永年の再来
療養から4日目。
「エル・ブランコさん。よかったですね。検査ではもう問題ありません。今日で退院です。」担当の医師から退院の報告を受けたエル。早々と退院の準備をして、昼前には病院を出た。
エルが退院して、間もなく。「先生。良かったのでしょうか?エル・ブランコさん。後遺症で魔法が今後一切使えなくなってしまったこと。」
「彼は、大丈夫だよ。魔法がなくても、彼は何も問題ない。そんな小さな力よりもっと凄く禍々しい力を彼は宿しているからね。」医師は、不気味な笑みをずっと浮かべていた。それを見た助手のナースは怖くなりその場を後にした。医師は去っていくナースを見て、すぐに顔を直した。「いけないな。ついつい顔が緩んでしまう。さぁ。エル・ブランコくん。捕食者として覚醒した君はあの方に届くかな。ンフッ!これからが楽しみだよ。さて、私も支度しようかな。」そう言って、医師はスキップをしながら病院の奥へ消えていった。病院の中には静けさが戻った。いや、静かというより音が消えた。
エントランスの辺りは壁から天井まで一片たりとも赤色以外無いほど血液が飛び散っていた。
数日後の朝刊。聖堂病院。謎の大量殺人か。従業員、患者。生存者の確認はなし。テロの可能性も。
これが見出しになっていた。
日本の隣国、大韓民国。西条地方の山奥の洞窟。
「我らが同志よ。百年ぶりの顔ぶれだな。久々の再会に思うところもあると思うが時間がない。本題に入る。」
洞窟の中には、バーチャル映像の様な半透明の者たちが数十人立っており、その中心に黒い羽衣の様なものを羽織っている十代後半の様な若い男性が立っている。
その男が話を続けていた。
「率直に言う。この時代に捕食者が現れた。我々の確認だけで三人だ。三人共、能力は不明。目覚めたばかりだと思われる。百年ぶりの捕食者の再来だ。この機を逃すわけにはいかない。あの方にはもう伝えてある。そして、言伝だ。捕食者。計十二人。全てを捕らえよ。我らが長き目標は百年を経て、ここに達成させる。との事だ。残りの九人も三人の発現に伴い、近いうちに現れる。世界中を探し、捕食者を見つけろ。生死は問わない。以上。解散。」
そうして、謎の者たちの会合はわずか十分程でお開きとなった。
この物語に登場する場所や人物は全てフィクションです。現実に存在する者ではありません。