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帝国軍だと!? テメェらの髪型はゴブガリじゃ!

「他国に不審な動きあり……だと?」

「はい。暗黙の了解となっている大平原にて、怪しげな建造物が発見されたと報告が上がりました」

「……ほぅ、建造物とな」


 帝国軍元帥の俺の元に、気になる情報が入ってきた。

 よもや大平原に手を出すとは、どこの国かは知らんが随分と無茶な真似をしたものだ。


「まさか極秘裏に拠点を設けた国が現れようとはな。恐らく数ヶ月は前に計画していたのだろう、侮れんものよ」

「いえ、出現したのはつい先日だと聞いております」

「何!?」


 これは驚いた、まさかたった数日で拠点を築いてしまうとはな。


 しかし、我が帝国を差し置いて先手を打ったつもりだろうが、生憎とそうはいかん。

 寧ろ大平原を抑える口実ができ、我々にとては願ったり叶ったりだ。

 有言実行されれば陛下もお喜びになるだろう。


「して、どこが仕掛けたのだ?」

「そ、それが正確な情報は掴めてないのですが、王国の勇者と獣王国の獣王が建造物に出入りしたらしいのです」

「なんと!」


 これは少々不味いかもしれん。

 下手をすると我が国が出し抜かれる可能性すら有り得るではないか。

 仮に王国と獣王国が手を組んだとして、対抗する相手はどこだ?


 いや、まてまて、考え過ぎてはダメだ。

 これでは後手に回ったと認めるようなものではないか。

 そんな心配をするくらいなら、こちらから動いてやればよい。


「大至急進軍の準備に入れ。――それと各国に通達しろ。大平原に出現した正体不明の勢力を制圧する――とな」

「ハッ、畏まりました」


 フフ、かつて帝国軍の鬼神と言われたこのバロンズ、久々に槍を振るうとしよう。



★★★



「あちらにございます」

「うむ」


 確かに、300メートルほど先に謎の建造物が見えるな。

 しかし現在地からだと何も分からん。


「見たところ建造物そのものは大きくはない。更に接近し取り囲むぞ」

「ハッ!」


 先ほどよりも近付き、件の建造物から10メートルほどの位置までやって来た。

 もはや出てきたところで逃げ場はない。


「すでに囲まれてることには気付いてると思いますが、いまだ動きはありません」

「……ふむ」


 あくまでも籠城するつもりか。

 時間を掛けすぎるのも良くはない……。


「フッ、よかろう。ならばこちらから引導を渡してくれる。――第一小隊突入せよ!」

「「「ハッ!」」」


 正体不明の建造物――とはいえ、人の手で造られたものにはかわるまい。

 さて、我が軍に対してどれほど持ちこたえるか見せてもらおう。


 ガチャ!


 扉を開けて小隊が中へとなだれ込む。

 あの規模の大きさだと、案外小隊だけで制圧してしまうかもしれんな。

 まぁそうなったら少々肩透かしだが、それはそれで良しとしよう。


「へぃ、らっしゃい!」



 ジョリ!



「ありがとやっしたぁ!」



 バタン!



 は? まてまてまてまてまてぃ!

 なんなんだ今の流れは!?

 小隊が突入したまでは把握しているが、出てきた連中は揃いも揃ってハナ垂れ坊主のような頭をしているではないか!


 あまりの衝撃に、気付けば小隊長の胸ぐらを掴み上げていた。


「おい貴様ら、いったい何があった!?」

「そそそ、それが我々にもよく分からなくてですね、中にいた厳ついオッサンにより強制的にこのような頭髪にされてしまい……」

「…………」


 ダメだ、まるで話にならん。

 強制的にやられただと? しかも相手は厳ついオッサンときた。

 その厳ついオッサンとやらが何故このような所に居るのだ。


「フン、もういい。第二小隊突入せよ!」

「「「ハッ!」」」


 役立たずな小隊長を投げ飛ばし、第二陣を突撃させた。

 返り討ちに合うにせよ、せめて情報くらいは持ち帰ってくれねば時間の無駄だ。


 しかし……



 ガチャ!


「へぃ、らっしゃい!」


 ジョリ!


「ありがとやっしたぁ!」


 バタン!



 まただ……またこの流れだ。

 いったいどういうカラクリになっているというのだ!


「おい、貴様!」

「も、申し訳ありせん! 中に居たのは厳ついオッサン一人だけなのですが、どうにも身体の自由が効かなくなるようで……」

「…………」


 ダメだ、やはりよく分からん。

 こうなれば仕方ない。

 元帥である俺自らが、厳ついオッサンとやらの正体を暴いてくれる。

 鬼神の恐ろしさ――とくと味わうがよい!



 ガチャ!


「へぃ、らっしゃい!」


 中に入ると、確かに厳ついオッサンが一人居るな。

 柄は悪そうだが、この男がそれほど強そうには見えない。

 どれ、少し探りを入れてみるか。


「貴様が厳ついオッサンか?」

「ああん? 厳ついと何ぞ文句でも有るんかワレェ!?」


 フッ、威勢だけはよさそうだが、只の単細胞な厳ついオッサンではないか。

 まったく、こんな男一人にやられるとは情けない。


「まぁいい。今日は客が多くて大繁盛や。多少の暴言は大目に見たる。そこへさっさと座らんかい!」

「フン、何を言って――むぉ!?」


 な、なんだこれは! 身体が言うことを効かぬではないか!

 結局言われるまま椅子へと座る羽目になってしまった。

 これはある種の洗脳術か? だとすれば恐ろしい限りだが……等と考えていると、先ほどのオッサンが刃物のような物を持って俺の横へと立つ。


「き、貴様、いったい何を!?」

「何をだと? フッ、決まってるけぇ――」




「――散髪じゃあ!」


 ジョリ!


「ほぁぁぁあ!?」


 コ、コイツ、今何をした?

 まさか俺の頭髪を勝手に!?


 ジョリ!


「まままままて、ちょっとまて! 貴様いったい何を考えて――」

「何を考えて――だと? んなもん決まってるけぇ――」




「――散髪じゃあ!」


 ジョリ!


「グワァァァァァァ!」


 くそ、このままではハナ垂れ坊主にされてしまう!

 何とか……何とか阻止せねば……。

 そ、そうだ、この手でいこう!


「おおお、落ち着けオッサン、まずは冷静になるんだ。貴様にも望みはあるだろう? 何なら叶えてやってもよいぞ? その代わり――」

「フッ、望みはあるだろう――だと? んなもん決まってるけぇ――」




「――散髪じゃあ!」


 ジョリ!


「しまったぁぁぁぁぁぁ!」


「髭剃りはサービスじゃあ!」


 ジョリジョリジョリ!


「うわぁぁぁ! ダンディーな俺の髭がぁぁぁぁぁぁ!」



 バタン!


「バロンズ元帥、そ、その頭は?」

「……聞くな」

「え?」

「全軍に通達しろ。ここで起こった事は他言無用だ、特に俺の頭髪に関してはな。よいな?」

「はははははいぃぃぃ!」


 俺はやけにスースーする頭を甲で隠し、帝都へと引き上げていく。

 今回は俺の負けだ。

 だが次はあると思うなよ、厳ついオッサンめ!


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