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94.サシ飲み会

■スタートス聖教会 食堂

~第8次派遣3日目~


ナカジー強化策は順調に終った。

氷獣化した狼5、イノシシ3、鹿3、そしてグリズリーはトドメをアキラさんに譲ったが、充分に焼いてくれた。


本人も自信をつけたようだ、定時には機嫌よく戻って行った。


シベル大森林北の渓谷では、違う件でアキラさんが活躍してくれた。

アキラさんは目と耳がタケル達より随分良いようだ。


渓谷は岩がそそり立っている箇所が何箇所もあったが、アキラさんが途中でタケルを呼び止めて大きな岩の陰を指差していた。


「あそこがおかしい」


言われた場所に近づくと、ボルケーノ火山と同じように薄い板状の岩が何枚も重ねてあった。

此処の岩も作為的に積み上げられているように見える。

しかし、近づいてみないと全然わからないのに、アキラさんはよく気が付いたものだ。

すぐに岩を砕こうかとも思ったが、中が洞窟なら3人で進むのはリスクがあると考え直して、次回への宿題にすることにした。


光聖教石(転移用)を地面に埋めて、次回はそこまで転移できるようにしてある。


戻って来たスタートスで今日は二人きりで飲んでいる。

いつものようにタケルが話しかけない限りアキラさんは無言だ。


タケルが氷魔法を使えるようになってからは焼酎のロックを楽しむようになった。

神様の想定外かもしれないが、ワテル様は許してくれるだろう。


「アキラさんは、こっちでの生活にそろそろ不自由は感じないですか?」


「全然。どうして?」


「やっぱり、トイレとか風呂とか、スマホとか。後は知ってる人が居ないとか・・・」


「風呂以外は気にならない」


返事はいつも短い。


「アキラさんは結婚しようとか思わなかったんですか?」


「・・・誰かと暮らすのは無理だと思う」


-なるほど、そう言う感じなのか。


「例えばの話ですけど、このままこっちで暮らしてみたいとか思ったりします?」


「・・・」


-考え込んでいる。返事がしたくないわけでは無いようだから待ってみよう。


「一人は無理、タケルが一緒ならいいよ」


-!-


「そうですか、それは光栄ですね。・・・俺は最近結構考えているんですよ。戻ってもたいしたことは出来ないけど、こっちなら・・・何たって勇者ですからね」


「・・・」


「魔法も使えるし、金もあるし、素敵な女性も・・・、とは言ってもその覚悟はまだ無いんですけどね。向こうには親もいるし」


「うん、それで良いんじゃない」


「?」


「タケルが思うようにすれば、どちらでも僕は応援するよ」


-やっぱり、アキラさん良い人だ!


タケル達は遅くまで二人で飲み明かした。

次回はタケルも焼酎を持ってくることに決めた。


■ファミリーセブン 札幌駅前店 倉庫


タケルはいつもどおり、西條に派遣報告を行っていた。


「じゃあ、タケル君の中では魔法はイメージ通りに出来上がった感じなのかな?」


「ええ、あとは枢機卿の時間魔法があるんですが・・・これはもう少し考えたいと思っています」


「そうなんだね。それで次回以降はどうするつもりなの?」


「ナカジーは魔法で、俺達は武術をもっと強化します。それと・・・」


タケルはシベル森林北で見つけた洞窟の入り口(?)について西條に説明した。


「なるほど、そこにもボルケーノと同じような魔法石があるんじゃないかと?」


「ええ、希望的観測ですが、あれば間違いなく役に立つはずです」


「そう、何か見つかるといいね。でも、いつも次ぎのことを考えてくれてて助かるよ。タケル君の性格の・・・生真面目なところが派遣勇者に一番向いてたんだろうな・・・」


「どうかしたんですか?」


「いや・・・、実は派遣で残っているのはタケル君たちだけなんだよ」


「え!? 他の4組はどうしたんですか?」


「色々理由はあるんだけど、家の都合とか、現地の居心地とか・・・、だけどバイトの延長線で考えるとやっぱり厳しいのかな・・・」


確かにそうかもしれない。住環境は決してよくないし、リアルに死ぬわけでは無いといわれても、死や怪我の恐怖は向こうでも実感してしまう。


「もう、追加で派遣しないんですか?」


「それは良い人が見つかれば派遣するつもりだけど、中々難しくてね・・・、と言うことでプレッシャーかける訳では無いけど、引き続き頑張ってよ」


「ええ、それは出来るだけ頑張るつもりです。ところで、変なことを聞いてもいいですか?」


「何? 例の女性に関する件?」


「関係あるっちゃあるんですけど、例えば・・・このままずっと向こうにいるって言うのは出来るんですかね?」


「!・・・、それは向こうに長くいるって意味かな?それとも行ったきりで良いって意味かな?」


-そうか、そこまで考えてなかったな。


「例えば、こっちの7年で向こうの56年行っているとか・・・」


「たぶん、・・・出来なくは無いかな。やってみたことは無いけど・・・、今の10時間とかを単純に7年に換えるだけならね・・・、でも、こっちの生活が7年飛ぶことになるし、頭の中は56年の経験が増えるからどんな影響が出るかは全くわからないね」


-その通りだろう。


「今すぐ、どうするって訳では無いんですけど、魔竜討伐が実現できたら、改めて相談させてください」


全ては魔竜討伐が出来たらの話だろう。

もし出来なければ・・・、ドリーミアはどうなるのだろう?

そして、マリンダも・・・


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