110.新メンバーでの聖教石洞窟 中編
■スタートス近郊 聖教石の洞窟
~第10次派遣3日目~
ダイスケとコーヘイの雰囲気は微妙な感じだが、二人並んで更に洞窟の奥へと進んでいく。天井のスライム、ムカデ、蝙蝠はマユミが出す炎のおかげで見逃すことなく、先制攻撃で焼き払い、足元の暗がりからヤマアラシが何匹か飛び出してきたヤツは、コーヘイ中心にあっさりとやっつけて1時間ほど奥まで進んだ。
何度かあった分かれ道を全て右に進んできた洞窟は大きさを変えずに少しずつ下っているように感じた。進んでいくに連れて北の洞窟と同じように空気の重さを感じてくるようになったところで、大きな空間が現れた。
マユミとタケルであちこちに炎を放つと、大きな空間はテニスコート二つ分ぐらいある長方形の部屋になっていて、それぞれの壁から通路が繋がっていることが判る。
「此処もとりあえず右に行くけど、その前にここに転移ポイントを作っておくよ。万一戻る時に一旦ここまで戻れるようにしておこう」
タケルがリュックから、光聖教石を取り出そうと下に置くと同時に、メンバーに緊張が走って、コーヘイが声を上げた。
「タケルさん、デカイ! 来ます!」
コーヘイが見ている左の通路から出て来たイノシシが、蹄の音を洞窟内に響き渡らせて突っ込んでくるのが見えた。
「コーヘイ、そいつは任せた! アキラさん、右の洞窟を見といて、俺は向かいを警戒するから!」
北の洞窟と同じなら同時に出てくる可能性がある。タケルは槍を右腰に構えて、コーヘイに突っ込んでくるイノシシを視野に入れながら、奥の通路を睨んでいた。
コーヘイは突っ込んできたイノシシの右へ踏み込みながら、左腰に構えた両手剣で鼻先から胴体を一気に切り払った。
イノシシは絶叫しながら、さっきまでコーヘイがいた空間を走りすぎた後に横倒しになった。視界の片隅でコーヘイの動きを確認していたタケルの前方の洞窟から、そして右の洞窟からも一回り大きなイノシシが飛び出してきたのが見えた。アキラさんに任せた右のやつは無視して、タケルは前に踏み込んで、槍を一気に前に突き出しながら叫んだ。
「ファイアーランス!!」
突き出された槍から細く強い炎の穂先が伸びて、イノシシの胸を突き抜けた。イノシシは、その場で痙攣しながら動きを止めて地響きと共に横倒しになった。右側からは大きな肉をまな板に叩き付けたような激しい音が響いてくる。目をやると、肉片と化したイノシシがアキラさんの前で横たわっている。
他に飛び出してこないか、洞窟の奥に炎を放って確認したが、飛び出してきたやつら以外はいないようだ。タケルの前で倒れているイノシシは全長3メートルを超えているだろう。血だらけの口から出ている牙だけで20cmぐらいある。槍の穂先が上手く心臓を貫いたのだろう、大量の血溜まりが大きな毛皮の下に広がってきた。
「まだ、来るかも知れないから、周りを警戒しといてね」
タケルは五つの光聖教石(転移用)を入ってきた通路の横に埋めて、転移ポイントを作ってから、4人のところへ戻った。
「これから、もっと色々出てくるはずだから、気をつけてよ。それと、曲がり角があったら、必ず止まって」
先頭の二人はしっかり頷いてくれた。タケルは安全策として曲がり角での新しい戦法を試してみようと思っていた。大きな空間から右に繋がっている洞窟も今までと同じ広さだったが、50メートルほど先で左に曲がっていた。先頭のふたりが角の10メートル程手前で止まってくれたので、追いついたタケルはマユミから炎のロッドを貸してもらった。
「どないしはるんですか?」
「うん、見えないところは焼いてから進んでいこうと思ってる。マユミは代わりに俺の槍を持っていてよ、この槍からも炎が出せるから、ロッドと同じように使ってみて」
「はぁ・・・」
マユミは怪訝な顔をしながらもロッドと槍を交換してくれた。タケルは左に曲がる曲がり角にロッドを向けて神に祈りを捧げた。
-グレン様、ウィン様、指し示した場所からロッドを振る方向へ炎の風を与えてください。
「ファイアウィンド!」
掛け声と共にロッドを左へ素早く振ると、曲がり角から見ない左の洞窟に向かって、大きな火炎風が迸った!
「「「えぇーー!!」」」
ダイスケ達は何も無い場所からいきなり火炎風が噴出したことに驚愕の叫びを上げた。
「何ですのん!? 今の?どないしたら、あんなん出来るんですか?」
マユミは驚きながらも興味があるようだ。
「ああ、応用編だね。風が色んなところから出せることがわかったから、火炎風を離れた場所から出してみた。これなら安全に先制攻撃とか牽制に役立つでしょ」
「私にもできますかね?」
「まずは、風魔法を自由に操れるようになることかな、風が何処からでも飛ばせるようになれば、マユミなら楽勝でしょ」
「頑張ります!」
「マユミ、タケルさんの真似をしてたら、大変なことになるよ、普通じゃないからね」
「俺もそう思います、同じようになれると思うとヘコミますからね」
コーヘイとダイスケが息を合わせて、マユミにアドバイスを送ってくれたが、何事も本人次第だろう、やる気があればそのうち出来るはずだ。




