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プロローグ

「ふむ、あの娘ですか……」


 学校帰りの女子高生が一人、多くの人間が行き交う歩道を歩いている。

 今回この娘を異世界に誘うのが女神であるわたくし――ヤルメルルテの使命。

 この娘には勇者となって、異世界パルテニアを救ってもらわなければならないのです。

 何せ剣技の才が驚くほど高かった娘ですので、きっと異世界を救ってしてくれることでしょう。


 ――とは言うものの、正直パルテニアがどうなろうと知ったこっちゃないんですけれど、わたくしヤルメルルテが唯一無二の神として崇められている以上、一応は気にしてますよ的なポーズは必要なのです。


「さて、もうすぐですね」


 人気(ひとけ)のない脇道へと逸れ、自宅へと向かう勇者。

 この辺りなら古ぼけた床屋があるだけですし、誰かに目撃されることもない。

 つまり、予期せぬ事態は起こらないということです。

 ――と、速くしなければ自宅へと着いてしまいますね。


「時間です――ディメンジョン!」


 わたくしは転位魔法を発動させ、勇者を異世界へと転位させました。




「……はぁ」


 思わずため息をついてしまいました。

 何せあの勇者は二度と地球へ帰ってくることが出来ないのですから、少々可哀想かなとも思います。

 ですが勇者としての頭角を表してくれればハッピーな老後が約束されるでしょう。

 ついでにわたくしへの信仰心も急上昇で実にウマウマです。


「おっと、忘れるところでした」


 そろそろ勇者に事情を説明しに行かなくてはなりません。

 このままだと自宅に着いてしま――




 ――あれ?

 この勇者、普通に自宅へと着いちゃいましたね?

 確かに異世界へ転位させたはずですが、これはいったい……


「――ハッ、まさか!?」


 もしやと思いパルテニアの転位先を探ってみると――




「うぇぇぇっ!?」


 なんという事でしょう、転位したのは彼女ではなく、近くに建っていた安っぽくて古くさい床屋じゃないですか!

 わたくしとした事が魔法をかける対象を間違えてしまったみたいです。


「ど、どうしましょう、パルテニアの危機を救うどころか、あのいかにも潰れそうな床屋を救済しなくてはならなくなりました」


 あ、誤解がないように言っておきますが、救済するのは物理的な話であって、経済的に助けるわけではありません――って、誰に言ってるんでしょうかわたくし……。


 ……コホン。

 とにかく、床屋の跡地なんか放って置いても誰も気にしないでしょうし、異世界に旅立った床屋を何とかしたほうがよさそうです。


 一応は転位と同時にチート能力が備わるように設定しておきましたが、絶対とは言えません。

 本来は()()()()()()()()()チート能力が備わるようにしてましたので、あの小汚ない床屋がどのような変貌を遂げたのか少々楽しみ――じゃなかった、少々不安です。


 そう考えたわたくしは、パルテニアに転位した床屋へと急行しました。


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