていくことになった。
ガイウスが迎えにくるのはもう少しあとだし、どんな依頼があるか見てみるくらいならすぐに終わるしね。
ギルドに入ると、筋肉モリモリの屈強な男女がそれなりにいらっしゃった。
もちろん魔法使いやヒーラーと言った方々もいらっしゃるけど、それよりも筋肉に目が行ってしまう。
「クロエ、はしたないですわ」
私の目があまりに筋肉ばかり追っているものだから、アメリアがたしなめてくれる。
はい、ごめんなさい。美しい肉体に目が無くて。
「そういえば、アメリアは討伐に行ったことがあるの?」
「うん、あるけど……あんまり最初は上手く立ち回れなくて、沢山助けてもらったりしたわ」
「確かに、あれは酷かったな。今はだいぶ形にはなっているみたいだが」
「えっ!? ナイルとアメリア、一緒に討伐に行っているの?? いつから???」
友達の知らない行動を知って、若干ジェラシー。ひょっとしてナイルとアメリアは付き合っているの? すごくお似合いだし!!!
じとーっと私が二人を眺めると、ナイルが提案をしてきた。
「じゃあ、初討伐は俺を連れて行ってくれ。だいぶ経験値も上がっているから役に立つぜ!」
「え、いいの!? じゃあ、アメリアも……って、そういえば……女性はパーティにひとりしかダメなんだったっけ?」
アメリアプレイのゲームでは、男性キャラを落とすゲームだからとあまり気にせずプレイしてたけど、マニュアルに確かそんな縛りがあったことを思い出した。
「アメリアと一緒に冒険の旅に行ってみたかったな」
シュンとしている私を見てアメリアが私もよと慰めてくれた。
そうこうしているうちに、ナイルが良さそうな討伐依頼を選んでくれる。
「これなんてどうだ? 西の森の奥に魔物が出没しているそうだ。ランクもDで割と簡単なやつだと思うぜ?」
「うん、じゃあそれにする。湖の側のやつでしょ? ……あ」
なんで見てもいないのに討伐内容が分かるんだと言う顔で、ナイルが私を見る。
このゲームは、アメリアを主人公に全キャラ制覇のために何度も周回プレイしたゲーム。討伐依頼は端から端までやりつくして、貼られている内容もある程度なら頭に入っている。
少しでも違うものがあるのかと期待してきたけど……討伐内容は、ほぼゲームと同じ内容みたい。なーんだ、がっかり。
ギルドカウンターで討伐依頼を受注して、明日の同じ時間……つまり24時間以内に一緒に来てくれる仲間を誘わないといけない。
仲間が揃ったら、出発前に誰と行くのかを申請しないといけないので、多少面倒ではある。
「ちゃんと残りのメンバーも集められるといいんだけど」
「ああ、それなら大丈夫だろう。兄上にも声をかけておくから」
「クロム様はお忙しくないのかしら?」
「この依頼はすぐに戻ってこられる距離だし、何よりクロエの頼みなら兄上も断ったりしないさ」
なにやらナイルの笑顔がニヤニヤに変わっているように見えるけど、気のせいということにしておく。
「コホン! じゃあ、二人はあてにしておきますね。あとは残り二人。誰を誘うのがいいかな?」
「ハルさんはいかがですか? 彼なら癒し系の魔法が得意ですし、救護班としては間違いないですわ!」
アメリアの提案を受けて、ハルを誘ってみることにする。ハルはまだ親密度が上がり切っていないけど、多分OKしてもらえる……かな? 聞いてみないと分からないから、とりあえず保留で。
あと一人は……。
どうしよう?と考えているところに、親密度が高いもう一人が姿を現した。
殺し屋で執事のガイウスだ。
「お嬢様、お迎えに上がりました。討伐など危険なことはおやめください。
ただ、どうしてもという事でしたら、私がしっかりお守り致しますのでご安心ください」
どこから私たちがギルドに来ているという情報を手に入れたのか不思議だけど、ガイウスがそう言ってくれるならと、早々に私の初討伐のパーティ五人の候補が決まった。
「念のため、ハルとクロム様の参加の是非を伺ってから、登録しに来ましょう」
アメリアとナイルの二人とはギルド前で別れ、私はガイウスと一緒にハルの元に向かう。
事情を説明して討伐にお誘いすると、50%の確率が良い方に作用したみたいで、かなり快くOKが貰えた。
これで明日には討伐に行ける!
クロムがダメだったら、他に誰を誘うかとなれば、現時点で選択肢はルカしかいない……んだけど、流石に昨日会ったばかりのルカを誘える気がしないし、クロムが来てくれるといいなあ。
帰りの馬車でガイウスが討伐について指南をしてきたけど、ちょっと上の空になってしまっていた。はじめての討伐で、ワクワクと不安の気持ちが同居しているのだから、許してほしいと思う。
気持ちの高ぶりを抑えるために、私は自室に着くとすぐにルカのイラスト作成に着手した。
出会った時の強烈なイメージを思い出し、ウエンディに出してもらったスチルを目の前に鉛筆を走らせる。
心がとっても落ち着く。イラストを描くって尊い~!
はあ。落ち着いてよく考えると、討伐に行くのちょっと早すぎたかなあ。
今日は討伐のことばかり考えていて、新しいスケッチブックを買うの忘れちゃったし。
心の中でひとつ大きな溜息を「はあっ」とつきながら、私の夜は更けていった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次話は22時更新予定です。
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