ふたりでの暮らしの中の出来事 3
家に着くと、やっぱりジュンくんに事情聴取されました。
「で?なんでお前、空飛んでたんだよ。ほうきが勝手に動いたとか言わせないからな。」
「えええっ、まさにその通りなんですけど!」
「どういうことだよ?」
「えーと、実はあのほうきで自室の掃除をしていたんですが……。掃除が終わったら、急に震えだして、開けておいた窓から飛び出してしまって、それであんなことになりました……。ごめんなさい。」
元はと言えば、私が勝手にほうきで掃除したり、窓を開けておいたりしたからです。怒られてもおかしくない………と思っていたのですが。
「あい、お前、空を飛ぶ想像とか……先のこととか、考えたりしたか?」
「へっ?…………なんでわかったんですか?」
言われたのは予想とは違うことで。思わず気の抜けた声を出してしまいました。
でも、本当に、どうしてわかったんでしょうか?
想像、というか、思い出しただけですが、先のことを考えたのは事実です。
「そりゃーお前、昔から……………っ、……ただ単に、お前がそういう顔してたからだ。」
「??そうですか……。」
やっぱり、何かを隠してますね。
昔の私を知ってる?どこかで会っていたんでしょうか?
でも、顔に覚えがないし……でも、どこかで見たような……
「っ、い、った………!」
「あい!?」
急に、頭に激痛が走りました。
目の前が暗くなってきて、座っていられなくなって、ジュンくんの声も聞こえなくなって…………。
私は、床に倒れ込んで、気を失ってしまいました。
○●○●○●○●
まただ。
また、ここに来てしまった。
あれ、1回も来たことがないはずなのに、なぜそう思うんだろう?
なにかわからない、なにかの記憶が、蘇ってくるような、そんな感覚がする。
今は、前みたいに宙に浮いていない。
自分の足で、立っていた。
ただ、すごく動きづらいけれど。
普通に動くことができるようになったとき、その場所がただの白い空間ではなく、あの草原だと気づいた。
真ん中に、あの人が立っている。
「ジューくん!」
「!」
私は彼のもとへ駆けていく。
ジューくんは、驚いた顔をしてこちらを向いた。
私は、そんな彼に思いっきり抱きつく。
彼はしっかりと受けとめてくれたが、驚いた顔は変わらなかった。
「あい、どうしてここに……?」
「わからないの。けど、ジューくんにやっと会えたよ!」
私は自分でもわかるくらいの満面の笑顔で微笑む。もしかしたら、泣いてるかもしれない。
でも、そんなことはいいのだ。やっと、大好きな人に出会えたのだから。
その思いが伝わったのか、彼は少しだけ微笑んで、抱きしめ返してくれる。それがすごく嬉しくて、また涙が出てくる。
数分間経ったあと、私達はゆっくりと身体を離した。
互いに微笑み合う。すごく、幸せだと思った。
途端に、自分の体が急速に空に向かって引き込まれ始めた。どんどん地面から、ジューくんから、離れていく。
「っ、ジューくん!!」
「………。」
必死に手を伸ばしたけれど、ジューくんは、申し訳無さそうに微笑んでいるだけだった。少しだけ、寂しそうに。
「ごめんな、あい。」
どうして、いつもそればっかりなの?
なんで、引き止めてくれないの?
どうして、いつも、忘れちゃうの?
強い浮遊感に逆らおうとしながら、私はまた、記憶がなくなっていく感覚を感じていた。
「嫌だ………いやだ!……っ、ジューくん!!」
そして、また同じように、この言葉を最後に記憶が消えてしまうのだった。




