捕食者 2
「あ!やっと起きた。エル、大丈夫?」
目覚めた俺に話しかけてきたのは、アインだった。
「アイン?ここは。」
この世界では俺は眠っていた為、状況がよく掴めていなかった。身体もすごく重たい感じがする。
「ここは、北海道の支部だよ。心配したんだよ!エル。二日間くらい意識無かったんだから。でも、良かった。待ってて。今、班長呼んでくるから。」
そうか。みんな無事みたいだ。良かった。アインは取り敢えず元気みたいだな。
「そうだ。おーい。ケーナ。居るのか?」
俺はケーナに話しかけてみた。あいつの話だと、俺の中にいるらしいけど。
「やぁ、エル。起きたみたいだね。どうだい。身体の調子は?大分きてるだろ。」
ケーナの笑い声が頭の中に聞こえて来る。変な感覚だ。どうやら、こちら側でも意思疎通は出来るみたいだ。
「お!誰か来るみたいだ。とりあえず、私は黙るね。エル。呉々も捕食者については他言しないで頼むよ。」
そう言って、ケーナの声は聞こえなくなり、病室の扉が開いた。
「よ!エル。目を覚ましたみたいだな。」
レノ班長だった。班長もこれといって特に怪我もなかった。
「すみません。班長。ご心配おかけしました。まだ、身体に力が入らなくて、こんな格好ですが。」
俺はベットに横たわったままだった。
「良いって。気にするな。俺たちはお前にあの時助けられたんだ。改めて、感謝するよ。」
班長とアインは俺にありがとうと頭を下げてきた。
「ちょっと、やめて下さいよ。頭あげてください。あの状況下で助けない方がおかしいでしょ。」
「それにしても、あの時のお前は凄かったな。いつものお前なら逃げの作戦をすぐさま考えそうなのに。それにあんな魔法見たことがなかったな。なんで魔法だ?」
ケーナに捕食者については禁句にされていたな。何故かは分からないけど、言わない方が得策なのだろう。俺は笑ってごまかしながら「あれはただの強化魔法ですよ。俺には、魔法の才能がないんですよ。あの時は切羽詰ってて、普段よりうまく使えただけだと思います。」
我ながら結構無理がある言い訳だな。通じたか。
「そうなのか。なんだ。俺の知らない魔法なら今度教えてもらおうと思っていたのにな。エルは窮地に立つと力を発揮するタイプなんだな。」
どうやらこんな嘘が通じたみたいだ。まぁ、下手に墓穴を掘ってしまう前に終わって良かった。
「すみません。班長。少し疲れたので。」
このまま、二人といるとポロっと口が滑りそうだからそろそろ一人になりたい。
「あぁ!そうだな。病み上がりにすまなかった。また、今度来るよ。今はゆっくりと休養してくれ。それじゃ。」そう言って、二人は部屋から出て行った。
「やっと。出て行ったみたいだね。」
ケーナの声が聞こえてきた。
「なんだ。聞いていたのか。」
「もちろん。君の中にいるんだよ。会話は全部筒抜けさ。ところで、あのアインって子。なかなか可愛いじゃん。好きなの?」
ケーナの性別に関してはよく分かっていないが今のところは女性と言うふうにしといたほうがいいだろう。すぐ恋話に繋げたがるな。
「そう言う感情はないよ。ただの仕事仲間だよ。」
「そうかい。つまらん。」自分から聞いといて、つまらんとはなんだよ。まぁ、ちょっとは意識したことないと言えば嘘になるんだが。そう思いながらエルの頬は夕陽のように赤みがかっていた。