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17.神に愛されし男 タケル 前編

ダイスケを中心として風呂の設置へ道筋をつけたタケル達は

魔法と武術の修練を続ける。


タケルは自分なりの解釈で、神との対話を試みていく。

■スタートス 聖教会 宿舎 ~第一次派遣 3日目~


異世界2回目の朝は自分で起きる事ができた。

昨晩も熟睡できたようだ、けだるさが心地よい。

ベッドから起き上がると背中や腕が筋肉痛でこわばっている。

顔を洗いに宿舎を出て井戸へ向かった、夜明け直後で外はまだ薄暗い。

(やっぱり、歯ブラシ欲しい。)口をゆすぎながら考える。


そのまま、空き地で柔軟体操をしてから、太陽に向かってお祈りをすることにした。

(グレン様、昨日はありがとうございました。)

(これからの魔法でお願いがございます。)

(私の手のひらが指し示す方向に炎の力をお与えください。)

(引き続きグレン様のご加護をお願いいたします。)


神との対話を追え、部屋に戻ったタケルは朝食までの時間で弓を使ったトレーニングを行うことにした。(8倍ルールだし、50回でいいだろう。)

左右の手を変えながら10回づつ、5セット弓を引き絞る。

最後の方は手が震えてしまい、引いた状態を保てないが何とかやりきった。


4人で朝食を終え、聖教会にいたマリンダさんと一緒に今日も空き地に向かう。

「昨日の炎の魔法をもう少し強く、そして長くできるようにいたしましょう。」

「神への祈りを深く、静かに行うことで実現できるはずです」

今日も美しいマリンダが皆へ各自の練習を促す。


集中力が必要なので、それぞれ距離を置いて練習を始めた。

みんな目を閉じて、祈りをささげている。

アキラさんをコッソリ見ていると、声は小さいが祈った後に「ファイア」とちゃんと言っている。出てきた炎は昨日より大きく感じるし、見ている間は消えなかった。


タケルも自分の修練を行うことにした。

目標は大きさと炎を出す位置をコントロールすることにした。


3人から一番遠い場所まで移動して、両足を半歩開いてから右手を上げた。

手のひらを上にし、炎の大きさをイメージした祈りを捧げる。

「ファイア」 つぶやくタケルの右手の上に、イメージ通りの炎が立ち上がる。

更に頭の中で炎を上に上昇させるイメージを描くと、目の前の炎も真っ直ぐ1メートルぐらい上に移動した。

手のひらを左右に動かすと、炎がちゃんと左右についてくる。

つづけて、炎が前へ移動するイメージを描いたが、炎は少し前に移動して、すぐに消えてしまった。

(グレン様ありがとうございました。)

(でも、まだ戦いには使えない。グレン様にもっとイメージを伝えないと。)


タケルはブツブツ言いながら、神への対話を続けた。

(是非、離れた場所に思い通りの炎をお願いいたします)

他人が見ると、チョットやばい人のようだが、本人は真剣極まりない。


もう一度場所を変えて、昨日槍の練習をした的の前へ移動した。

槍で構える位置よりさらに10mぐらい後方に右足を半歩引いて立った。

頭の中で前方の的が燃えるイメージを描き、右手のひらを前方に向け押し出す。

「ファイア!」大きめの声で叫んだ。


右手の先の麻袋に炎が現れた! 成功だ!

タケルは画像のように目の前の状況を頭に焼き付け、右手を下ろした。


右手をおろした先にあった炎は小さくなったが、麻袋の表面がまだ燃えている。

あわてて、井戸へ走り手桶に水を汲んできて、麻袋を消火した。

(そりゃあ、引火したら消えないよね)と一人で反省するタケルにマリンダが歩み寄った。


「マリンダさん、申し訳ありません。調子に乗りました。」

「大丈夫です、タケル様。それよりも凄いお力ですね。修練をはじめて二日で離れた場所に炎を実現されるなんて・・。炎の魔法は、私がお教えできることは無いようです。」少し残念そうに見えるのはタケルの勘違いだろうか。


タケルは3人を集めて、どんなイメージでやっているかを伝えた。

「できるだけ、神様とお話するようにしてる。それと、具体的に炎の場所と体の位置関係をイメージすると炎が動くようになった。俺の場合は手のひらの延長線上でイメージして、手のひらをその方向に動かすことで、神様がOKしてくれたって感じ。」

神様からの返事はないが、タケルなりに結果でOKと解釈した。


3人は散らばって、また自主練を再開し始めた。

「マリンダさん、昨日教えてくれた泉はどっちになりますか?」

「少し歩くと小川に出ますので、そこを上流に向かうとたどり着きます。行かれるのでしたら、ご一緒いたしましょうか?」方角を指差しながら、タケルを見つめる。

「いえ、一人で行きたいので、今回はご遠慮します。」

(美女とデートも魅力的だけど、チョット目的があるからなぁ)


タケルは部屋へ戻り、手ぬぐいと槍を取ってきた。

3人に一人で泉まで行くことを伝え、マリンダが教えてくれた方向へ歩き出す。

教会と逆方向に100メートルほど進むと小川が流れていた。


暖かい日差しと、のどかな風景の中を歩きながら、神様について考える。

(グレン様とはすばらしい関係が構築できた)

(マリンダは魔法には相性があるって言ってたよな)

(俺がワテル様にお願いしたら、グレン様が焼きもち焼くかな?)


取りとめも無く考えているうちに、小川につながっている泉が見えてきた。

直径20メートルぐらいだろうか、池というほど大きくは無い。

上流に川は見えないので、湧き水が出ているのだろう。


泉のほとりで、タケルは槍と手ぬぐいを地面に置き、肩膝をついて祈りをささげた。

(グレン様、これからワテル様へお祈りします。)

(決してグレン様への感謝を忘れたわけではございません。)

(水の神ワテル様、異世界からきた勇者候補のタケルです。)

(魔竜を討伐するために、ワテル様のお力をお貸しください)


肩膝のまま泉の水を両手で救い、改めてワテル様に祈りをささげる。

(ワテル様 「ウォーター」と言いますので、手のひらの水を球状にして、頭の高さままで浮かしてください。)


立ち上がったタケルは手のひらに水を入れたまま、つぶやいた

「ウォーター」。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


信じるものは与えられる。

素直に人の話を受け入れたタケルには多くのものが与えられました。

(私も見習わないと。)


タケル達を応援していだける方ば、(いや、そうじゃない方も)

ブックマークと☆をたくさん押していただけるとうれしいです。

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