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エル・ブランコ 2

エル・ブランコは考えていた。このまま死んだらどうなるのかな。やっぱり食われるってのは痛いよな。あの二人は無事に逃げられたかな。

人鬼の重い猛攻が長く続き、次第にエルの手には感覚がなくなってきた。

「人間でよく耐えたな。でももう無理。お前...終わり。楽しかったぞ。特別に痛みがない丸呑みにしてやる。」

あぁ。このまま死ぬな。俺。でも、最後の最後でちょっとは男らしいこと出来たかも。ごめんな。父さん。母さん。今から俺も行くから。また、三人で静かに暮らそう。。。

「エル!!諦めるな!」そこには班長とアインがいた。まだ逃げてなかったのか。早く逃げろよ。意味のない足止めになっちゃったな。 ごめん。二人とも。。。ゴクンッ。

「エル?エルーーー!!」エルは人鬼の胃袋に吸い込まれていった。人鬼はまだ物足りない表情をして、二人に近づく。

二人は目の前で起きた大きすぎる衝撃に思考が停止して動くことすら出来なかった。

エル!エル!起きろ。エル・ブランコ。

エルは誰かに呼ばれて目を覚ます。「ここは、天国か。」

「違げーよ。バカ!」

誰だ。声のする方に顔を向けると、小さい頃の俺の姿があった。「お前。誰だ?」

「あぁ?俺はお前だよ。いや、厳密にはお前の力だよ。」声も喋り方も俺とは似ても似つかない。直接、身体の中に声が入ってくるような感覚がある。

「俺の力っていうのはどういう事だ。ここはどこなんだよ。」

「ここは、お前の精神空間的なところだ。本来は存在しない場所さ。お前しか、ここには入れない。そして、さっきも言った通り。俺はお前だよ。お前本来の力だ。」

「俺、本来の力?どういう事だよ。」

「はぁぁ。お前に魔法適性がないの。なんでだと思う?」

「は?それはさ...才能がないから...」あぁっ〜!言ってしまった。自分で言うのは屈辱すぎる。聞くなよ。

しかし、力の俺は、首を上げて、前に大きくため息をした。

「違うな。大体、こんなに魔法が広まってる世界でお前だけが適性がないなんて、おかしいだろ。お前は、適性がないんじゃない。元々、魔法を使う身体じゃないんだよ。」 まぁ、厳密には使えないのは、お前だけではないんだけど。今は重要じゃないな。

「今から話すことは、魔法の成り立ちの話だ。昔、この世界には、人族。神族。魔族。っていう三つの種族がいた。魔法を使うのは神族だったんだ。この三族はお互いに争いをして、魔族はその力で圧倒的に領土を持った種族だったんだ。そこで神族は人族と提携し、魔法を人間に宿したんだ。それから人間は魔法を使うようになった。ただ、三族の争いが収束に向かう中で人間たちは魔法の研究を始めて、独自の魔法を数々生み出した。それが今の魔法になっている。それを見ていた神族が危険視して、封印術を人族に施したんだ。」

話が結構なスケールのものになったな。神族って神様のことだよな。俺は話を八割ほどしか頭に入れられなかった。

「話は分かった。でも、それじゃ。人間は全員魔法が扱えるって事か。だったらなんで俺は使えないんだ。」

「何事にも例外はあるんだよ。人族と神族が提携を結んだ時代にわずか十人の人間が魔族と手を組んだ。まぁ、人間にも神族をよく思わない奴らがいたんだろうな。その出来事からその十人の一族の中には魔法ではなく、魔族の使う呪詛を扱うものが現れたんだ。お前はその一族の生き残りだ。」

さっきの話に続き、さらにド高い話が来た。俺がその一族の生き残り。だから魔法が使えない。いや、俺は使えないんじゃない。簡単な魔法くらいなら使える。

「なるほど。何となくは分かった。でも、死んじゃった今じゃ、もうどうしようも無いな。」そう。俺はもう死んでいるのだから関係ないな。もう少し早く力に気づいていたらあの二人も守れたのかもしれない。

「は?お前、死んでないだろ。」

「え?」唐突に言われた。確かに俺は人鬼に喰われた。詳しくは丸呑みにされたはず。

「お前。丸呑みにされたんだろ。まだ人鬼の中で身体だけはあるはずだ。死んじゃいない。自分の力に気づいた今のお前ならこの窮地。何とかできるんじゃねぇの。」

「そうか。でも、この力どうやって使えば。」使えたら二人共助けられるかもしれない。

「大丈夫だ。力の根源が分かった以上、身体がそれを覚えているはずだ。身体の一部を使うようにイメージしろ。イメージしてそれにあった言霊を自分で考えろ。そうすれば自ずと力が扱えるはずだ。」

そんな簡単に言っているけど本当にうまく行くのだろうか。

「じゃあ、俺から言えることはここまでだ。あとはお前自身でなんとかしろ。あぁ。あともう一つ。これからお前は旅に出ろ。いろいろな国を見て、世界を見ろ。お前のように呪詛の力を使うものがいるはずだ。今のこの世界を救う方法はこの力を操る必要がある。その十人に協力を求めるんだな。じゃあ、俺からは以上。頑張れよ。エル。みんなお前のことを見ているからな。」

あいつの最後の言葉がどこと無く、父さんの面影が見えたような気がした。少し、心が落ち着いた。

息苦しさを感じ、目を覚ますとそのには不気味に動く粘膜があった。人鬼の身体の中のようだ。不思議なくらい落ち着いている。今ならこの状況をひっくり返せるような気がした。身体の中に重たい血が流れている感覚がある。さっきまでの自分とは別人のように頭が冴える。まずはここから脱出だ。

「試している時間はないな。何が使えるかは、また今度だ。」

エルは持っていた短剣を手に取り、剣に呪詛を流し入れるイメージをした。身体から剣に流れるように。

そのまま一気に人鬼の腹の肉に目掛けて斬り込んだ。

「ぐぁっ!なんだ。腹に傷が。」人鬼は自分の身体に傷がついた事に気づく。

「ぐぁっ!やった!外に出れた。よう。人鬼。さっきはよくも喰ってくれたな。今度は俺がお前を喰う番だ!」

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